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食と高血圧~減塩のすすめ(3)昼と夜の血圧に差…質疑応答
岩永 まず、事前に皆様から応募のときにいただいていた質問をご紹介します。「ナトリウムの摂取が多い方にカリウムの摂取を勧めることは意味があるのでしょうか」とのことです。カリウムは野菜に多いですよね。
土橋 ナトリウムが悪いだけではなく、カリウムが非常に大事だということです。日本人にはカリウムが足りていません。近年はこの2つのバランスについて「ナトカリ比」という言葉が使われるようになっていますが、体内のナトリウムが一定ならカリウムが多いほうがいいわけです。減塩が難しい方は、いかにカリウムをプラスしていくかと考えていただけばいい。
コンビニなどでもお弁当に別途サラダを付け加えたり、バナナやリンゴを一緒に食べたりなど、カリウムを増やすことでナトリウムを尿に出すことができるわけです。カリウムを多く取ることは減塩術の一つでもあるのです。
ただし、これは腎臓が悪くてカリウム制限をされていない方に限ります。
岩永 次は60代の男性から「外食で気をつけることとは何ですか?」と質問をいただいています。私も毎日のようにお酒を飲んでいる人間ですので、気をつけることもうかがいたいです。
土橋 とにかく野菜は取りたい。私は日頃から豆腐やサラダ、海藻などを積極的に食べます。脂っこいものはその後です。これで食べる総量を規制できることに加え、後で食べた脂肪分や糖分、塩分の吸収が穏やかになり、排出効果も期待できます。
外食の際には、まずサラダを食べながらメインを楽しみに待つこと。決まったコース料理が出される宴席になると、最後に出てくるご飯、みそ汁やお吸い物、漬けものが問題になりますね。私もここでいつも悩みます。とはいえ、「食べないともったいない」と思うと減塩はできないのです。おつゆを我慢したり、どんなに漬けものがおいしそうでも「これで何グラムかな」と考えたりしてセーブするようにしています。
岩永 70代の主婦の方からは「日中と夜間の血圧に差があります。最低血圧はあまり変わらないのですが、最高血圧は135から140、時々140を超えることもあります。心配しなければならないでしょうか?」との質問が寄せられています
土橋 日常的に血圧測定をされている方はよくわかっていると思いますが、毎日同じ血圧になることはほとんどありません。薬を飲んでいる方はその影響もありますが、基本的には朝の血圧が一番高いのです。朝、ポンと高くなり、その後は薬を飲まなくても下がる方がいる。高齢の方には特にこの傾向が強いです。これから寒くなると、朝起きてすぐの血圧が一番危ない。私がよく指導するのは、朝、目が覚めたら、ゆっくり起きてくださいということです。ふとんから出てすぐに寒いところに新聞を取りに行ったり、散歩に行ったりするのが危ない。まずは、しばらくベッドでごろごろしていて、部屋を暖めてから起きるぐらいがいいと思います。
もう一つ、食事直後は血圧が下がりやすい。薬を飲んでいない人の血圧をチェックすると、お昼の2~3時ぐらいが一番低くなります。お昼ご飯を食べたら眠くなる方はたくさんいると思います。朝と食後、特に午後の低い時間帯の血圧の差がどれぐらいあるかは、治療する側にとって非常に大事な情報になります。朝の高い血圧は下げなければならないけど、昼の時間帯に低くなりすぎて、めまいやふらつきが起きる方もいます。
そこで朝晩以外の時間帯にも時々、血圧を測ってみてください。また仕事中に職場高血圧になる方もおられます。いろいろな時間帯や環境などで測ってみて、自分の血圧の幅がどれぐらいあるのかを見ておくのは大切です。
ご質問の方のように最高血圧が135とか140ぐらいならあまり心配はありませんが、ストレスが高いときに160、170になることはありますので、それが毎日のことなら、対処しなければならないと思います。
岩永 ありがとうございました。それでは会場からの質問をいただきましょう。
――飲酒の時には血圧が低くなるが、翌朝は高くなるというお話でした。何が原因でしょうか? また、どれぐらい飲むと早朝高血圧になるのでしょうか?
土橋 お酒を飲むと血管が開きます。お風呂に入ったのと同じことになります。入浴後に体が冷えれば血管が閉まって血圧が上がるのと一緒で、人間の体は下がったら元に戻そうとします。早朝高血圧では、開いた血圧がまた、ぎゅーっと閉まるわけですね。
高血圧学会では、ビールでいえば500cc、中瓶1本ぐらいまでを適量としています。それぐらいなら問題になることはないと思っていますが、朝の血圧がなかなか下げられない人を調べてみると、やはり晩酌をしている人が多いんですね。どれぐらいの量がいいかは個人差があります。
――私は何でも薄味にして料理をしているつもりで、煮物にはお酢を入れるとか、麺類も薄味にして辛み成分を入れています。その時に使う辛み成分は血圧には関係ないのでしょうか?
土橋 辛いもの、それにハーブ系などの香味成分が血圧を上げることはありません。汗をかくような辛いものは血管が開きますから血圧は下がると思います。食塩を使う代わりに香辛料やハーブを使うことは、減塩の手法としてよく言われることです。
――みそ汁などを作る時、濃度を判断する基準はあるのでしょうか?
土橋 スープなどにつけて測る塩分チェッカーという道具があります。これで0.7~0.8%ぐらいが京都のお吸い物ぐらいで、1%を超えるとかなり塩辛い。それが基準になりますね。ただし、薄味のものでも2杯飲めば意味がないわけです。従って、量を考えずに濃度だけを気にしても意味がないのですが、通常、塩分チェッカーを入れて0.7ぐらいだと薄く感じると思います。人間が塩分を感じる下限値が0.6ぐらいのはずですから、0.8から0.9ぐらいが普通だと思っていただければと思います。
岩永 土橋先生、本日はありがとうございました。
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