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宋美玄のママライフ実況中継

医療・健康・介護のコラム

骨盤底筋はゴムひもじゃない 日々の生活で鍛えるより守ろう

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動きが激しくなってきました

動きが激しくなってきました

 急に冷え込んできて、おでんとお布団が恋しい季節になりましたね。生後11か月の息子はまだ立ちませんが、活発に動き回るようになり、お姉ちゃんに遊んでもらっているときが顔を一番クシャクシャにして笑っています。子供たちと私で、テントに見立てた布団の中でひしめき合って遊んでいるとき、2人が同時にニコーッと笑うのを見て、とても幸せな気持ちになりました。無邪気な子供の笑顔が見られる時期は貴重ですね。

「ガスケアプローチ」詳しく学んできました

 先週、呼吸と姿勢と骨盤底筋のメソッド(方式)「ガスケアプローチ」の理論を提唱したガスケ先生がフランスから来日され、専門家向けの講習会が開かれました。私はペリネ(骨盤底筋)を詳しく学ぶコースに参加しました。

よくある骨盤底筋群の説明図(『女医が教えるこれでいいのだ! 妊娠・出産』より)

よくある骨盤底筋群の説明図(『女医が教えるこれでいいのだ! 妊娠・出産』より)

 骨盤底筋は「骨盤底筋群」で、複雑に何層にも走行した筋肉の集合体です。骨盤底筋を構成する筋肉の両端は尾骨を含む骨盤に付いていて、骨盤の関節を動かします。骨盤の上部には腹横筋という一番深いところにある腹筋がついており、横隔膜と連動します(これらは日本でもインナーユニットとして、知られているようです)。

 講習では、姿勢によって生理的な腹式呼吸ができたり胸式呼吸になったりすること、その時のペリネの動き方の違いなどを体で実感して学びながら、骨盤底筋の解剖学、生理学について詳しく勉強しました。

骨盤底筋、意識が高まってきているものの

 日本でも最近になって骨盤底筋や、尿もれなどの骨盤底の機能に由来する不調について話題になり、意識が高まってきています。「 ちつ トレ」という言葉も人口に 膾炙かいしゃ してきました。

 ほとんどの場合は「骨盤底筋」というと、表面に近い場所にあって尿道、膣、直腸をくるんで恥骨の方に引き寄せる働きをする「恥骨直腸筋」を指しています。キーゲル体操をはじめトレーニングと呼ばれるものは、この恥骨直腸筋を収縮させるものです。

 しかし、骨盤底筋群のうち、恥骨直腸筋はほんの一部です。この筋肉が収縮している間は、もっと奥の方の骨盤底筋は緩む仕組みになっています。そして、恥骨直腸筋は速筋という種類で、鍛えるとどんどん太く硬くなります。この筋肉が太く硬くなると、排便やお産に必要な反射が起こりにくくなります。骨盤底筋全体と、連動する腹横筋や横隔膜、姿勢、呼吸の観点からは、いわゆる「膣トレ」で特定の筋肉だけを鍛えることのメリットは少なく、デメリットもあるのです。

姿勢と呼吸を正すのが近道

 骨盤底筋群を生理的に機能させるには、特殊な動きをするよりは、姿勢と呼吸を正すのが近道です。また、1日に5分か10分鍛えるよりは、常日頃から腹圧をかけてダメージを与えないように排便をはじめとした生活習慣を見直す方が重要です。

 ガスケアプローチに出会うまで、普通に産婦人科医をしてきましたが、骨盤底筋についてほんの少ししか知らなかったなあと勉強するたびに思います。健康を多くの人に届けるため、ますます努力していきたいと思います。こちらでもまた発信していきますのでよろしくお願いいたします。

 こちらも併せて読んでみてください。

 「 昔の人はできていた……のか? 『月経血コントロール』を検証する

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宋 美玄(そん・みひょん)

