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自閉症児、親の早期介入は長期にわたり有効

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自閉症児、親の早期介入は長期にわたり有効

 自閉症は、生まれつき脳の機能が障害されて起こる。なぜ脳機能が障害されるのか、詳しい原因は分かっておらず、根本的な治療は難しいとされている。そんな自閉症に関する研究結果が、このほど、海外から報告された。英マンチェスター大学のジョナサン・グリーン医師らが行った研究によると、自閉症児に対して親が早い時期からコミュニケーションを取るという介入をすると、自閉症の重症度に改善が見られ、その効果は長期的に続くという。詳細は、10月24日発行の医学誌「Lancet」( 電子版 )に掲載されている。

早期介入で、重症度スコアが8.0から7.3へ

 自閉症は、子ども100人に1人程度の割合で発症すると言われている。症状には、「人とうまく関わることができない」「特定の物事に対して強いこだわりを持つ」「言葉の発達に遅れがある」といった3つの特徴がある。治療が必要な病気とは違い、自閉症では社会生活にうまく順応できるように環境を整えてあげることや、生活していく上で困らないようにしてあげることが大切になってくるという。

 今回の研究は、自閉症児に対して親が早期からコミュニケーションを取るといった介入をすることによって、自閉症児の主症状や親子のコミュニケーションにどのような影響が出るかについて調査したもの。対象は、2~4歳11カ月の自閉症の子ども152人だった。

 対象児の半数の親に、2週間に1度、2時間の教育プログラムを6カ月にわたり受講してもらった。子どもの観察の仕方や子どもに対する責任感、コミュニケーションの取り方などを学び、それを生かして1日20~30分ほど子どもと接してもらった。

 実は、同医師らは2010年に、本研究の短期結果について報告している。今回は、対象の自閉症児をさらに5.75年(中央値)ほど継続して追跡し、その長期的な影響を調べている。

 最終的に追跡できたのは121人で、追跡終了時の子どもの年齢(中央値)は10.5歳だった。

 自閉症の重症度には、自閉症診断検査(ADOS)を用いた。スコアは10段階評価で、重症度が高い場合を10とした。

 調査開始時の重症度スコアは、早期介入グループが8.0、通常治療グループが7.9と差がなかった。ところが追跡終了時には、早期介入グループが7.3、通常治療グループが7.8と、早期介入グループで明らかに低下していた。また、重症度スコアが8~10と高い子どもの割合は、早期介入グループで約46%、通常治療グループで約63%だったという。

 自閉症の三大症状のうち、「人との関わり」と「こだわり」に関して、早期介入グループでは長期的な効果の継続が見られた。一方、「言葉の発達」は両グループで差は見られなかった。

 今回の結果から、早期介入による自閉症の症状の改善は、6年近く続くことが示された。これを踏まえ、同医師らは「効果継続の背景にどのようなメカニズムがあるのか、そしてコスト面でどの程度メリットがあるのかについて明らかにする必要があるだろう」と今後の課題についてコメントした。

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kenkohyakka

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