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知って安心!今村先生の感染症塾

コラム

「エイズ」ってなに?

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「エイズ」ってなに?

エイズに対する理解や支援のシンボルマークになっているレッドリボン

 12月1日は世界エイズデーです。日本では12月をエイズ月間として、各都道府県で様々な啓発がすすめられます。

 ……でも、そもそも「エイズ」ってなに?

 若い人たちは無関心によって、そして年齢の高い人は誤解や偏見で、「エイズという名前は知っていても、どんな病気かよくわからない」という人が多くいます。今回は、この「エイズ」についてのお話です。まずは「正しく知る」ことから始めましょう。

エイズとHIV感染症

 あなたは、「エイズ」という言葉の意味を知っていますか? この病気の正しい名前は「HIV感染症」といいます。HIV感染症とは、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)というウイルスによって起こる感染症です。このウイルスに感染すると、数年から十数年という比較的長い経過で、いろいろな病気と戦う抵抗力(免疫)が徐々に低下していきます。免疫というのは、みなさんが知らない間に多くの病気を防いでくれています。したがって、高度に免疫が低下すると、脳、肺、消化器、皮膚など、体の様々なところに病気を起こすようになってしまいます。そして、このように免疫が低下して、病気を発症した状況が「エイズ」と呼ばれています。つまり「エイズ」とは、HIV感染症の中でも、特に病気が進行した状況であることを意味しているのです。

 「HIV感染症」と診断する基準は、世界で共通しています。しかし、病気の進行した状態を示す「エイズ」と呼ぶ基準は、国によって違ったりします。実は、「エイズ」は世界共通ではないのです。また、病気が進行して「エイズ」を発症しても、今は治療によって免疫を回復させて、再び「エイズ」を発症させないようにすることができます。あくまでも、この感染症の正しい名前は「HIV感染症」であるということを知っておきましょう。

現代のエイズ

 HIV感染症では、免疫が低下して起こる様々な感染症などが、死亡の大きな原因となっていました。そのため、かつては「エイズ=死」というイメージがあったのです。しかし、HIV感染症の治療は大きく進歩しました。今は、ウイルスを抑え込む薬があります。薬の内服を続ければ、免疫が下がることを防いだり、一度低下した免疫を回復させたりすることもできるようになっています。抵抗力が下がらなければ、死亡する原因となるような重い病気を発症することもなくなります。現在は、たとえHIVに感染しても、仕事や学校へ通いながら生活を続けることができるようになってきているのです。

治療薬も進歩しています

 HIV感染症の治療に使われている薬は、抗HIV薬と呼ばれています。その治療薬の開発もどんどん進んでいます。以前は、副作用はあたりまえで、複数の薬を1日に何回も内服していたことがありました。しかし、現在の薬は、副作用が起こることも少なくなっています。むしろ、大きな副作用を起こすことなく飲めることが、ふつうになってきているのです。そして、内服する回数も1日に1回か2回ですみ、一度に飲む薬の数も少なくなりました。今は1日1回、1錠だけ飲めば大丈夫という薬も増えてきています。

安心してはいけない

 このように、HIV感染症の治療は劇的に進歩しました。しかし、安心してはいけません。エイズを発症してしまうと、治療が進歩した今でも、亡くなってしまったり、改善しても後遺症が残ったりすることがあるからです。また、重い病気を発症すれば、長期の入院が必要となり、社会的な生活を中断することになります。治療が進歩してきた今だからこそ、より早く感染を知るということが、これまで以上に重要となってきているのです。

診断の遅れが大きな問題

 「エイズ」とは、病気が進行してしまった状況であることを意味しています。したがって、できるだけ多くの人が、エイズを発症する前に診断されることが理想となります。しかし日本では、毎年新たにHIV感染症と診断される人のうち、約3割がエイズを発症してから診断されているというのが現状です。さらに地方では、診断時のエイズ発症が5割を超える県もあります。日本での診断の遅れは、今も深刻な状況が続いているのです。

HIV感染症の多くは無症状

 HIVに感染すると、その初期にインフルエンザなどのような症状がでることがあります。しかし急性期に症状がでるのは、せいぜい50%程度といわれ、症状が軽くて自分も感染を自覚しないことがあります。そして、この時期に症状がでても多くは自然に良くなってしまい、そのまま数年から十数年の長い間、全く症状のでない「無症候期」という期間にはいってしまいます。HIV感染症は、全く症状がない期間が長いということも特徴なのです。

検査を受けよう

 現在の国内での流行は、性行為にともなう感染が中心となっています。そして、特に同性と性行為をもつ男性に感染が広がっています。また、諸外国では、日本よりも感染率が高い国が多くあります。そして、他の性感染症になったことがあれば、HIVの感染についても確認する必要があります。したがって、以下のような場合には、特に検査を受けることを検討してみてください。

  • 同性と性行為のあった男性
  • 感染不明の外国人との性行為があった男女
  • 梅毒に感染したことがある
  • 性行為でB型肝炎、C型肝炎、アメーバ症などになった
  • コンドームを使用しないリスクの高い性行為がある

 検査を受けられる場所については、以下のホームページをごらんください。

 『HIV検査相談マップ』
  http://www.hivkensa.com/

 12月は「エイズ月間」です。しかし、12月が終わっても、HIVに感染するリスクが変わるわけではありません。「感染を知る」ということは、だれにとっても不安です。できれば検査を受けないで、このままの生活を続けたいという気持ちもわかります。しかし、エイズを発症してしまえば、がんばっても救えないことがあるのです。今は良い治療法があります。たとえ症状がなくても、不安があれば検査を受けるようにしてください。

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今村顕史(いまむら・あきふみ)

がん・感染症センター都立駒込病院感染症科部長

石川県出身。1992年、浜松医大卒。駒込病院で日々診療を続けながら、病院内だけでなく、東京都や国の感染症対策などにも従事している。日本エイズ学会理事などの様々な要職を務め、感染症に関する社会的な啓発活動も積極的に行っている。著書に『図解 知っておくべき感染症33』(東西社)、『知りたいことがここにある HIV感染症診療マネジメント』(医薬ジャーナル社)などがある。また、いろいろな流行感染症などの情報を公開している自身のFacebookページ「あれどこ感染症」も人気。

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