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食と高血圧~減塩のすすめ(2)減塩は社会全体で

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減塩は社会全体で

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「減塩食品をどう使うかなど工夫が必要になる」と語る土橋院長、右は岩永・ヨミドクター編集長(10月29日、読売新聞東京本社で)=高梨義之撮影

 食塩はいろいろな食行動と結びついています。お酒を飲む人が食塩をたくさん食べるのはわかりますよね。塩辛いものが欲しくなりますから。最近では減塩のおつまみもいろいろ出てきています。

 例えば、焼き鳥屋さんに行った場合、まずお酒のつまみに豆腐、サラダ、海藻などを食べて、ある程度、おなかが満たされたら焼き鳥が5本ぐらいあればいい。おいしく食べて、野菜も食物繊維もたくさん取れた上、減塩もできます。

 私たち高血圧の専門医が、一生懸命指導をすると、9.6gぐらいだった人を8gぐらいにまで減らすことはできるのです。ただし、目標は6g。本人の努力だけでは難しいです。つまり、努力しないで塩分量が下がる環境を作っていかなければならないと考えています。

 みなさん、自分では減塩をしたいと考えても、具体的な方法が分からないのですね。ですから、減塩をしようとしている人ができるようにしなければならない。そのためにも、国に対していろいろ要望したいことがあります。

 それぞれの食品に食塩がどれぐらい入っているかがすぐにわかる表示にしてほしい。どこ行ったら減塩食品を買うことができるのかもわかるようにしてほしい。一人り暮らしの人はコンビニによく行くので、そちらの環境も整備してほしい。

 何よりも、その人がどれぐらいの塩分を取っているのか、すぐにわかるようなシステムにしたいと思っています。

 無理やり、減塩に慣れさせるという方法もありますが、「おいしい」と思いながら食べて、それが自然に減塩になっていれば、もっともっと効果が上がります。

 日本は欧米に比べて、様々な形で塩を取っているので、簡単ではありません。海外に2、3日滞在するだけで日本の食事を食べたくなりませんか? 日本人は日常的に和洋中の料理を食べていますから仕方ありません。

 アメリカやイギリスの食生活は非常にシンプルですよね。イギリスなどは、パン、ハム、チーズ、ソーセージなどをねらい打ちにすれば、比較的簡単に減塩が達成できるわけです。そこが日本人の難しいところです。

 イギリスでは、いろいろな食品を買ってきては塩分を測り、その結果を公表するようなことをやったリーダー的存在がいました。それを受けて、企業が減塩にしっかり取り組むようになり、さらに政府も後押しをしたので、減塩が進みました。

 ある食品から10%減塩しても、人の味覚では気づかないとされています。つまり、従来は1gだった塩分が0.9gになっても、ほとんどの人は気がつかない。10%ずつ徐々に減らしていけば、確実に減塩ができるというのがイギリスのやり方です。企業の努力、世論、それに政府が努力することで実現したわけです。

 日本でもいろいろな企業が減塩を意識した食品を出してきていますので、いつかそれはできると思います。

 栄養成分表示では、塩分がナトリウムで表示されています。そのために、一般の人にとっては非常にわかりにくくなっています。

 ナトリウムというのは、食塩のことではなく塩化ナトリウムのこと。たとえばカップ麺にナトリウム2.5gと書かれていたら、食塩に換算すると6.4g入っていることになります。ここがなかなかわかってもらえない。麺類でスープ1.6gと書いてあったら、食塩換算すると約4gです。つまり、スープを飲む量を半分に減らせば2gの減塩になります。塩分の摂取目標はグラムで示されているのだから、ナトリウムではなく食塩換算の表示にすべきなのです。

 福岡で主婦の方17人にご協力いただき、1か月間に買ったすべての食料品を分類して、ナトリウム、食塩相当量などの表記の状況を調べたことがあります。パンの場合、併記も含めて食塩相当量で記載されていたのは25~30%ぐらいしかありませんでした。みなさんもパンを買うときに、どう記載されているか見てください。もちろんパンだけではなく、乳製品や麺類なども食塩相当量と併記するものを増やしてほしいと言っているのですが、やっと食塩相当量の表示をすることを認めてもらえました。2020年から義務化されます。

