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食と高血圧~減塩のすすめ(1)6つのうち何ができますか?

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 読売新聞の医療・健康・介護サイト「ヨミドクター」は10月29日、医療・健康セミナーを東京・大手町の読売新聞東京本社内で開きました。テーマは「食と高血圧~減塩のすすめ」です。

講師:製鉄記念八幡病院(北九州市)院長、理事長  土橋(つちはし)卓也(たくや) さん

1980年九州大学医学部卒業、高血圧専攻。米国クリーブランドクリニック留学を経て、2003年九州医療センター高血圧内科科長、九州大学医学部臨床教授。14年1月、製鉄記念八幡病院副院長、高血圧センター長。15年4月から現職。日本高血圧学会減塩委員会委員長。

聞き手:岩永直子・ヨミドクター編集長

高血圧治療の基準とは

食と高血圧~減塩のすすめ(1)6つのうち何ができますか?

高血圧の治療や対策、生活改善などについて語る土橋院長(10月29日、読売新聞東京本社で)=高梨義之撮影

 私は高血圧の治療を専門としておりますが、主に生活習慣の改善、中でも減塩について研究をしてきました。日本高血圧学会では、減塩を啓発する委員会の委員長を拝命しております。今日は高血圧、それに食塩を中心とした生活習慣をどうしたらいいかを中心にお話しします。

 生活習慣病はご承知の通り、食事、運動、休養、たばこ、お酒などが病気の発症や進行に関係する疾患群と定義されます。高血圧はその代表格です。病院や健診で計測する診察室血圧、もしくは随時血圧と言いますが、上が「140」、下が「90」のいずれかを超えているものが高血圧の基準です。

 家庭血圧計の計測では、それぞれ「135」「85」と病院の数値より5ずつ低い基準が設定されています。どうしてそうなるかは後で説明しますが、病院よりも自宅の方が低く出ることはおわかりと思います。

 測定は1日2回が基本です。朝起きて、トイレをすませた後で、食事を取ったり、薬を飲んだりする前に測ります。薬を飲んだ後だと、その効き目で下がっている可能性があります。前日に飲んだ薬が朝まで効いているかは大切なデータになります。

 あとは寝る前です。朝晩のいずれも2回測って平均します。

 ご存じの通り、年齢が上がると血圧も上昇します。収縮期血圧、つまり「上の血圧」は年齢とともに上がっていきます。ただし、拡張期血圧、「下の血圧」は60歳ぐらいで上昇が頭打ちになり、やがて下がっていきます。70歳以上のご高齢になると、上は160や170で、下は70みたいに幅が大きな方がたくさんいます。

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 血圧では、上と下のどっちが大事なのかとよく聞かれます。答えは「両方大事」です。下が低いから大丈夫なのではなくて、上も低いほうがいい。だから先ほどの160と70の人は上を下げる努力をしていただきたい。逆に若い人は130の100なんていう数値が出ることがある。この場合、上は大丈夫でも、下の血圧100を下げる努力が必要です。

 基準が140と90だと、大勢の高齢者が引っかかってしまいます。だとすると、本当にこの基準でいいのかという議論もあります。しかし、140以上になると脳卒中や心筋梗塞などになりやすいことがはっきりしています。高齢者でも血圧は低い方がいいとわかっているので、年齢に関係なくこれが基準値になっています。

 私たちは、患者さんがいらしたら、いつごろから血圧が高くなったのかを聞きます。というのも、100人の患者さんのうち5人から10人は治る高血圧(二次性高血圧)の場合があり、若年で高血圧になった方や高齢になって急に血圧が上がった場合など、この疾患の可能性が考えられるからです。

 二次性高血圧の中で治療で治る可能性のある代表的なものは原発性アルドステロン症で、腎臓の上にある副腎にできる良性腫瘍が原因になります。腫瘍を取ると高血圧も治ることが期待できる。次に腎血管性高血圧です。腎臓に行く動脈が細くなり、血液が足りなくなります。腎臓は血液をもっとほしがるために、ホルモンを出し、血圧を上げて腎臓に血をもらおうとする。これによって起こるのが腎血管性高血圧です。それには心臓の冠動脈 狭窄(きょうさく) などでも行われるバルーン治療が行われます。血流を確保してあげれば、早ければ翌日にでも血圧が下がります。

 まずはこういった治る病気を除外します。そして慢性の高血圧であれば、しっかりと治療をします。

 脳や心臓、腎臓の状態、糖尿病などの有無も評価してから、治療方針を決めます。

 生活習慣の改善はみなさんにお願いしますが、どのタイミングで薬を飲むかなどはリスクを基準に決定します。もしも、血圧が「180/100」「200/120」など非常に高い状態だったら、その日からすぐに治療を始めます。また糖尿病や腎臓疾患などの合併症があれば、やはり早期に治療を開始します。

