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食と高血圧~減塩のすすめ(2)減塩は社会全体で

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食塩が血圧を上げるメカニズム

食と高血圧~減塩のすすめ(2)減塩は社会全体で

減塩と血圧について解説する土橋院長(10月29日、読売新聞東京本社で)=高梨義之撮影

 土橋 ここで高血圧になる体内のメカニズムを簡単に説明しましょう。

 血圧は心臓から出る血液の量、心拍出量と言いますが、それを血管で受ける抵抗で決まります。心臓から出る血液の量が増えると当然、血管に圧がかかります。一方、同じ量の血液が流れていても、血管がぎゅっと閉まっていると圧は高くなります。つまり、血液の量、それに血管の硬さによって血圧は決まります。

 人間の体内は60%が水分で、常に塩分濃度は一定に保たれるようになっています。だから、余分な塩が入ると、水分を飲まなければ薄まりません。体内の塩分濃度が高いままになってしまいます。結局、濃度を戻そうと水が入ってきて、体液の量が増える。それで高血圧になるわけです。逆に一番簡単に血圧を減らすためには、塩分を減らして、体液量を下げればいい。

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 世界を見渡すと、国や地域によって食塩の摂取量がずいぶん違うことがわかります。50年以上前のデータですが、北日本の地域では毎日20g、30gもの塩分を取っていたようです。一方、アラスカのイヌイットとか、南米のヤノマモインディアンなど、世界には食塩のない食文化を持つ人々がいます。そういった地域の人たちには高血圧の発症はゼロです。加齢でも血圧が上がりません。これを見ても、高血圧になる一番の原因が塩であることがわかると思います。

 もちろん、塩は人間が生きてくための必需品です。とはいえ、普段食べている植物や魚などには、最低限必要な塩分が含まれているので、命をつなぐにはそれで十分なのです。

 現代のような生活様式は、長い人類の歴史から見るとわずかな時間に過ぎません。昔は本当に塩が不足していたので、上杉謙信が武田信玄に「塩を送った」ことが美談として伝えられていますが、もしかしたら策士だった上杉謙信は武田信玄を脳卒中にしようと画策したためかもしれません。もちろん、それは冗談ですが、日本高血圧学会が、今年、一般の方々から川柳を募集し、その受賞作品の中に「謙信は知っていたのか塩は敵」というのもありました。

 さて、減塩すると、どれぐらい血圧が下がるのでしょうか?

 実は残念ながら、それほど劇的な改善は望めません。個人差はありますが、1gの減塩でも平均1ミリ程度。1週間減塩をがんばって、どれぐらい血圧が下がっただろうと見ても実感できるほどの効果はありません。カロリー制限してダイエットをしたときほどの目に見える効果がないのです。だから減塩の効果は感じづらい。

 ただし体重や運動を取り入れ、生活習慣を改善するなどを複合的に実行することで、より大きな効果を得ることができます。また減塩することで、血圧の薬の効果が高まることもわかっています。

 そこで私たちは、単純に1ミリしか下がらなかったという効果だけではないことを患者さんに説明するようにしています。

 アメリカで取り入れられている高血圧を予防するための食事に「ダッシュ食(Dietary Approaches to Stop Hypertension)」があります。低塩分、低脂肪、食物繊維も豊富で、アメリカで推奨されている食事です。

 けれど、「うさぎの餌」みたいと 揶揄(やゆ) されてしまいます。味も見た目も残念な内容です。

 本来の日本食はかなりダッシュ食に近い。西洋化してからハムやチーズなどをたくさん食べるようになりましたが、本来の日本食は、野菜と魚が中心でした。食物繊維が豊富で、脂肪分も少ない。唯一、食塩が多いのが欠点です。だから、日本食に減塩の要素を加えればダッシュ食になります。

 さて日本人の塩分摂取量はだんだん減ってきています。現在の平均値は、男性は10.9g、女性は9.2gです。厚労省の推奨は男性が8g、女性が7gですので、あと2~3gを減らす必要があるわけです。国民全体で減らすことはすごく大変なことです。

 私がいた病院で、高血圧の患者さん6000人以上に尿から、どれぐらいの食塩を取っているのかを調べたことがあります。その結果、男性が平均で10g、女性が8.2gでした。高血圧の人は6gが目標ですが、それを達成できていた人は13%、女性で25%です。医師が指導してもこれですから、6gのハードルはかなり高いです。

 実は政府の国民栄養調査を見ると、塩分の取りすぎに気をつけている人の割合はかなり多いのです。男性で4割、女性で5割以上が気をつけているとのこと。

 ところが、薄味とはいっても主観的であり、本当に薄味かどうかは比較してみなければわかりません。それに薄味の食品でも人の2倍、3倍の量を食べていれば、結果的に塩分は多く取っていることになります。ここが盲点です。

 体重と同じように、自分が取っている塩分量も「見える化」できればいいのですよね。

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 どこで食塩を取っているかは、たとえばしょうゆからは2.4g、みそから1.1g、食塩そのものが1.1gなどが想定できます。ということは、「しょうゆは使わない」「みそは減塩」などをすれば、3~4gぐらいの減塩はできることになります。

 難しいのは加工食品。つまりスーパーなどから買ってきたものの中に、どれぐらいの食塩が入っているかです。しょうゆを使わずにかまぼこを食べても、元々食塩がたくさん入っていれば意味がありません。ここが見えないから減塩が進まないのです。

 うどんやラーメンをよく食べる人は、その頻度を減らすことと、その汁を全部飲まないこと。それに食塩やソースを習慣的にかけることはやめる。この2つは目に見える効果が大きい。逆に、ひものとか漬けものなどで目に見える効果を出すのは難しい。

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