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ヨミドクターセミナー「食と高血圧~減塩のすすめ」

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食と高血圧~減塩のすすめ(1)6つのうち何ができますか?

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患者がすべき6つの生活改善

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 降圧目標ですが、みなさん一律というわけではありません。75歳以上の人は150/90未満。これが最初のゴールです。達成後、元気な方なら140/90を目指すべきです。

 65歳から75歳の前期高齢者の方。それに脳卒中や心筋梗塞を起こしたことがある方は140/90がゴールです。

 そして糖尿病の方、それにたんぱく尿が出ているような腎臓の悪い方は、130/80と一段厳しい目標になる。ほかの人と違う目標を設定されていると感じたら、それは合併症によるリスクの差だと理解していただきたい。また、家庭血圧計をお持ちの方は、それよりも5低い数値が目標となります。

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 たばこを吸うと、30分ぐらいの間は血圧が上がります。たとえば1日20本吸う人なら、それだけで毎日10時間ぐらいは血圧が上がった状態になります。

 トイレで力んだりすると、普段は120、130の人が普通に170、180ぐらいにまで上がってしまう。血圧の急上昇、急下降などを招きやすいのでトイレでも気をつけていただきたい。

 寒いところでは血管が収縮しますので、血圧は上がります

 ストレスでも上がります。人に怒られるより、怒る方が上がります。一気に血圧を上げてしまい、それが血管を傷める原因になります。やっぱり怒るのは損です。

 お風呂に入ると血圧は下がりますが、熱いお湯は逆に血圧を上昇させます。大事なのは、洗い場、脱衣場などの温度の差を小さくすることです。

 お酒を飲むと、その時は下がります。特に顔が赤くなる人は血管が開きますので、確実に下がります。ただし、翌朝の血圧は高くなることがわかっています。飲んだ後にぐっと下がって翌朝には上がる。これが危ないんですね。だから、お酒を飲んで血圧が下がっているからと過信して薬はやめないこと。薬は翌朝の血圧を下げるためだと理解していただきたいと思います。

 「夜中に低血圧になってしまいませんか?」と言われますが、よく使われるカルシウム拮抗薬などは、元々低い血圧をさらに下げる力はありませんので、安心して飲んでいいと思います。

 高血圧対策として、有酸素運動、つまり歩くことをお勧めしています。ロコモティブシンドロームの予防のためにも、ただ歩くだけではなく、レジスタンス運動、階段の上り下りなどの負荷をかけたような脚の運動が有効というのは、立ち上がったときに血圧を落とさないという意味でも重要です。

 それに自宅で測ると120/70ぐらいなのに、病院で医師が測ると150以上になったりする人がいます。この症状を白衣高血圧と呼び、治療が不要な場合が多いです。自宅できちんと測っていれば、病院で150以上の数値が出て「治療しましょう」と言われても、「朝は120以下でした」と言えばいい。だから、日々の計測は大事なのです。

 問題なのは仮面高血圧と呼ばれる症状です。朝、自宅で測ると150以上もあったのに、薬を飲んで病院で測ると120以下だったりする。数値を見て、医師は「大丈夫」と診断してしまいますが、実際には自分の血圧が150もあることを患者さんが理解していれば、正確な治療を受けられます。朝の血圧を下げるために、朝晩の薬の配分を変えるなど、医師はいろいろ工夫をします。家庭血圧をきちんと測っていただきたい理由はそこです。

 医師が月に一度程度測る血圧はあまり当てにならない。一番当てになるのは、毎日、みなさんが家庭で測る血圧の方です。ぜひ、実践していただきたいと思います。

 岩手県の大迫町で行われた調査で、朝の血圧が135以上の人は、正常の人に比べて脳卒中のリスクが2.2倍になっているとのデータがあります。これが先ほど申し上げた朝の自宅での血圧は135以下にする根拠の一つになっています。

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 日本では50歳以上の男性、60歳以上の女性は2人に1人以上が高血圧です。年齢問わず国内に4300万人もいる計算になります。

 どうして、こんなに高血圧は多いのでしょう。

 高血圧は、遺伝的要因に環境要因が加わって発症することがわかっています。

 家族に高血圧の人が多い場合、多少の減塩や運動、メタボ対策などをしても、結局、高くなってしまうことが多いです。一方、高血圧の家族がいない場合は、食塩をたくさん食べても、肥満になっても、高血圧にならなかったりもします。遺伝的要因と環境要因のバランスで発症したり、しなかったりするのです。

 とはいえ、親を代えるわけにはいきませんね。となると環境、つまり生活習慣を変えるしかありません。

 高血圧の人の修正ポイントは6つあります。最初に病院に来られた方は、やはり最初から薬は飲みたくない。だから「がんばります。何をしたらいいでしょう」と言われます。そんなときに「この6つの何ができますか?」と聞くことにしています。

 (1)減塩(2)野菜・果物をたくさん食べる(3)肥満解消(4)有酸素運動(5)アルコールは適度に抑える(6)たばこは吸わない

 まず大切なのは「減塩」。そして「野菜や果物をたくさん食べる」です。食塩、つまりナトリウムは悪玉ですが、善玉にカリウムという物質があります。野菜や果物にはカリウムがたくさん入っています。カリウムをたくさん取ると、ナトリウムが体外に出ていくことになります。いわば塩抜きができるわけです。

肥満の人は体重を減らす。そして毎日30分、もしくは1日おきに60分。1週間で3時間の有酸素運動をします。お酒は1日1合まで。ビールなら500cc。もちろん、たばこはやめる。

 この6項目をがんばっていただいて、3か月、様子を見ます。それでも下がらなければ薬で下げることになります。とはいえ、薬を飲み始めても、その後、がんばって血圧を下げることができれば、薬を減らしたり、やめたりすることもできます。

たとえば仕事をされている間は血圧が高かったけれど、定年退職されて、食生活が安定したり、仕事のつき合いが減ったり、ストレスが減ったことで血圧は下がり、薬も減る人がたくさんいます。

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