 逆に血圧は高いが「160/100」以下ぐらいで、糖尿病も、コレステロール値も基準値内などに収まっていれば、最長3か月間、生活習慣の改善をがんばっていただく。それでも血圧が下がらなければ、お薬を出すとの手順になります。これが基準です。半年や1年もズルズルと待つようなことはしません。

 高血圧治療に日本で一番よく使われているのが、血管を広げるカルシウム 拮抗(きっこう) 薬です。10人の高血圧の患者さんがいたら、7、8人はおそらく「アムロジピン」という薬を使われていると思います。その次に使われているのがARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)で、「ニューロタン」「オルメテック」などがポピュラーです。カルシウム拮抗薬、ARBの2種類で治療することが多いです。私たちの調査では平均2剤近くが使われている方が多いです。ちなみにARBの場合、減塩をすると非常によく効くし、食塩をたくさん取っていたら効きにくいという特性があります。つまり、減塩をすることで薬の効果が高まるという特徴があります。

 私はこの薬を処方するときに「もしもこれが効かなかったら、私が悪いのではなくて、あなたが塩を取りすぎているからですよ」と言います。

 なかなか減塩ができない方には、塩を抜く薬「利尿薬」を使います。今、このARBと利尿薬を合わせた合剤もよく使われます。塩抜きをすることで、ARBがよく効くのだから一緒にしたわけです。

 かつては「年齢が上がれば徐々に血圧は上がっていくのだから問題ない」と言われていました。2000年に最初の高血圧治療ガイドラインができましたが、当時は年齢プラス90~100ぐらいまでは許容範囲とされていました。80歳の人なら170ぐらいなら大丈夫だったわけですね。治療もそこから10ぐらいを下げるのが目標でした。

 その後、高齢者でも高血圧が脳卒中などのリスクを高めることがわかったので、基準を下げたという経緯があります。昔は少しぐらい高血圧のほうが長生きだなんてことも言われていたのです。

 「薬を飲み始めたら一生やめられない」「飲み始めたら最後だから、飲みたくない」と言われる患者さんもいます。薬なしで下げられるならそれに越したことはありません。そのような患者さんには「適切な時期に飲み始めなければ、一生(健康寿命)が短くなりますよ」と伝えます。

「薬は飲まない方がいい」はウソ

 私は以前に「高血圧の常識・非常識」という書籍を出したこともありますが、最近、生活習慣病の薬についてよく週刊誌に取り上げられています。

 「医者に出されても飲み続けてはいけない薬」「糖尿病の薬はもう飲まなくてもいい」「高血圧、痛風の薬で死にかけた」など。こんなことを書かれたら、患者さんが「先生、この薬を飲んだら、私も死ぬんじゃないですか」などと言ってこられます。

 私は、「週刊誌と私のどちらを信用するのですか?」と聞くことにしています。そして、次のような根拠で治療をしていることをお話しします。

 高血圧の患者さん100人のうち、半分の50人に高血圧の薬を出します。150だった人を130とか140のところまで持って行くわけです。残りの患者さん50人は、そのまま薬を飲まずに経過を見ることにします。その後、薬を飲んだ患者さんからは脳卒中になった方が5人、飲まなかった方からは10人出ました。脳卒中の発症は半分に減っているわけです。脳卒中のリスクを半分に減らせる。だから治療は有効である。こういう根拠に基づいて治療をしています。

 しかし、薬を飲んでいたのにもかかわらず、脳卒中を起こした人も5人いるわけです。副作用が出てしまった人も1人いる。さらに言えば、薬を飲まなかったのに、脳卒中にならなかった人は40人もいる。ここだけを強調して「薬を飲んだら大変なことになった」「薬を飲まなくても元気いっぱい」という人が登場する。これが週刊誌のからくりです。

 実際は、薬を飲まなかった人からは、飲んだ人の2倍も脳卒中を起こした人が出ていることが大切なんです。ここがわかっていただけないんですね。薬を飲んだからといって絶対に脳卒中にならないわけではないし、薬を飲まなくても脳卒中にならない人もいる。あくまでも薬を使って下げた方がリスクは下がると、信念を持って治療をしているわけです。

 「薬を飲まない方がいい」と報道されると、みなさん飲まない方向に流されていく傾向があります。でも、そういった人には脳卒中や心筋梗塞が増えているというデータもあります。週刊誌を信用するか、医師を信用するかですが、薬をやめてしまう患者さんの場合、医師との関係や連携がうまくいっていないのかもしれません。医師は薬を出す理由やその副作用についてしっかり説明をし、患者さんの状態にも細心の注意を払っていることも伝えるべきなのです。「飲んでおいたほうがいいですよ」程度の説明では、患者さんに迷いが生じることになりますよね。やはり医師は薬を出す意味合いについて、きちんと最初に説明するべきですね。一生飲み続けるような薬だと、なおさら患者さんに「本当にこれを飲んでいいのかな」との疑問が出てくるのは当然です。

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