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イグ・ノーベル・ドクター新見正則の日常

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「あったらいいな」…理想の病院、クリニック

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 今日は理想の病院やクリニックについて書きますね。「こんな病院やクリニックがあったらいいな」という僕の私見です。

 医療で一番大切なことは、施される医療の質ですが、そこはなかなか判断する基準がありません。極端なことを言うと、手術をする先生は、その素行や、身なりや、言動や、私生活などどうでもいいですよね。手術だけ上手にやってくれればいいのですから。 美味(おい) しいラーメンを出してくれれば、どんなに古い建物でも、サービスが悪くても、また行列しても、ラーメンの味で勝負だという理屈と同じです。そしてラーメンは1日に10軒でもはしごできます。一口食べれば美味しさはわかりますから。ですから比較的評価は当たっています。ところが、医療の本質の良し () しはなかなか比較できないのです。今回はそんな本質とは離れたハード面やソフト面のお話です。

 

きれいで新しい建物を

 まず、建物はきれいで新しい方がいいですね。古いと気が 滅入(めい) りますね。治療が同じであれば、どこで施されても同じだという意見もありますが、そうでしょうか。1泊から数泊で終わるような簡単な病気はどこでもいいかもしれません。でもある程度の入院期間が見込まれる大病であれば、明るく、 清々(すがすが) しく、そして気が晴れる病室が、暗くて、沈んでいて、重苦しい雰囲気の病室よりもいいに決まっています。当然に治り方は違うように思えます。廊下は広い方がいいですね。廊下には絵などが掛けてあるとおしゃれですね。お庭があると入院中の息抜きになりますね。

 

待ち時間、何とかならない?

 さて、待ち時間です。「3時間待ちの3分診療」などと 揶揄(やゆ) されますが、多くの患者さんをさばいて薄利多売で利益を上げている医療構造からして、致し方ない側面もありますが、なんとかならないでしょうか。まずは3時間待っても苦にならないような工夫ができます。たとえば自分の順番が近づいたら携帯電話にお知らせが来るとか、院内専用の通信機器を持ってもらって、そして好きなところで時間を潰して頂いて、10分ぐらい前に待合に来てもらうという作戦です。これらは、実はすでに行われています。

 待ち時間をなくすためには、予約診療を正確に行えばいいのですが、予約診療をしても待たされることは、よく耳にします。それはキャパシティ一杯に、またそれ以上に予約をいれるから起こることで、1時間に2人ぐらいを診療する体制にすれば待ち時間もなくなります。ところが、1時間に10人以上が予約で入っていることも、 (まれ) ではありません。そうであれば、自宅に医者に来てもらうことも一つの方法です。在宅医療では通常、月に2回ぐらいの訪問診療を行っています。医師が決まった時間に患家に来てくれるのです。これであれば、だいたいの時間がわかっていれば少々待っても腹は立ちません。ちなみに往診は予定外の診察で、訪問診療は予定された診察です。

 また、最近は体を触らない、そして患者の顔を見ないでコンピューターばかりを見ている診療もあります。患者を触らないのであれば、テレビ電話での診療でも代用可能です。昨年8月に厚生労働省は従来の方針を大転換して、遠隔診療を基本的に認めました。もちろん保険診療も利用できます。つまり、これからは、検査の結果を聞くとか、著変がないので同じ薬がほしいなどという状況では、病院に出向かなくても、テレビ電話での診察が可能で、処方箋や実薬が後ほど送られてくるという診療スタイルが実際に始まっています。

 初診も再診以上に待ちますよね。先ほどの遠隔診療について、厚生労働省は初診でも認めました。つまり最初に対面する必要はないということです。そうであれば、病院に行った方がいいか迷った時は、まず遠隔診療で症状を訴えて、そして来院の必要があれば、来院して診察や検査を受ける、来院の必要がなければ病院の患者数が減りますので、実際に診察する患者さんの混雑を緩和できますね。

 

クロークが便利、トイレも広く…

 そして、病院やクリニックにクロークがあるといいですよね。特に病院では荷物をもって、移動するのは大変です。雨の日に傘を持って、冬にコートを持って移動することは大変です。ホテルには当然にクロークがあります。もちろんそれを利用しなくてもいいのですが、あれば便利ではないですか。こんな当たり前のことも病院ではなかなかできません。あってもコインロッカーという施設が大多数と思います。

 トイレはだいぶ改善されました。多くの病院は洋式の洗浄機付きの便座となりました。ところがトイレは狭いですね。ある程度の広さは必要と思っています。トイレに気を配っている病院は基本的に他のいろいろな要素にも気を配っている病院と思って間違いありません。

 

職員の態度に気を付けて、説明は迅速に

 医療従事者の態度は大切ですね。エレベーターで職員の私語が多い病院は落第です。また職員が横に並んで廊下を我が物顔で 闊歩(かっぽ) している病院も落第です。職員は廊下の端を一列で歩く病院は素晴らしい教育がされています。また職員の白衣や仕事着が汚れている病院も落第ですよ。

 いろいろな検査をして、例えば採血、単純X線写真、超音波検査、CT検査、MRI検査、PET検査、心電図などなどの結果が () ぐにわかるといいですね。最近はダブルチェックをすることが多く、その道の専門家がチェックしてから、そのコメントを参考にして主治医がお話しします。多くの病院では後日来院してもらって説明していますが、できれば当日に読影結果がわかると良いですね。チェックする医者の数が十分であれば、それも可能です。実際に即日にダブルチェックの結果を含めて説明する病院もありますよ。もしも、後日になるのであれば、これも大した異常がなければテレビ電話で「異常ありませんでしたよ」で十分ですね。

 僕の友人のアメリカのオフィスは、ホテルのようでした。患者が少なく、スペースが広いので、患者さん同士が顔を合わせることも希でした。間接照明で、1人に30分から1時間の診察、診察の前には担当の医療従事者でコンシェルジュのような人が、いろいろとお話を聴いてくれます。病院に来ると憂うつになる日本とは別世界ですね。国民皆保険が崩壊し、混合診療が普及すると予想され、そして患者負担が5割になれば、少々お金を払っても付加価値を期待する人々のクリニックが増えるかもしれませんね。

 人それぞれが、少しでも幸せになれますように。

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知りたい!_20131107イグ・ノベーベル賞 新見正則さん(1)写真01

新見正則(にいみ まさのり)

 帝京大医学部准教授

 1959年、京都生まれ。85年、慶応義塾大医学部卒業。93年から英国オックスフォード大に留学し、98年から帝京大医学部外科。専門は血管外科、移植免疫学、東洋医学、スポーツ医学など幅広い。2013年9月に、マウスにオペラ「椿姫」を聴かせると移植した心臓が長持ちする研究でイグ・ノーベル賞受賞。主な著書に「死ぬならボケずにガンがいい」 (新潮社)、「患者必読 医者の僕がやっとわかったこと」 (朝日新聞出版社)、「誰でもぴんぴん生きられる―健康のカギを握る『レジリエンス』とは何か?」 (サンマーク出版)、「西洋医がすすめる漢方」 (新潮選書)など。トライアスロンに挑むスポーツマンでもある。

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