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介護って、お世話することなの?
その人らしい生活を尊重


介護って
お世話する
ことなの?
施設やお年寄りの家で働く介護の仕事は、食事や入浴を手伝ったり、おむつを取り換えたりと、身の回りの世話というイメージがあるかもしれないね。でも、介護には、その人らしく生きられるように、生活全般を支える役割があるんだ。
介護に携わる人の国家資格に「介護福祉士」がある。この資格は1987年、社会福祉士及び介護福祉士法の制定で誕生した。当時は、お年寄りや障害者など日常生活に支障がある人に、主に「入浴・排せつ・食事」といった身体的な介護を行うとされた。
それが2000年に介護保険が始まったことで、考え方を大きく変えた。それまで高齢者福祉は行政がサービス内容を決めていたが、利用者がサービスを選べることになり、個人の自立的な生活が重視されるようになった。認知症の介護を含め、身体介護以外にも、様々な役割が求められるようになったんだ。
そこで、同法が07年に改正され、介護福祉士の定義が見直された。入浴・排せつ・食事という表現が「心身の状況に応じた介護」と変わり、「尊厳の保持」「自立支援」「他のサービス関係者との連携」などが義務として明記された。
たとえば、食事や入浴の介助をしながらでも、そのときのお年寄りの心や体の状態をよく観察し、生活上の課題やニーズを見つけ出す。
尊厳というのは抽象的だけど、介護される人の生き方や信念を尊重することだ。その人らしい生活が維持できるよう、自分でできることはしてもらったり、ケアマネジャーらと協力して環境を整えたりすることも欠かせない。
介護福祉士は近年、毎年約10万人ずつ増えており、今年9月時点で約150万人に上っている。働く介護職員のうち、介護福祉士の占める割合は4割程度だ。
ただ、高齢化の進展で役割は増す一方、介護職全体のなり手はかなり不足している。仕事が大変な割に賃金が低いなどネガティブなイメージで語られがちだが、労働環境の整備とともに、その専門性を広く社会に知ってもらう必要があるね。(手嶋由梨)
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