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[認知症のはてな](8)行動パターン探り「徘徊」防ぐ

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予兆あれば気を紛らわせて

[認知症のはてな](8)行動パターン探り「徘徊」防ぐ

 認知症の人を介護する家族にとって、精神的にも体力的にも大きな負担となるのが「 徘徊はいかい 」だ。一瞬の隙をついて家を出てしまい、行方が分からない。本人は無事なのか、事故を起こして誰かに迷惑をかけていないかなどと考えると、生きた心地がしない。そんな家族の負担を減らすには、どんな方法があるのだろうか。

 神奈川県鎌倉市の川口弘人さん(82)は、認知症の妻、晴代さん(79)がデイサービスから帰ってくると、その表情をのぞき込む。「あまり疲れていないな」。そう感じる日はそのまま散歩に誘う。夜中に歩き回る体力を残さないためだ。

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夜中に家を出たりしないよう、川口さん(右)は晴代さんが疲れるまで手をつないで夕暮れの町を散歩する(神奈川県鎌倉市で)

 手をつないで2~6キロ、夕暮れの町を歩く。疲れ過ぎると、普段より早く寝て早朝に起き出し、家を出ようとする可能性があるので、加減が難しい。

 晴代さんが初めて警察に保護されたのは、2014年8月。夕方自宅を飛び出し、翌朝、横浜市内で見つかったときは体中があざだらけだった。その後も幾度となく自宅を抜け出したため、玄関や1階の窓に特殊な鍵を取り付けた。心労などで川口さんの体重は1年で10キロ以上減ったという。

時間帯・ルート確認

 行方不明になるのを防ぐ対策として、東京都内で認知症グループホームを運営するNPO法人「ミニケアホームきみさんち」理事長の林田俊弘さんは「観察し、行動パターンを探るといい」と助言する。

 家を抜け出し始めた頃は、通るルートが一定で、時間帯も同じケースが多いという。後をついて行き、ルートが分かったら、その近隣の人に「見かけたら教えて」と頼んでおくといい。

 また、飛び出す直前には、落ち着かなくなったり、表情が険しくなったりする。それを防ぐには、外に出たい気持ちを忘れるほど夢中になれることを探すのも一案だ。グループホームでは、好きなビデオを見てもらい、気を紛らわせることもある。「強い言葉で抑えつけたり、閉じこめたりすると、いきなり遠方へ行ってしまうなど、症状が悪化する可能性が高い」とする。

 川口さんも、晴代さんの行動をよく観察するよう心がけた。その結果、晴代さんは夕暮れ時に横浜市内の実家に帰ろうと思い立つことや、大好きな朗読や動物の話をしていれば、家を出ないことが分かった。

 晴代さんがストレスや不安を抱えていると感じた時には「朗読を聞かせて」などと声をかける。すると、家を出る回数は大きく減った。「少しずつ妻の気持ちが分かってきた」と話す。

自治体も取り組み

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 行方が分からなくなった時に備え、あらかじめ自治体の捜索窓口に登録しておくことも必要だ。国の14年の調査では、全市町村の61%が認知症の行方不明者への対策を進めている。

 自治体によっては、持っていると居場所が分かるGPS(全地球測位システム)端末を貸与したり、購入の補助をしたりしているところもある。端末を貸し、警察との連携に努める群馬県高崎市では、昨年10月から1年あまりの間に家族らからの捜索要請102件について、全員を発見した。

 認知症の人と分かるよう、靴に貼るステッカーも導入が広がり、全国の約100自治体が採用している。兵庫県のNPO法人「日本ハートフルサポート」が製作するもので、昨年7月から配布を始めた埼玉県ふじみ野市では「認知症の人を見て、市民が声をかけてくれることが増えてきた」(担当者)という。

 「認知症の人と家族の会」の理事を務める花俣ふみ代さんは「地域で、少しでも多くの人が見守ってほしい」と話している。(大広悠子)

 (2016年11月27日 読売新聞朝刊掲載)

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