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ホントはどうなの?健康食品・サプリメント

国立健康・栄養研究所

健康・ダイエット

[アミグダリン]がんに対する有効性の根拠なし

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 サプリメントの広告に、「天然素材だから安全・安心」といった文言をよく見かけます。また、現在は「効果がない」と明確に否定された情報でも、「効果があると言われていた」として、いまだに昔の情報が製品の販売に参照されていることがあります。さらに、薬とサプリメントでは、同じ成分を含んでいても、製品の品質や利用環境の点から、安全性と有効性は異なります。今回ご紹介するアミグダリンは、そのような事項を理解する上で参考になります。

アミグダリンとは?

 アミグダリンは、アンズ、ウメ、モモ、スモモ、ビワなどの未熟果実の種子にあるじんに多く含まれている成分です(図)。その構造中にシアン(CN)を持ち、青酸配糖体やシアン配糖体と言われている成分で、私たちが口から摂取すると、胃酸によって分解されて青酸を発生するため、摂取量によっては中毒を起こします。天然由来のものですが、安全・安心と考えられる成分ではありません。
 アミグダリンは以前にビタミンB17と呼ばれていた時期がありましたが、ビタミンのような欠乏症の報告はなく、栄養素でもなく、ビタミンという名称を付けて呼ぶことは適切ではありません。「以前にビタミンと言われていた」として、有効性を暗示している成分が他にもあります。ビタミンではないものがビタミンのようなイメージで扱われると、ビタミンという栄養素の本質を誤解させたり混乱させたりすることになってしまうため、ビタミンとそれ以外は明確に区別することが必要です。 

昔は抗がん作用が期待された成分

 米国の生化学者がビターアーモンドの仁から抽出したレートリル(laetrile、アミグダリンと同じもの) が、がんの増殖を抑制するとの説を唱えたことから、レートリルは米国やメキシコを中心に、がんの治療に用いられた時期がありました。そして、その抗がん作用については長期間にわたり議論が続けられてきました。しかし、米国国立がん研究所が臨床研究でレートリルの効果を検証し、「レートリルにはがんの治療、改善および安定化、関連症状の改善や延命に対していずれも効果はなく、むしろ青酸中毒をおこす危険性がある」という結論を1980年代の初めに出しました。その後、レートリルまたはアミグダリンに関して、人の経口摂取によるがんへの効果を検討した報告は見当たりません。現在、FDA (米国食品医薬品局) は米国内でのレートリルの販売を禁じています。しかし、インターネットなどでは、既に有効性が明確に否定されているにもかかわらず、「アミグダリンはビタミンの一つ」「アミグダリンの欠乏ががんや生活習慣病の原因となる」「アミグダリンはがん細胞だけを攻撃する」として、アミグダリンの効果を暗示している製品を見かけます。

生薬に含まれる成分

 アミグダリンは、生薬として長く利用されてきたキョウニン(杏仁、アンズの種子で食品として利用するときはアンニンと呼んでいます)やトウニン(桃仁、モモの種子)に、3~5%の濃度で含まれています。キョウニンにはせきを鎮める作用やたんを除く作用など、また、トウニンには血の巡りを良くする作用などがあります。これらの生薬には、アミグダリンの他にも、40~50%の脂肪油、たんぱく質などが含まれています。キョウニンやトウニンは天然物由来なので、産地、収穫時期、調製方法によって、含まれている成分が変動します。そこで、生薬として利用されるものは、原材料に品質の基準があります。また、薬は医療関係者の管理下で適正に利用されています。このような製品の品質と利用環境は、消費者の自己判断で選択・利用されているサプリメントとの大きな違いと言ってよいでしょう。

アミグダリンの安全性

  アミグダリンを多量に摂取すると、悪心、嘔吐おうと、頭痛、目まい、意識混濁、昏睡こんすいなどを起こすことがあります。果実が成熟するとアミグダリンはエムルシンという酵素によって分解されるので、果肉中からは消失していきます。また、梅干しや梅酒、梅漬けなどの加工品は、アミグダリンの分解を促進して影響がないレベルまで低下させます。杏仁豆腐にアンズの種を粉末にしたものが利用されていますが、アミグダリンは調理の段階でも分解され、安全性において問題にはならない量にまで低下します。従って加工したものは、摂取しても影響のないレベルにまでアミグダリンが低下しているので、一般的には安全性に問題はありません。

 一方、生や加工していないアプリコットカーネル(杏の仁)やビターアーモンドカーネル(ビターアーモンドの仁)およびその粉末については、安全とは言えず、「子どもについては製品を食べるべきではない」「継続して食べようとしている成人については、1日に1~2個(0.37g)を超えないようにすべき」という情報が、国外の機関から出されています。

 アミグダリンが関係した健康被害として、がん患者が3gを摂取して重篤な健康被害を受けた事例がいくつか報告されています。治療を受けているがん患者が、インターネットなどの不確かな情報を参照して、自己判断でアミグダリンのサプリメントを利用することはやめるべきです。がんの方は、良いと言われているものを試してみたくなるものですが、有効性に根拠のない製品を利用することは、経済的な被害を受けるだけでなく、健康被害も受けることになります。病気で治療中の人が、ちまたの情報を参照して自己判断でサプリメントを利用することは、適切な医療を受けることの障害になります。そのような問題に対応するため、巷の情報を見分ける上で参考になる情報提供サイトとして、「統合医療」情報発信サイトがあります。そのサイトでは、情報を見極める考え方がわかりやすく示されていますので、是非、一度見てください。

 アミグダリンについてさらに詳しく知りたい方は、国立健康・栄養研究所 「健康食品」の安全性・有効性情報サイトを参照してみてください。

(国立健康・栄養研究所 梅垣 敬三)

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