 みそやしょうゆなどは違いがよくわかります。スーパーに行ったら、賞味期限やカロリーだけでなく、そちらもぜひ見てください。消費者が減塩になっているものしか買わないという行動を取るようになると、企業はそれしか作らなくなります。

 高血圧学会のホームページには減塩委員会のコーナーがあり、減塩食品のリストもあります。それぞれの食品にはURLが表示されていて、クリックすれば商品に飛ぶことができます。ぜひ活用してください。しかも、おいしくないと意味がないので、私たちが普通のものと減塩のものを食べ比べています。

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 近年、食育が盛んですが、私たちの世代は、小さいときには食塩をいっぱい食べているので、大人になっていきなり減塩しようとしてもうまくいかない。子どもの時から減塩が当たり前の食生活をすることが大事だとも強調しています。

 以前に、福岡市早良区の保健所に協力いただき、1400人の3歳児の尿から塩分量を調べたことがあります。平均4.4gでしたが、3歳児の平均体重は14kg。大人の4分の1の体格なので、それに単純換算すると15~16gの食塩を取っていることになります。3歳にして10g以上食べている人も4%いました。

 毎日、間食をしている子どもの塩分量は多く、お母さんがおやつに何を食べさせているかが問題になります。「毎日、果物を食べさせています」というお子さんの尿には、やはりカリウムがたくさん出ている。だから、おやつは果物がいいわけです。

 「自分以外の家族は血圧が高くないから、私だけ減塩をやっています」という方がいらっしゃいます。ところが、これは血圧だけの問題ではなくて、食塩をたくさん食べる人は心臓が肥大しやすくなったり、動脈硬化、脳卒中、腎不全、心不全などと一緒に尿路結石、骨粗しょう症、胃がん、ぜんそくなどのリスクも高めたりすることがわかっています。

 特に胃がんは問題です。九州大学が福岡市に隣接した久山町で長年実施している疫学調査では、食塩を10g以上食べている人は、10g未満の人に比べて3倍ぐらい胃がんが多いことがわかっています。理由がいくつか想定されています。食塩をたくさん食べていると、ピロリ菌が住み着きやすくなること。また塩分濃度が高いことで粘膜が傷みやすくなって、発がん物質が取りつきやすいという考え方もあります。

 がんだけではなく、女性の場合は、尿と一緒に塩分が出て行くときに、カルシウムが出て行ってしまうので結石ができやすい。さらに当然、体内のカルシウムが不足するので、骨から導入されて、骨粗しょう症になりやすくなると想定されています。

 気道過敏症を進める可能性があるので、ぜんそくにもよくありません。

 血圧以外にも、塩分はいろいろな悪さをするわけです。

 日本人の平均寿命は延びましたが、それでも平均寿命から健康寿命を引いた要介護期間は男性が9年、女性は13年程度と言われています。要介護、つまり寝たきりになる原因は3人に1人が脳卒中、5人に1人が認知症と言われています。従って、生活習慣を改善することで、要介護期間を短くして、健康長寿につなげることができるわけです。2007年度のデータですが、日本人が亡くなる原因のトップはたばこで、がん、脳卒中、心筋梗塞、さらに肺の病気などで命を落としています。

 2番目が高血圧です。ほとんどは心臓病や脳卒中で亡くなる。続いて運動不足、高血糖と続き、5番目の原因が食塩です。

 ご自宅で3度の食事をされる方は、比較的、減塩はしやすいと思います。問題は外食やお弁当です。日本人の場合、麺類とどう向き合うかも重要です。ラーメンを食べに行って、スープを全部飲んでしまう人に減塩は難しく感じるはずです。とはいえ、そういう人は意識すれば減らせるわけですから、むしろ減塩はしやすいのです。

 それがなくて減塩ができていないとなると、加工食品をどう選ぶかなどが課題になります。成分表示を見て、減塩食品をどう使うかなどの工夫が必要になりますね。

ご清聴、ありがとうございました。

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