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医療部発

医療・健康・介護のコラム

医療部卒――「一病息災」を2年半担当して

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 医療部OB・斉藤勝久

 人には誰でも、大なり小なりの闘病体験があります。それでは、各界で活躍している方はどんな闘病をしたのでしょうか。その方の半生と、闘病体験を つづ ったのが、読売新聞夕刊連載の「一病息災」です。

 私はこのコラムを2013年11月から16年6月まで担当しました。この間、敬称を略させていただきますが、樋口恵子、丸岡いずみ、武田鉄矢、前川清、三浦雄一郎、小島慶子、肥後克広、なかにし礼、山田まりや、石倉三郎、森口博子、黒沢年雄、秋川雅史、尾木直樹、吉幾三、池波志乃、大谷直子、松本ハウス(ハウス加賀谷、松本キック)、高田文夫、井上順、黒木奈々、松本明子、加藤茶、東儀秀樹、水前寺清子、竹原慎二の各氏、計26回分27名の皆さまを取材しました。

 お名前を見てわかると思いますが、皆、大変忙しい方ばかりなので、直接取材に許されるのは1時間~1時間半程度。登場人物の人選から、その方に関する情報集め、取材の申し込み、そして当日の取材、執筆と、すべて私一人でこなしたので、実に充実した毎日でした。

 少しでも多く新しい事実を引き出そうと、取材の前に準備をしました。そして、直接お話ししながら限られた時間で、いかに濃密にその時の思いを語ってもらうかが勝負でした。

 教育評論家の尾木直樹さんは私との取材の時の話を、ご著書の「尾木ママの7つの人生力」に書いてくださいました。

 「記者さんは、これまで多くの人の病歴を見てきて、『病気が人生の転機になっていることは多いのですよ』とおっしゃった。記者さんに指摘されて、初めはそんなバカなと思いましたが、私の人生における転機、重要なところは、ほとんど全部病気が関わっていたことに初めて気がつきました」

 「一病息災」の連載は、ネット版のこの「ヨミドクター」にも掲載されるので、多くの方に読んでいただいているようです。

 記事はまた「ウィキペディア(Wikipedia)」の出典などにも引用されました。

 例えば、女優の大谷直子さんのウィキペディアには、出典として4項目も引用されています(2016年11月現在)。筆者として私の名前も記されているのに驚きました。

 一番読まれたのは、報道番組キャスターの黒木奈々さんの連載(7回)だったと思います。胃がんと闘いながらも、週1回の限定とはいえ、みごと復帰し、私の取材にも1時間半余、ていねいに、しっかりと応えていただきました。

 すばらしい笑顔の黒木さんが、わずか2か月後に32歳の若さで亡くなるとは、信じられませんでした。

 「アナウンサー、キャスターとして、人に伝える仕事をしているので、私の闘病体験を伝えたい。それが、若くして病んだ自分の存在意義だと思っております」

 黒木さんはこう語っていました。その言葉通り、がんの痛み、闘病者の不安と悲しみ、抗がん剤の副作用、味覚障害など、実に生々しく語ってくれました。何度か目元が潤み、涙をこらえていた姿を今も思い出します。

 若くしてがんと闘った人の貴重な証言資料になると私は思い、予定の掲載回数を大幅に増やしました。全く予期せぬことでしたが、亡くなる直前まで連載され、ご本人の最後のロングインタビューになってしまいました。

 黒木さんのウィキペディアには、一連の記事が出典として3項目、さらに亡くなった直後に「ヨミドクター」に書いた記事が「参考文献」として明記されています(2016年11月現在)。

 登場していただいた皆さんの取材でいつも感じたのは、襲ってきた病魔に強い意志で立ち向かい、悲しくつらい体験を重ねながらも、みごとに闘ったことです。だから、皆さんは自信を持って闘病体験を堂々と語ってくれました。その姿を、読者の皆さまにお伝えできていたら、幸いです。

 私は65歳を迎え、読売新聞記者はシニア退職で卒業しましたが、今もお誘いがあれば、書き続けています。

 ご愛読、ありがとうございました。

斉藤勝久

社会部などを経て、1994年に半年ほど、医療部の前身の「健康・医療問題取材班」に参加。60歳で定年退職の後、シニア記者として2013年から医療部に在籍。「一病息災」のほか、健康・医療情報の連載「元気なう」、読者投稿「わたしの医見」などを担当。16年6月、シニア定年で医療部を卒業。翌7月からフリーで執筆活動中。

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医療部発12最終300-300

読売新聞東京本社編集局 医療部

1997年に、医療分野を専門に取材する部署としてスタート。2013年4月に部の名称が「医療情報部」から「医療部」に変りました。長期連載「医療ルネサンス」の反響などについて、医療部の記者が交替で執筆します。

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