短命県から学ぶ健康
からだコラム
[短命県から学ぶ健康]知識なくして行動変容なし
青森県の短命は、生活習慣が悪い、健診受診率が低い、病院受診が遅い、通院状況が悪いなどの総合点の低さによります。
「どうしてどれもこれも長野に負けるんですか?」と聞かれます。
幹と根が負けているから、そこから出る葉っぱと枝も全部負けるのだと思います。だから、幹と根、つまり県民一人ひとりの問題なのです。自治体、大学、医師会などのリーダーシップ不足かもしれません。これが、私の一通りの結論です。
一番大切なのは、健康に対する知識、そしてそれにもとづいた行動への意識です。そうしたら「中路先生、青森は長野より、健康に対する知識と意識が低いって言うんですか? 誰がどうやって調べたんですか?」と聞かれます。調べた人は残念ながらいません。
でも、喫煙率を見れば大体わかります。通り一遍のアンケートより正確です。喫煙は健康被害が今や常識となっています。たくさんの人が吸う県と吸わない県の違いは、知識か意識かの違いだと思います。青森県の喫煙率は全国ワーストのレベルです。
それから、ただ何となく悪いと思っていることと、科学的なデータを知ってやはり悪いんだと思うのでは全然意味が違います。知識の深さとも言えます。
知識があっても行動変容は起きにくいと言いますが、知識がなければ行動変容は生まれません。ヘルスリテラシー(健康教養)がまずは大切です。
ただし、ヘルスリテラシーだけを攻めのターゲットにしているだけでは問題解決になりません。
結局はヘルスリテラシーをつけることができるような社会環境が大切です。リテラシー獲得のための仕組み、雰囲気、人のつながり、そして企業や自治体のトップの決断も当然これに含まれます。
(中路重之・弘前大学教授)
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