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宋美玄のママライフ実況中継

コラム

世界一子供が幸せな国・オランダ その理由を探りに(出産編)

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息子が1歳になりました

息子が1歳になりました

 週末に息子が初めての誕生日を迎えました。いやー、2人目は成長が早いですね。実際は時間が () つのが早く感じるだけで、まだ一人で立ったり言葉をしゃべったりはしないのですが。赤ちゃんの無邪気な笑顔を見ることができた幸せな1年間でした。これからの子供たちの成長がますます楽しみです。

 オランダでの調査報告の続きです。オランダは自宅出産が多く、欧州の中では周産期死亡率が高めであることは事前に知っていたので、バースセンター(院内助産院)化している多くの諸外国とは違う興味を持っていました。今回は2つの助産院と一つの大学病院(University Medical Center のWilhelmina Children’s Hospital)を訪問し、オランダの周産期システムについて詳しく聞くことができました。

産むのは病院か自宅で

 オランダの妊婦は、助産院または病院で妊婦健診を受け、産むのは病院か自宅です。病院に初めからお産までかかる人と、助産院で健診を受けて病院で産む人、助産院で健診を受けて自宅で産む人がいます。かつては自宅出産が主流でしたが、自宅出産の方が危険であることが知られたり、無痛分娩の希望者が増えたりして自宅出産をトライする人は約13%に減っているそうです。そしてそのうち6%は病院に搬送されているそうです。

 助産院には分娩施設はなく、自宅または病院に出張してお産の介助をするための道具がまとめられていました。助産師は傷を針と糸で縫ったり、輸液や子宮収縮剤を投与したりすることもできます。自宅から病院に搬送された場合でも、助産院の助産師が付き添い、そのまま病院の設備で分娩介助をするそうです。自宅でも病院でもフリースタイルのお産という点でやることは全く一緒だとのことでした(場合によっては病院の助産師と交代することもあるそうです)。

 大学病院の先生に「助産院からの搬送は負担じゃないんですか?」と聞いたところ、距離も近いし連携しているので別に負担とは感じないとのことでした。助産院と病院は、妊娠中から患者の情報を共有しているそうで、そのあたりは日本の助産院と病院の関係とは違っています。

助産院によって考えも様々

 今回は2つの助産院に伺ったのですが、一つは、「病院というのはとにかく理由をつけて医療介入をしたがるのよね」「 会陰(えいん) 切開なんてしなくてもほとんど切れないわよ」のように病院出産を敵視しているようなことを重ねて言われ、日本の「自然出産派」の人のようだなと感じました。

 ですがもう一方の助産院は、「リスクがあればすぐに病院に送るけれど、何もなければ自宅出産をトライするという妊婦の選択肢はあってほしいわ」「自宅出産のメリットは、リラックスできる、入院のタイミングや退院の手間がない、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)など病院特有のバクテリアに感染することがないということね」のように妥当な意見ばかりで、助産院にもいろんな考えのところがあるようです。

妊婦全員が公費で新型出生前検査が可能

 オランダの周産期システムは、それなりに 上手(うま) く機能していて、日本のような産科医療危機はなく、妊婦に不安を与えているということはないようでした。

 しかし、新生児医療を含めて日本の方が成績は良く、オランダからシステムとして学びたいと思うところは正直なところあまりありませんでした。一点だけ、出生前検査で、妊婦全員が年齢にかかわらず公費でNIPT(新型出生前検査)を受けられるところは日本と全く違って妊婦の選択を信用しているのだなと思いました。結果を踏まえてどういう選択をするかは民族や宗教で異なるため一般化しにくいそうですが、選択を尊重しているとのことで、それはいいところだと思いました。

 次回は、オランダの子育てについて書きたいと思います。

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宋 美玄(そん・みひょん)

産婦人科医、医学博士。

1976年、神戸市生まれ。川崎医科大学講師、ロンドン大学病院留学を経て、2010年から国内で産婦人科医として勤務。主な著書に「女医が教える本当に気持ちのいいセックス」(ブックマン社)など。詳しくはこちら

このブログが本になりました。「内診台から覗いた高齢出産の真実」(中央公論新社、税別740円)。

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