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宋美玄のママライフ実況中継

医療・健康・介護のコラム

認定されていない施設で新型出生前検査 議論の深まりを希望

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認定されていない施設で新型出生前検査 議論の深まりを希望

ハロウィーンでステゴサウルスに仮装させられた息子です

 かなり寒くなってきたので、家と外での服装の調節が大変です。息子のベビーカーのフットマフはまだつけていませんが、靴下をはかせています。娘のときは靴下をはかせるといやがって脱いでしまって、素足で移動し、道行くおせっかいな方に「ちゃんと靴下をはかせないとだめよ」などと言われたことが何度かありましたが、息子はいやがることなくニコニコしています。0歳のときから性格が出るものですね。

 そんな娘も4歳の終わりに近づく今は、だいぶ落ち着いてきました。時々コントロールができなくなって 癇癪かんしゃく を起こしますが、後で自分で反省するようになったのは大きな成長だと思います。

登場は必然? 条件の緩い斡旋施設

 先日このような報道がありました。

  医療機関を名乗る民間団体、指針に反した新型出生前検査を宣伝

 NIPT(新型出生前検査)が、認定されていない施設で 斡旋あっせん されていたと言う報道です。

 新型出生前検査は、ダウン症をはじめとするいくつかの染色体異常を対象としたスクリーニング検査(リスクが高いかどうかを調べる検査)で確定診断ではありませんが、スクリーニング検査としては優秀な検査です。2013年4月から臨床研究ということで日本でも実施されるようになりましたが、事前の遺伝カウンセリングを必須とし、実施する施設の基準も小児科医の常勤医がいる、のように日本医学会主導で細かく定められており、受けられるのも高齢妊婦と決められています。

 この検査は、大きく報道されたこともあって知名度が高く、希望する全員が受けられていないという状況です(費用も20万円程度で安くはないです)。そのため、基準を満たさない施設が検査を斡旋するという事態が出てくるのは必然であったとも言えます。

ほかの出生前検査は“野放し状態”

 その施設では検査について十分な説明がなされていなかったようで、出生前検査に対して特段の信念もなく、収益を目的として斡旋を行っていたとすれば嫌悪感を覚えます。しかし、認定されていない施設で行われていたということのみを問題視するのは、日本の妊婦と家族を取り巻く出生前検査の現状のごくごく一部しか見ていないことになると思います。

 NIPTは、日本に入ってくるときに話題になり、それなりに活発に議論が行われたこともあって、検査を受けることにハードルが課されましたが、その他の検査についてはあまり制限がありません(施設ごとに制限があるところもありますが、探せばやってもらえる、という状況です)。

 初期の超音波検査と血清マーカーを組み合わせた「コンバインド検査」は実施できる施設がまだ少ないですが、クアトロテスト、トリプルマーカーテストのような血清マーカーによるスクリーニング検査(残念ながら検査として優秀とは言えないです)に加え、確定診断である羊水検査も、現状では年齢を問わず受けられています。34歳以下の妊婦さんが、NIPTを受けられないからスクリーニングを飛ばして羊水検査を受けているという状況はいびつなものだと言わざるを得ません。

年齢で一律制限適当か? すべての出生前検査について議論を

 今回報道されたクリニックが認定されていなかったということだけを問題視するのではなく、報道をきっかけに、出生前検査全体(染色体に関するものだけでなく)のあり方について議論が深まることを希望します。

 ちなみに、私は昨年39歳で妊娠出産しましたが、NIPTは費用が高額なので受けず、妊娠12週で超音波と血清マーカーによるコンバインド検査を勤務先のFMC東京クリニックで受けました。数字に安心したのでそれ以上の検査は受けませんでした。個人的には、スクリーニング検査を年齢で一律に制限するということにはあまり意味はないと思っています。全年齢の妊婦さんが必要な情報を提供され、自分で選択できる体制になるといいなと思います。

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宋 美玄(そん・みひょん)

産婦人科医、医学博士。

1976年、神戸市生まれ。川崎医科大学講師、ロンドン大学病院留学を経て、2010年から国内で産婦人科医として勤務。主な著書に「女医が教える本当に気持ちのいいセックス」(ブックマン社)など。詳しくはこちら

このブログが本になりました。「内診台から覗いた高齢出産の真実」(中央公論新社、税別740円)。

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5件 のコメント

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笑顔で楽しく生きてます

アリス

私は検査をせずに出産したら 障害がある子供でした。高齢出産ではありません。 とても可愛くて、色んな事を学んでいます、 もし検査をして諦めていたこ...

