お知らせ・イベント
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[お口からはじめる全身の健康](1)歯とおなか、長寿の基本
「未来貢献プロジェクト お口からはじめる全身の健康 未病フォーラム2016」(読売新聞社主催)が10月1日、東京都千代田区の東京国際フォーラムで開かれ、約500人が参加した。3人が講演し、最初に今村聡・日本医師会副会長が、日本の医療の現状や健康寿命を延ばすことの重要性を解説した。続いて天野敦雄・大阪大学歯学研究科長・歯学部長は、口の中を清潔にする「
主催 読売新聞社
後援 内閣府、厚生労働省、日本医師会、日本歯科医師会、日本看護協会、日本薬剤師会
協賛 ロッテ
生涯現役、ますます重要…日本医師会副会長 今村聡さん
経済協力開発機構のデータを基に、各国の医療の通知表が作成されています。
日本は、循環器疾患による死亡率など、ほとんどの項目が最も良いA評価です。一番悪いD評価は一つだけです。それは健康状態の自己評価です。日本人は健康ですかと聞かれると、健康ではないと答えてしまうのです。健康状態の自己評価がDなのは日本だけです。すばらしい医療があるのに、否定的な見方をするのは改めたほうが良いです。自分は健康で幸せだと、前向きに考えていかなければいけないと思います。
日本の医療水準が高く評価される理由の一つは、誰もが健康保険証一枚で、どこの医療機関にもかかれる、世界一進んだ公的な医療保険制度があるからです。
日本の平均寿命は男性約80歳、女性約86歳で男女とも世界トップクラスです。しかし、重要なのは健康寿命です。誰の世話にもならず、健康に生きられる年齢のことです。健康寿命は、男性約71歳、女性約74歳です。平均寿命と比べると、男性で9年、女性で12年の差があります。この差を縮めることが大事です。
日本は超高齢社会を迎えます。私が生まれた1951年当時、5%だった65歳以上の高齢者が今は27%。2060年になると40%になります。日本は断トツで高齢化率が高い国です。
そこで今後は高齢者にもっと負担してもらおうという動きが予想されます。
今考えるべきことは、若者の負担をどう減らし、年金や介護、医療など高齢者の社会保障をどう守るのかという点です。医療保険制度など日本の優れた仕組みを守るためには、今までと同じではだめで、一人一人が、自らの健康について考える必要があります。
健康寿命が延びれば、高齢者が医療や介護を受けることが少なくなります。
高齢者が元気に働くことはとても健康によく、認知症の予防にもなります。生涯現役社会を作れば、自らが健康で幸せな人生を送るだけでなく、若年世代の負担軽減にもつながります。
健康と病気の間に未病という概念があります。病気と診断されていないけれど、体に異常が何もないわけではない状態を指します。
年齢を重ねれば、身体機能など様々な能力は徐々に落ちます。でも予防できる病気もあります。不規則な食事や運動不足、喫煙などの生活習慣で起こる病気です。糖尿病や脳卒中、心臓病、がんなどが当たります。
まずは、自分の健康状態について相談できる身近なかかりつけ医を持ちましょう。そこできちんと相談するとともに、健康診断やがん検診を受けることです。異常があったら、指導を受けたり、早い時期に受診したりしてください。
自分の健康を意識してください。体をよく動かすことやバランスのとれた食事も大事です。自覚症状がないから大丈夫だと思わず、きちんと健康診断やがんなどの検診を受けてください。日本がすばらしい国であり続けるため、一人一人が自分の健康を守るという意識を持ってほしいと思います。
◇いまむら・さとし 1951年生まれ。77年、秋田大医学部卒。浜松医科大講師などを経て、99年、聡伸会今村医院理事長。2006年に日本医師会常任理事に就き、12年から現職。
歯周病、糖尿病と密接
元気に長生きするには、口の健康維持が欠かせない。虫歯や歯周病などで歯を失い、よくかめないままでは十分に栄養を摂取できず、体力が衰えてしまう。かむことは脳を活性化する効果もある。歯の数が減ると、寿命が短くなる、認知症になりやすい、転倒しやすくなるなどの報告もある。
国と日本歯科医師会は、80歳になっても自分の歯を20本以上保つことを目指す「8020(ハチマルニイマル)運動」を推進しているが、達成できなくても、入れ歯などでかめる機能を保つことは大切だ。
また、感染症である歯周病は、全身の様々な病気のリスクになる。特に糖尿病とは密接な関係にあり、互いに症状を悪化させるといわれる。
病院で手術を受ける患者に歯科治療や口の清掃を積極的に行うことで、病状の回復が早まり、入院日数が短くなったという報告もあり、国は医科と歯科の連携強化に乗り出している。