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[医療ルネサンス静岡フォーラム「あきらめないすい臓がん」](1)抗がん剤、広がる選択肢

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 「あきらめない すい臓がん」をテーマにした「医療ルネサンス 静岡フォーラム」が10月20日、静岡市葵区のしずぎんホール「ユーフォニア」で開かれた。

 静岡県立静岡がんセンターの上坂克彦副院長兼肝胆 すい 外科部長が「ここまで進んだ 治療の最新情報」と題して、基調講演を行い、早期発見が難しい難治がんではあるものの、治療面は近年大きく進展していることを紹介した。その後、夫をすい臓がんで亡くした、患者や家族の支援団体「NPO法人パンキャンジャパン静岡アフィリエート」の石森恵美支部長と話し合った。約300人の参加者たちは、熱心に耳を傾けた。

 

主催 読売新聞社

後援 静岡県、静岡市、静岡県医師会、静岡県立静岡がんセンター

コーディネーター 読売新聞東京本社医療部長・山口博弥

 

治療の実績、10年で進歩

 

[医療ルネサンス静岡フォーラム「あきらめないすい臓がん」](1)抗がん剤、広がる選択肢

上坂克彦氏

 ■ 基調講演…静岡県立静岡がんセンター副院長兼肝胆膵外科部長・上坂克彦氏

 すい臓がんは、厳しい病気で、多くの医師や研究者が研究してきましたが、長年良い治療成績に結びつきませんでした。しかし、この10年間は治療方法の進歩、治療成績の改善がみられています。

 すい臓はおなかの奥の方、背中に近い側にあります。周りには、肝臓に行く肝動脈、腸に行く上腸間膜動脈、腸から帰ってくる門脈といった大事な血管があります。すい液を十二指腸に運ぶすい管や胆汁を運ぶ胆管も入り組んでいます。

 すい臓の働きには外分泌と内分泌の二つがあります。外分泌では消化酵素を多量に含むすい液を作っています。内分泌では、インスリンに代表されるホルモンを作っています。

 すい臓がんは増えつつあるがんで、男女を合わせると、がんによる死因の第4位で、国内では年間3万人以上が亡くなっています。

 すい臓がんができる根源的原因はよくわかっていませんが、危険因子は、たばこ、たくさんのお酒、糖尿病、肥満、すいのう胞、慢性すい炎、遺伝性すい炎などです。遺伝と関係する家族歴も注目されていて、血のつながった家族に2人以上、すい臓がんの人がいる場合を家族性すいがんと呼び、2人いる場合は3人目が出る確率は7倍弱高いと言われています。

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 「どういう症状に気をつけたら早期発見できるでしょうか」とよく聞かれるのですが、早期発見につながるような症状はありません。がんというと、「痛い」とか「苦しい」と思いがちですが、早期のがんは症状がないことがほとんど。これが出たらすい臓がんという特徴的な症状は何もありませんが、糖尿病が新たに出たり、急に悪化したりした時は要注意です。

 すい臓がんが確定すると、医師はまず、切除可能、切除可能境界、切除不能の三つのうちの、どの段階かを診断します。

 切除可能は、肝臓や腹膜への転移、骨や肺といった離れた臓器への遠隔転移がないことや、すい臓の周りの動脈にがんが広がっていないことなどで判断します。肝臓や腹膜などへ転移していると、切除不能です。切除可能境界とは、すい臓の周りの動脈にがんが接していたり、門脈をがんが取り巻いていたりする状態です。

 切除可能の方はまず、手術をしてがんを取り除きます。手術後に、「補助化学療法」として、再発する可能性を下げるために抗がん剤治療を行います。

 手術は、「すい頭十二指腸切除」「すい体尾部切除」、すい臓を全て取る「すい全摘」の3種類が代表です。

 術後の補助化学療法では、2007年にドイツから、抗がん剤の塩酸ゲムシタビンを使うと生存率が上昇することが発表されました。さらに、2013年には日本から抗がん剤のS―1(エスワン)を使うと、一層生存率が向上することが発表されました。

 切除不能の場合は抗がん剤治療が基本です。現在、日本で使える抗がん剤は五つあります。一番新しい薬が出てから2年たっていませんが、生存率が改善しています。抗がん剤治療で肝臓の転移がなくなり、手術が受けられるようになる患者さんも出てきています。

 切除可能境界の場合、無理やり切除しても、がんをきちんと取り除くことはできません。ここ数年の研究では、まず抗がん剤治療、あるいは抗がん剤+放射線治療を行って、がんを小さくしてから手術することで、よい成績が得られつつあります。

 すい臓がんの治療はここ10年で明らかに進歩しました。正しく診断し、切除可能か境界か、不能かを見極め、病態に適した治療法を選ぶことが大切です。最近の抗がん剤は非常によく効くようになっており、期待が持てると思います。

  <NPO法人パンキャンジャパン>  パンキャンは、すい臓がんアクションネットワークの意味。すい臓がんの研究促進、患者とその家族への支援、政策提言の活動をしている。本部はアメリカにあり、日本支部(東京都千代田区)の下に現在、静岡支部(アフィリエート)と北海道支部がある。毎年11月、イメージカラーの紫色のTシャツで、歩いたり走ったりするアピールイベントをしている。

 ◇ うえさか・かつひこ   愛知県生まれ。名古屋大医学部卒。愛知県がんセンター消化器外科副医長、ハーバード大留学、名古屋大第一外科医局長などを経て、2002年4月静岡県立静岡がんセンター肝胆膵外科部長、11年11月から現職。

 

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