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イグ・ノーベル・ドクター新見正則の日常

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医療バラエティー番組で紹介された「体にいい食材」の真偽

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 今日は医療情報の取り方のお話です。新聞、テレビ、ラジオ、週刊誌、ネットなど様々な情報媒体がある今日この頃です。医療情報はあふれています。その中からどうやって正しい医療情報を得るか、またどうやって、そんなあふれんばかりの医療情報と接するか、というお話です。

 

番組で薦めていたから、即実行?

 情報は発信側によっても操作されます。自分たちが主張したいことだけを取り上げることもできます。また、いろいろな情報をフェア(公平)に発信しているようでも、その情報を取り上げる順番や、扱いの大きさで、いくらでも操作可能です。

 また、無料の媒体は広告で事業を運営しているので、広告主の意向や、目に見えない圧力が、ある程度は存在します。また、視聴率や販売部数も、大切な広告主や高収益を得る手段ですので、広告主の意向や圧力には敏感です。つまり、視聴率や販売部数が伸びる情報が発信されるのは、当然の結果です。

 まず、テレビについてお話しします。テレビの医療バラエティー番組をすべて見て、どの番組でこんなことを言っていたと教えてくれる患者さんがいます。そして、すぐに「良さそうと言われていたこと」を実行するそうです。そんな患者さんに、「今まで長続きしている有益な情報はありましたか?」と尋ねると、ほとんどの患者さんが「長続きしているものは何もないですね」と答えてくれます。そんな自分を楽しんでいる人はまったく問題ありません。一方で、テレビで発信された情報をすべて 鵜呑(うの) みにして、右往左往している人もいます。テレビの医療番組をバラエティーとして見られない患者さんには、「テレビは見るな」と忠告しています。テレビでは、まったく間違った情報は発信されません。ところが、医療にはグレーな領域が幅広いのです。そうであれば、間違っていない範囲で精いっぱい視聴率を稼げる内容にすることは当然の結果です。そんな相手の事情を理解して、医療バラエティー番組を見ることが大切と思っています。

 

テレビ番組には「大人の事情」が…

 テレビ番組から発信された「体にいい食材」は多数あります。ところが、何年も生き残っているものはほとんどありません。確かに、限られた何人かに愛用され続けられているものは存在します。大切なことは、万人の健康に間違いなく良い食材はなかなか存在しないということです。一方で、食べ過ぎてはダメな食材はありますね。炭水化物や食塩などは、わかりやすいでしょう。炭水化物を取り過ぎれば糖尿病になりますし、食塩を取り過ぎれば高血圧になります。体に悪い油もあります。ところが、これをたくさん取れば体に良いというものを見つけることは結構難しいでしょう。

 昔から言われているように、バランスよく、腹八分目に食べることが健康への王道だと思っています。いろいろな「健康に良い食材」は医療バラエティー番組が発信している情報だと知ったうえで、バラエティーのレベルで楽しむことが重要です。

 テレビの広告は大切なテレビ局の収入源です。体に悪いものの代表は「 煙草(たばこ) 」が担ってくれています。でも糖尿病の増加を思うと、どこにでもある砂糖入りの清涼飲料水は煙草以上に体に害だと思っています。そんな飲み物は500ミリリットル中に50グラム前後の砂糖を含んでいます。1グラム4キロカロリーですので、だいたい1本で200キロカロリーになるのです。ホットコーヒーなどと一緒に出されるスティックシュガーは3グラムぐらいですから、なんとスティックシュガーが13本も含まれている勘定になります。そんな糖尿病の原因とも思われる砂糖入り清涼飲料水が、体に悪いと面と向かって発信するテレビ番組は少ないでしょう。テレビ番組は、そんな「大人の事情」を織り込んで見て下さいね。

 

ラジオや新聞、ネットは…

 ラジオはテレビよりは広告主の影響は少ないと思っています。新聞は無料ではないので、民放テレビの医療バラエティーよりはフェアに物事を論じていると思っています。注意点は、新聞は広告までは責任を持っていないことです。広告欄にある医療関係の書籍は、各自の自己責任で購入して下さい。基本的に新聞社が薦めているものではないですよ。週刊誌は、読者がお金を出して購入します。奇をてらった内容もありますが、それが実は真実に近いということもあります。

 「出版バイアス」という言葉があります。お金が回る情報の方が世の中に出やすいということです。「○○検診をやっても予後に差がなかった」といった情報は埋もれやすいのです。一方で、「○○検診をやって長生きした」という情報は瞬時に広がります。○○検診がある意味お金が回る道具という一面があるからです。「抗うつ薬メーカーがアメリカで3000億円以上の罰金を払った」と言った情報も埋もれやすいのです。そんな情報が駆け巡っては、お金が回らないからです。出版バイアスという視点を持って、情報を見るとよりフェアに判断できますよ。お金が回る側に有利な意見は割り引いて考えるということです。

 さて、最近の大問題はネットです。たくさんの情報があふれています。そして、こちらが情報を取りたいときに取りに行けます。また、情報を発信する方も、誰でも情報提供が可能です。つまり玉石混交の情報があふれているということです。基本は発信源が得体の知れないものは、どれも怪しいと思って見ることが安全だと思っています。僕たち専門家はどの情報に 信憑(しんぴょう) 性があるか、どの発信元は信頼できるかということがわかります。ですから、患者さんはネット情報を参考にする程度にして、より深く知りたいときは、かかりつけの先生にネット情報の真偽の相談をすることが肝要と思っています。

 人それぞれが、少しでも幸せになれますように。

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知りたい!_20131107イグ・ノベーベル賞 新見正則さん(1)写真01

新見正則(にいみ まさのり)

 帝京大医学部准教授

 1959年、京都生まれ。85年、慶応義塾大医学部卒業。93年から英国オックスフォード大に留学し、98年から帝京大医学部外科。専門は血管外科、移植免疫学、東洋医学、スポーツ医学など幅広い。2013年9月に、マウスにオペラ「椿姫」を聴かせると移植した心臓が長持ちする研究でイグ・ノーベル賞受賞。主な著書に「死ぬならボケずにガンがいい」 (新潮社)、「患者必読 医者の僕がやっとわかったこと」 (朝日新聞出版社)、「誰でもぴんぴん生きられる―健康のカギを握る『レジリエンス』とは何か?」 (サンマーク出版)、「西洋医がすすめる漢方」 (新潮選書)など。トライアスロンに挑むスポーツマンでもある。

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