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命に関わるストレス、「『考え』のコントロール」で解消…精神科医が解説
日々の生活では、誰もがストレスに直面する。仕事の悩み、身近な人との死別、夫婦ゲンカ――。ストレスがたまると元気がなくなり、時には病気になることも。心の病で悩む人のカウンセリングを行う精神科医で、認知行動療法研修開発センター理事長の大野裕(ゆたか)さんが、BS日テレ「深層ニュース」でストレスとうまく付き合い、心を元気にする方法を伝授した。(構成 読売新聞専門委員・松井正)
◆ストレスが引き起こす病
家庭や職場、友人や近所との付き合いなど、ストレスの感じ方は人それぞれです。自分を追い込むと、ストレスが命に関わる病を引き起こすこともあります。精神科や心療内科などを受診される方も増えています。
症状としては、眠れない、食欲がなくなるというものが多く、それが進むと場合によっては、糖尿病や心筋梗塞など命に関わる病気にもなってしまいます。やはり緊張が続くと、心臓に負担がかかりますから。また最近指摘されるのは慢性の痛みです。腰や肩の痛みにもストレスは影響します。免疫の働きも落ちるので、風邪にかかりやすくなったりもします。
糖尿病との関係は、ホルモンや代謝の変化で起きます。ストレスで食べ過ぎてしまい、コントロールがきかなくなることもあるでしょう。胃痛は、胃液の分泌や血液の流れが影響してきます。体全体に様々な変化が起きるのです。
◆良いストレスとは?
そもそもストレスはどう作用するのでしょうか? 「ストレスとパフォーマンスの関係」と呼ばれるカーブがあります。横方向がストレスの強さ、縦方向が何かをする時のパフォーマンス、いわゆる「出来ぐあい」です。それが山なりのカーブになると言われています。
全くストレスのない状態は、実は何かをする時、あまり良くない。力が入らないのです。集中して一生懸命仕事をする時、ほどほどのストレスが実は必要なのです。しかしそれが行き過ぎると、仕事で頭がいっぱいになってしまう。つまりストレスは、ほどほどの時には役に立ちますが、過ぎると心や体の変調を起こしてしまうのです。
そのコントロールを、ちょうど真ん中ぐらいに位置させるのが難しい。自信があって集中できる状態は、意識すれば感じることができます。大事なのは、行き過ぎていることに早く気付くことです。気持ちが落ち込む、不安が強くなるなど、体調に変化が出てきた時、早めに気がついて、対応できるほどほどのストレスに自分を置くことが大切です。
良いストレス状態とは、寝起きが良かったり、仕事や勉強、家庭のことがスムーズにいったりと、自信のある状態です。逆にストレスがたまるのは、オーバーヒートの状態が続いて仕事がうまくいかず、勉強がうまくはかどらず、精神的に不調で体にも影響が出る状態です。誰でもそうなるのですが、人によって感じやすいストレスが違います。例えば人間関係を大事にする人は、人間関係がうまくいかないとストレスを感じます。一方、仕事が大事な人は、人間関係が多少うまくいかなくても、仕事がうまくいけばストレスを感じません。人によって苦手があり、それを自分で理解することが大事です。
季節や気候も関係あります。暗い天気だと、どうしても気持ちが晴れないし、低気圧が苦手な人は多い。異動のある3月や4月でがんばり、その後いわゆる五月病になる人もいる。最近若い人の自殺で、中高生の9月が危ないと言われますが、夏休み明けは気をつけた方がいいですね。
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