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知って安心!今村先生の感染症塾

コラム

冷凍メンチ事例から学ぶ「O157」の落とし穴

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ステーキのレアは大丈夫?

 とりあえず、「生肉は菌に汚染されている可能性がある」というのが前提と考えてください。しかし、菌は表面についていることがほとんどなので、表面全体がしっかり焼けていれば、感染するリスクは低くなります。つまり、表面に十分な熱が通ったレアのステーキであれば、基本的には大丈夫だというわけです。

「ひき肉」にある落とし穴

 しかし、「ひき肉(ミンチ)」については注意が必要です。火を通す前に肉をまぜてしまうため、中心部まで菌が入っている可能性があるからです。したがって、ハンバーグやメンチのレアはだめです。「ジューシーハンバーグ」も、肉の中が赤いのはアウトです。また、サイコロステーキなどの、いわゆる「成型肉」についても、同じことがいえます。成型肉とは、細かい肉を軟化剤で軟らかくして結着剤で固めるなどして、改めて形を整えたものです。ステーキという名前がついていても、本来はレアで食べられる肉ではありません。これらの肉については、中心部までしっかりと熱を通すことが重要なのです。

冷凍食品でも起こる食中毒

 みなさんは、なんとなく冷凍食品は安心だと思い込んでいませんか? 冷凍でも食中毒が起こることはあるのです。海外では、お 寿司(すし) の冷凍マグロに付着したサルモネラ菌による集団食中毒、アイスクリームに含まれたリステリアという菌による集団食中毒なども発生しています。冷凍でも安心できないのですから、冷蔵庫も過信しないようにしてください。

いったい何が起こったのか?

 今回の事例では、「冷凍メンチ」によってO157の集団感染が発生しました。「メンチ」なので、使っている肉は「ひき肉」です。このため、肉の内部が菌によって汚染されていたことが考えられます。

 なお、本例で問題となった冷凍メンチは、厳密には冷凍食品とは分類されません。本記事の冒頭にある写真のように、製造元でカツとして揚げるところまでは加工せずに冷凍した、一般的には「そうざい半製品」と呼ばれているものでした。このような製品の場合には、購入後に消費者が油であげる時間など、その最終的な調理方法が記載されているのがふつうです。しかし、万一その生産段階でO157のような菌が混入してしまった場合には、油の温度が低めだったり、調理時間が短かったりすることで、中心部に十分な熱がとおらずに菌が残ってしまうこともあるのです。

一般的な冷凍加工品でもリスクあり

 また一般的な冷凍加工品であっても、同じように感染してしまう可能性はあります。加工時に油で揚げてしまう冷凍食品でも、この作業の時点での加熱温度と時間が足りなければ菌が残ってしまうかもしれません。しかし、こうしてできあがった冷凍食品は、消費者が電子レンジなどで加熱してから食べることになります。つまり、ここでもう一度、熱を通すタイミングがあるわけです。仮に冷凍食品に菌が残っていたとしても、食べる前に十分に加熱するように注意することで、食中毒の発生を防ぐことはできるのです。

今回の事例から学ぶ

 このように本事例は、加工時における菌の混入、食べる時の不十分な加熱だけでなく、ひき肉にある落とし穴、そして冷凍食品に対する過信などが重なって発生した事例であったことがわかります。おそらく今回問題となった商品も、これまでは安心して食べることができていたはずです。このようなケースは、決して頻繁に起こることではありません。しかし、いくつかの過信や誤解が重なることで、大規模な食中毒につながることがあるということを、このような事例から学んでおくことが大切だと思います。

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今村顕史(いまむら・あきふみ)

がん・感染症センター都立駒込病院感染症科部長

石川県出身。1992年、浜松医大卒。駒込病院で日々診療を続けながら、病院内だけでなく、東京都や国の感染症対策などにも従事している。日本エイズ学会理事などの様々な要職を務め、感染症に関する社会的な啓発活動も積極的に行っている。著書に『図解 知っておくべき感染症33』(東西社)、『知りたいことがここにある HIV感染症診療マネジメント』(医薬ジャーナル社)などがある。また、いろいろな流行感染症などの情報を公開している自身のFacebookページ「あれどこ感染症」も人気。

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