産婦人科医、医学博士。

1976年、神戸市生まれ。川崎医科大学講師、ロンドン大学病院留学を経て、2010年から国内で産婦人科医として勤務。主な著書に「女医が教える本当に気持ちのいいセックス」(ブックマン社)など。詳しくはこちら

このブログが本になりました。「内診台から覗いた高齢出産の真実」(中央公論新社、税別740円)。

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3件 のコメント

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トレーニングの専門性と普遍性 習慣作り

寺田次郎関西医大放射線科不名誉享受

骨盤底筋群に限らず、様々なトレーニングもトレンドと「神話」の影響が強いものです。 引き合いに出されるデータや論文も個体差などの前提条件を勘案が不...

骨盤底筋群に限らず、様々なトレーニングもトレンドと「神話」の影響が強いものです。

引き合いに出されるデータや論文も個体差などの前提条件を勘案が不十分な場合もあります。

選手や保護者も流行に弱いし、指導者もそういう部分に流されないのは運営上に難しい部分もあります。

「あの○○選手もやっている」っていうのは、数で言えば、多くて数人の話に過ぎず、実際に相関は不明なのですが、多くの人は科学よりもヒーロー性や物語に説得力を感じるものなので、どうしても流されてしまいがちです。
(統計のバイアスの仕組みと現場の兼ね合い)

実際、多くのプロやトップアマ選手は子供や一般人と身体の作りが違います。
一部の例外を除き、遺伝子=体がタフで、積み上げた基礎のトレーニングの量が違います。
その上に、専門的なものや特殊なものを積み上げるのと、最初からそれをやるのは違います。
トレーニングの偏りで、成長の壁に当たっている育成年代の選手もあちこちで見受けられます。
(宋先生のブログ読者は母親の方が多いと思いますが重要な話です)


身体ではなく、家づくりで考えればわかりよいですが、土台作りがなされている場合とそうでない場合で、目指す完成系、全体像やそれまでの行程が変わるのと同じです。

出産機能についてもある程度そうではないかと思います。
人間としての基礎能力の上に、女性機能が成立するわけです。

腹圧や姿勢、呼吸も大事ですし、そのもっと根底にある、栄養と運動と睡眠のバランスはもっと大事です。

とはいえ、今の生活を全否定しても続く人は少ないですから、まずは楽しんで続けられるレベルで、習慣作りから始められるといいのではないかと思います。

元日本代表監督も「子供にはサッカーのやり方よりも楽しさを教えろ」と言ったそうです。
子供を初心者と読み替えれば、応用がききます。

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当たり前ですね

ともこ

筋骨は全て関連して繋がっているのだから入り口だけ鍛え上げてもね、といえ膣トレでそういう間違った記事が散見します。 私はバレエをしてたからか、旦那...

筋骨は全て関連して繋がっているのだから入り口だけ鍛え上げてもね、といえ膣トレでそういう間違った記事が散見します。
私はバレエをしてたからか、旦那にも締まりを褒められてるし、帝王切開にも拘らず産後の回復は早く生理も2ヶ月で来てしまいました。

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地元でひどい講習会やってますけど行かない

市民は冷静

昔の女性はできていたという本は全部は否定していないです。でもそういう本をネタに講演会とか講習会とかやっているいい加減なものは全否定しますね。子宮...

昔の女性はできていたという本は全部は否定していないです。でもそういう本をネタに講演会とか講習会とかやっているいい加減なものは全否定しますね。子宮力とかジェムリンガ、子供は親を選んで来ているとかあげくには布ナプキンで体の中が冷えないとか、もうその内容はひどいなあって思っています。そういう講習会へは行かないで検索ワードをこう工夫するといいよ的な事を教えてくれるカフェ形式の講習会へ行ってます。例で言うとリコピンを知りたいとき「リコピン 論文」とか「リコピン なぜ赤い」というand検索やor検索使うといいですよという講習会です。子供と一緒に比較的安心してPCで調べものができるようになりました。

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