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世界一子供が幸せな国・オランダ その理由を探りに(妊娠編)
先週はオランダに出張していて、こちらのブログの更新をお休みさせていただきました。現地2泊という弾丸出張だったのですが、帰ると娘が飛びついて迎えてくれました。お土産に買ってきたディック・ブルーナの木製クリスマスの人形劇セットを喜んで遊んでくれています。
「2人目の壁」を越えるための視察
今回オランダに行ってきたのは、2人目の子供が欲しいのに踏み切れないという「2人目の壁」を多くの人に越えてもらえるようにするための活動をしている一般財団法人「1more Baby応援団」の調査のためでした。他のメンバーは現地で10日間取材を行っていましたが、私が参加したのはその一部でした。
オランダは国連児童基金(ユニセフ)で「世界一子供が幸せな国」に認定されたそうで、その理由を知るために日本からも多くの人が視察に行っているのだそうです。私は今回、大学病院と二つの助産院、親子参加型保育園と一般家庭に伺ってお話をお聞きしました。1more Baby応援団では、そのほかにも行政、企業、学校などを訪れています。
訪問を通して、オランダは日本とは様々な面で異なっていることが分かりました。制度も人々の考え方も全然違い、「日本もオランダのようだったらなあ」と思う面と、日本の今のまま変える必要はないかなと思う面が両方あったのでご紹介していきたいと思います。今回は妊娠について、ユトレヒトのUniversity Medical Center のWilhelmina Children’s Hospitalを訪問し、産科と生殖医療の教授の方々にお聞きしたお話を書きたいと思います。
オランダでは、不妊治療は年齢制限はありますが、治療費を公費でカバーしてもらえます。体外受精の平均はヨーロッパ全体の平均と同じく38歳で、日本と違い卵子提供が受けられるそうです(卵子提供は希望者が400人待ちとのことでした)。未受精卵の卵子凍結は、日本と同様に最近増えているそうですが、凍結卵が実際に使用される例はとても少ないそうで、これも日本と似た状況でした。
不妊治療の正しい情報、大学病院が発信
先生方の話で興味深かったのは、オランダでも不妊治療の話題はなんとなくタブーで、困っている人が表立って話しやすい環境ではなかったそうです。そこで大学病院が必要とされる情報を宣伝し、風土を変えるように努力されたとのことでした(大学病院では医師の給与が一定のため、営利目的の情報が発信されないのだということを強くおっしゃっていました)。日本でも不妊治療について熱心に情報発信をされている専門家の方々がいらっしゃるので、少しずつオープンに話せるようになってきているように感じています。
一方で、日本では「妊活」というと、食事で体質を改善したり、体を温めたり、ヨガで妊娠できるというような情報が書籍やインターネットで多く流れているため、必要な生殖医療にアクセスするタイミングが遅れてより高齢になるということが問題視されています。そのことについて話すと、オランダの先生方は驚かれていて、そのようなことはオランダではあまり聞かないとおっしゃっていました。こちらのブログでは度々健康に関わる不適切な情報がネットを中心に氾濫していることを問題視していますが、オランダは同じような状況ではないようで羨ましいと思いました。
今回はオランダで取材した中で妊娠に関することを書かせていただきました。来週以降もオランダの取材報告をしたいと思いますのでよろしくお願いいたします。
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