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在宅訪問管理栄養士しおじゅんのゆるっと楽しむ健康食生活

コラム

「食べられる口」を作るため、訪問歯科医師との連携を(1)

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「食べられる口」を作るため、訪問歯科医師との連携を(1)

東北の秋の風物詩、芋煮会いもにかいで。口の中にトラブルがあったら、せっかくの味覚も台無し

 先日、ある在宅医の先生の「訪問診療」に同行させていただきました。

 その先生から「ある患者さんのご家族が訪問栄養指導を熱望しているから、できれば早めに行ってもらえると助かります」とのメッセージとともに「訪問栄養指導指示書」が届いたのです。

 「熱望」と言われたからには、なるべく早く訪問したいと思います。主治医の往診に同行し、患者さんとそのご家族に直接会って、「食の困りごと」をじっくりと伺ってきました。その場でどのような方針で食生活をサポートしていくかをご家族や主治医と相談して、1週間後には第1回の訪問栄養指導を行いました。

 私は現在、ひと月に約10人の訪問栄養指導を行っておりますが、それぞれの患者さんの主治医から「訪問栄養指導指示書」という書類をいただいてから訪問しています。

 「指示書」というのは、具体的な医療行為について、医師が他の医療職に指示を行うときに発行されるものです。

 私はその「指示内容」に従いながら、ケアマネジャーが作成したケアプランの方針を確認し、無理のない「栄養ケア計画」を作成します。ご本人や介護者にその内容を説明し、同意を得てから訪問することになります。

 例えば、糖尿病の人で「血糖値のコントロールができる食生活の方法を身に付けたい」が目標であれば、具体的にどんな工夫が必要なのかをアドバイスします。この連載で以前にご紹介した糖尿病の高齢女性は、食生活の改善によって血糖コントロールが改善し、糖尿病の薬も減らすことができました。半年間のお付き合いでしたが、先日無事「ご卒業」です。

 私は以前、ケアマネジャー(介護支援専門員)の仕事をしていましたが、実務を行うための認定期間は5年です。私はすでにその期間が過ぎていたため、今月から「再研修」を受けています。そこで、高齢者のケアプランを策定する際の基本的考え方について学ぶ機会がありました。それは、(1)治るものは治す(2)治らなければ補う(3)予防する、というものです。

 例えば、「高齢だから、軟らかいものでないと食べられないのは仕方ない」と決めつけてしまう場合はありませんか? 「軟らかいものしか食べられない原因」がもし「義歯の不適合」や「口腔内のトラブル」だったとしたら、治るものは治して、「食べられる口」を作る努力が必要です。患者さんたちは栄養バランス良く食べることが大切ですが、口の中のトラブルが原因で軟らかいものばかりを選んで食べていたため、ごはんやうどん、パンだけになってしまっていた方がいました。十分な 咀嚼(そしゃく) が必要な肉や魚、食物繊維を多く含む根菜類をほとんど食べなくなり、その結果、低栄養状態に陥ってしまった方もいます。

 ケアマネジャーをしていた頃、ある80代の女性に「入れ歯が歯茎にあたって痛い。外して食事をしているから、お (かゆ) と豆腐しか食べられん……」と相談されました。先輩のケアマネジャーに訪問歯科医師を紹介してもらい、さっそくその女性の家へ一緒に訪問させていただきました。

 歯科医の先生は居間で女性の正面に座り、入れ歯が歯茎のどこにあたるのかを丁寧に確認しながら、入れ歯を調整していきます。こたつの上で削られていく入れ歯を間近で見ながら、「こんなふうに調整していくんだなぁ」と感心しました。

 15分ほどで入れ歯の調整は終わり、女性に笑顔が戻りました。そしてその日の夕食では、よほど (うれ) しかったのでしょう、天丼の出前をとって 美味(おい) しく召し上がったそうです。

 口の中のトラブルをそのままにせず、「食べられる口」にすることで、これほど劇的に食生活が変わるのです。歯科医の訪問治療なら、入れ歯の調整だけでなく、虫歯治療や抜歯などに加え、歯科衛生士による定期的な口腔ケアも受けることができます。

 「最期まで口から食べたい」と願う人は多いですが、そのためにはやはり「食べられる口」が必要です。私にとっても、よりよい食の支援をするために、頼もしい訪問歯科医師との連携を大切にしています。

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塩野崎顔2_100

塩野崎淳子(しおのざき・じゅんこ)

 「訪問栄養サポートセンター仙台(むらた日帰り外科手術WOCクリニック内)」在宅訪問管理栄養士

 1978年、大阪府生まれ。2001年、女子栄養大学栄養学部卒。栄養士・管理栄養士・介護支援専門員。長期療養型病院勤務を経て、2010年、訪問看護ステーションの介護支援専門員(ケアマネジャー)として在宅療養者の支援を行う。現在は在宅訪問管理栄養士として活動。

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