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ホントはどうなの?健康食品・サプリメント

国立健康・栄養研究所

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[ビタミンK]骨のたんぱく質を良好に保つ役割

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ビタミンKは脂溶性のビタミンです

 ビタミンには水溶性ビタミンと脂溶性ビタミンがあります。水溶性ビタミンは水に溶けやすい性質を持つもので、ビタミンB群及びビタミンC等がこれに当たります。一方、脂溶性ビタミンは水に溶けにくく油(脂)に溶けやすいもので、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKがこれに当たります。

 ビタミンKは、けがをした際に自然に血が固まるなどの正常な血液凝固に必要なビタミンとして発見されました。凝固のことをドイツ語で“Koaguration(コアギュレーション)”といい、その頭文字のKを取ってビタミンKと命名されました。天然に存在するビタミンKには、ビタミンK1(フィロキノン)とK2(メナキノン)があります。ビタミンK1は植物に由来するもので、緑黄色野菜、海藻、緑茶、植物油等に含まれています。一方、ビタミンK2には14種類の化合物がありますが、日常的に食事から摂取するものは、納豆菌に由来するメナキノン-7と動物性食品に由来するメナキノン-4です。フィロキノンやメナキノン-7は、生体の中で活性型のメナキノン-4に変換された後、効果を発揮すると考えられています。

ビタミンKの生理作用

 ビタミンKは血液凝固や骨の形成に関与するたんぱく質の活性化を助けるはたらきがあります。血液凝固におけるビタミンK依存性のたんぱく質は、プロトロンビンをはじめとする血液凝固因子とよばれる複数のたんぱく質です。
 一方、ビタミンKは、骨の形成に必要なビタミンでもあります。骨の形成過程ではコラーゲン等の骨の土台を作っているたんぱく質にリン酸カルシウム等のミネラルが沈着しますが、このミネラルの沈着には骨に存在するオステオカルシンというたんぱく質が重要な役割を果たしています。ビタミンKはこのオステオカルシンを活性化してカルシウムとの結合を促すはたらきがあります。骨が硬いけれどしなやかなのは、たんぱく質が土台となってそこにカルシム等のミネラルが沈着しているからなのです。他方、ビタミンKは、骨を形成する骨芽細胞において、骨の主要なたんぱく質であるコラーゲンの合成を促進するはたらきもあります。また、ビタミンK2の特異的な作用として、骨吸収の抑制作用が報告されています。
 その他、ビタミンKは、動脈に存在するビタミンK依存性たんぱく質を活性化して、動脈の石灰化を抑える働きも報告されています。

ビタミンK摂取量と骨密度および骨折の関係

 ビタミンKの摂取量と骨代謝の関係については、大規模な観察研究があります。日本人においては、主に納豆から摂取するメナキノン-7の摂取量が多いほど、大腿骨の骨折率が低いことが報告されています。また、欧米における大規模観察研究においても、ビタミンK1の摂取量が多いほど、大腿骨の骨折率が低いことが認められています。一方、高齢女性においてビタミンKが不足気味な栄養状態では、不活性型のオステオカルシン(低カルボキシル化オステオカルシン)が増加し、大腿骨の骨折リスクが高まることが報告されています。このように、ビタミンKは、骨密度を高めるというよりは、骨折の発生率を低下させるという報告が多くあります。これは、ビタミンKが骨のミネラルの沈着を促進するというよりは、骨のたんぱく質の質を良好に保つはたらきがあるためと考えられています。現在日本では、1日の摂取目安量が1mg前後のメナキノン-7を含む納豆やメナキノン-4を含むタブレット菓子が、骨の健康が気になる方の特定保健用食品として許可されています。さらに、45mg/日のメナキノン-4が骨粗しょう症治療薬として処方されています。また、ビタミンKは栄養機能食品の栄養成分として、血液凝固を助ける旨の表示をすることができます。

食事摂取基準と日本人のビタミンKの摂取量

 日本人の食事摂取基準(2015年版)における成人のビタミンKの摂取目安量は男女ともに150μg/日に設定されています。平成25年の国民健康・栄養調査におけるビタミンKの摂取量は、男性で平均227μg/日、女性で平均213μg/日でした。このことから、男女とも摂取目安量を満たしていると言えますが、食事摂取基準の目安量の値は、血液凝固を対象に策定されたもので、骨の形成に必要なビタミンKの摂取量を目安として策定されたものではありません。最近の研究で、高齢者は若年者に比べて、ビタミンKの必要量が高まっていることが報告されています。現在、骨のオステオカルシンの活性化に必要なビタミンKの量は、おおむね500μg/日と考えられています。これは納豆なら1パック、ホウレンソウなら小鉢二つ分に相当します。したがって、特に高齢者の骨代謝においては、ビタミンKが不足している可能性があります。高齢の女性は特に納豆や緑黄色野菜を意識して摂取するとよいでしょう。
 ビタミンKの過剰摂取については、メナキノン-4の骨粗鬆症治療薬を45mg/日の用量で処方しても安全性に問題がないことが明らかにされていることから、日本人の食事摂取基準(2015年版)では耐容上限量は設定されていません。ただし、ビタミンKは血液凝固を促進するため、ワーファリンなどの血液凝固を抑える薬を飲んでいる場合は、摂取を避ける必要があります。

 ビタミンKについてさらに詳しく知りたい方は、国立健康・栄養研究所「健康食品」の安全性・有効性情報サイトを参照してみてください。

(国立健康・栄養研究所 石見 佳子)

 

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