私は検査をせずに出産したら
障害がある子供でした。高齢出産ではありません。
とても可愛くて、色んな事を学んでいます、
もし検査をして諦めていたことを考えるとゾッとします。
きれい事でない、と良く言われますが、当事者ではない人がそういうのも当たり前かなぁと思いますし、妊娠中に障害があると分かったら諦める人が多いのも当たり前かなぁ。それは、大きな偏見の中で正しい情報が薄まるからなのでしょう。
色んな家族がいるかもしれませんが、うちの子は、目をキラキラさせて毎日楽しそうに生きてます!
母親の愛ってすごいです!
これから大変なことばかりかもしれません。
だけど、将来的なことも含め、助けてくれる人が地域にたくさんいて、
とてもありがたいです。
先生は簡易検査を受けて安心したということですが、安心しない結果だったら諦めていたのでしょうか。
ちょっとだけ悲しくなりました。

どれだけ差別を受けても何を言われても産んで良かったです。
そんな人もいるってことが分かってもらえるといいなと思います。

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産む産まないは女性に選択権がある以上は…

miyagikenjin

>全年齢の妊婦さんが必要な情報を提供され、自分で選択できる体制になるといいなと思います。 35歳以上の「高齢出産」であろうと14歳~20歳代の「...

>全年齢の妊婦さんが必要な情報を提供され、自分で選択できる体制になるといいなと思います。

35歳以上の「高齢出産」であろうと14歳~20歳代の「出産適齢期」であろうと出生前診断で異常が見つかる時は見つかる、見つからない時は見つからない。
ただ卵子と精子の老化現象の影響で「異常な」確率が高い、というデータがあるだけ。
どの母親に「異常」がある子どもが授かる、なんて産科医はわからないと漫画「コウノドリ」の「無脳症」「口蓋裂」の胎児の話などは教えてくれる。

産む産まない、は当事者である女性が決める権利。
産科医はその決定に対して話しあいを重ね、女性が悔いなく納得したら処置をする。
「異常」があっても「私は産んで育てる」という覚悟、「異常」があったら「私は産んで育てる責任がとれない」という覚悟、2つとも正反対の意味合いの「覚悟」です。どちらが正しいとは割り切れません。
性行為をしたもう一方の男性もよく考えないといけない。
女性の生き方を制限することは今の時代では「差別」ですから。

それは優生思想、と解釈する人が一定数は出てくる。
母体保護法は96年に優生保護法から内容が変わったが、欧米から「日本は中絶天国」と相変わらず批判されている、と主張する人もいる。

8/3と10の宋医師の障害と中絶のコラムとも深く関わる問題です。
産まれたときは健常者でも、成人になってある日突然ALSなどの難病を発症することだってある。傷害による事件、交通事故、天災などによって寝たきりの難病になることも…。

まずは全国47都道府県にほぼある大学病院で、年齢を問わず全ての出生前診断の検査法を希望者に受けられるようにすることから始まるだろう。

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万全ではないこと

おばさん

知り合いの話です。37才で初めて出産しました。出生前検査を行いエコー検査を行い・・・と万全を期して出産を迎えたはずでしたが、何万人に一人の先天性...

知り合いの話です。37才で初めて出産しました。出生前検査を行いエコー検査を行い・・・と万全を期して出産を迎えたはずでしたが、何万人に一人の先天性の病気だったことが出産時に判明しました。なまじっか出生前検査を行い、異常なし=健康と思ったので、ショックが大きかったのではないかと察します。いわゆる出生前検査とは4種類の病気に対するものしか行っておらず、確率は低いもののそれではわからない病気が沢山あることを初めて知りました。こういう例もあるので、出生前検査の限界のことも先生からご説明いただいた方がよいかと思います。<当人がご覧になるかも知れませんので、ご配慮どうかよろしくお願いいたします>

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