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医療・健康・介護のコラム

腰痛は付き合うものではない! 痛みの原因を特定しよう(3)

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 今回のカフェも、前回の続編、腰痛についてです。今回は、痛みの原因や分類なども交えて進めていきたいと思います。

ギックリ腰は地震のように突然来る

 少し前のことですが、私の知人がご家族でスポーツ観戦に出かけたところ、ギックリ腰(急性腰痛症)を引き起こし、歩けなくなってしまったようです。観客も大変多く、とても広い施設の中、自力で十分に歩けず、とても困ったとお話ししていました。時間や場所を選んで痛みを発症するわけではないですから、出先で人の集まる場所でこうした状況に陥ると、大変なことになってしまいますね。何とかして自力で移動を考えたそうですが、家族を連れ、荷物もあり……。この方は、最終的に周囲の人の助けを借りる以外方法はなかったと話していました。

 私は、トレーニングなど競技活動中に急性腰痛症をしばしば引き起こしましたが、本当に、どうやって歩くのか、どうやって帰ろうかと、とても焦ったことが何度もありました。車でトレーニングに行っていましたので、運転して帰るのにも痛くて脂汗をかいて帰宅したことが思い出されます。

 では、その激痛を起こす原因はというと、当時はあまりはっきり分かっていませんでした。高校2年生で初めて磁気共鳴画像(MRI)の検査をしたとき、「椎間板が少し飛び出している(椎間板ヘルニア)」程度でした。そしてそれ以降の画像診断でも病態はあまり大きく変わらずでした。病態は軽いはずなのに、2005年初めからは歩けないような痛みに何度も襲われました。痛まないように意識しながらスポーツ活動の継続を試みましたが、「痛まないようにスポーツをする」のは、大変難しいことでした。

腰痛は付き合うものではない!痛みの原因を特定しよう(3)

写真1
(写真1~3)前屈の動作は柔軟性が必要。全身のバランスを取るために様々なエクササイズを積極的に行い、身体の感覚を保持している。

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写真2

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写真3

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写真4
競技現役時代はこのように腰を反らす動作で日常的に痛みを覚えた。とくに、腰を反って投げる円盤投げやハンマー投げは痛みを起こす大きな要因になっていた。

どんな動きをすると痛むのか? どんな画像を撮る必要があるのか?

 ヘルニアの症状は、主には「前屈」をすると痛みが強く出るといわれています。たとえば、物を拾う動作や、 仰向あおむ けで膝を伸ばしたまま脚を上げていく動作で腰に痛みを感じます。腰を痛めてしまった時や、強い痛みが続いている時にはもちろんできませんでしたが、私は前屈がとても得意で、手の ひら を地面につけることができました。 前回のカフェでも示した通り 、柔軟性が高かったのです。(写真1~3)

 それでは、なぜ歩けないほどの痛みが発生し続けていたのかということになりますが、実は、背中や腰を反る動きが一番痛みを感じました(写真4)。そうすると、痛みの原因はヘルニアとは限らないということになります。別の原因箇所を探すためには、正確な画像診断が必要になるのではないかと思います。

 腰痛といえばヘルニア、ヘルニアといえば椎間板を見る、椎間板はMRIで撮影。私の腰痛の大きな原因は椎間関節の変形でしたが、関節を診るためには、詳細に骨や関節の状態を見ることのできるコンピューター断層撮影法(CT)の画像を撮る必要がありました。

 さらに、MRIにも3種類の撮影方法があります(※参考文献)。水分と炎症が黒く映る「T1」、水分、炎症、脂肪が白く映る「T2」、そして、水分と炎症が白く、脂肪が黒く映る「STIR」です。MRIは、病態によってこの3種類の画像を使い分けてみることで、腰痛の原因となる場所の特定に役立つとされています。私自身も、MRIが3種類あることを2011年、腰痛の原因が特定できた時に脊椎専門医でスポーツドクターの主治医に伺いました。その時までは知りませんでしたが、とくにSTRIによる画像診断は、軽度の骨折や初期の疲労骨折などを炎症から診断するのに効果的とされています。

 こうした知識を得ることで、どんな痛みの時にどんな画像を撮ってもらうべきなのか、いろいろな面で納得が得られると思いました。

痛みの原因、知っていますか?

 私はスポーツによる重度の腰痛症を患い、とても苦労しました。2012年6月に大きな手術をし、引退しました。しかし、この原因が特定したのは2011年5月。それまでは、軽度の椎間板ヘルニアという診断で、いわゆる「ギックリ腰」を多い時にはひと月に2度ほど発症しました。この内容は、次の連載で少し詳しく書いてみたいと思います。ちなみに、「ギックリ腰」はかなりざっくりした名称で、「単に急性発症を示すもの」であり、「急性腰痛症」と言うのだと、主治医からレクチャーを受けました。

 腰痛について、あまり分類をご存じない方のために、ここで少しその種類を紹介してみたいと思います。実は、腰痛には3つのタイプがあると言われています(※参考文献)。(1)腰椎に異常があるタイプ(椎間板ヘルニアや脊柱管 狭窄症きょうさくしょう )、(2)腰の筋肉に問題があるタイプ( 筋筋膜性きんきんまくせい 腰痛)、(3)腰以外に病気があるタイプ(がんの脊椎転移や感染症など)――と大きく分かれます。

 いきなり痛みが発生しても、どれに当たるものなのか、自己判断では難しいと考えられます。私の個人的な体験からも、脊椎専門医に詳しく診ていただくことをお勧めしたいです。

 痛みや違和感には強弱があり、少し休んでいると痛みが引くので、専門医を受診せず、身体のケア(マッサージや 鍼灸しんきゅう など)のみに とど めている方も多くいるかと思います。痛みを緩和させることはとても重要なことですが、一時的なものになってしまうことは避けたいところです。原因が特定できず、痛みをひたすら我慢する時間を過ごすのではなく、できれば具体的な原因特定をし、身体のケアと並行するのが一番安心なのではないでしょうか。

 痛みが発生するときの動作について、思い起こして箇条書きにしておくのも良いかと思います。前屈をして痛いのか、上体を反ると痛いのか、あるいは、ある特定の動作をすると痛いのか。こうした情報をまとめてお持ちになり、脊椎専門医を訪ね、体感している自覚症状をできるだけお伝えすることが原因特定につながるのではないかと思います。

 次回はまた腰痛症の続きを書いていきますね。それでは、また次のカフェで合お会いしましょう!

 (引用・参考文献)

 西良浩一, 室伏由佳 (2014)『腰痛完治の最短プロセス : セルフチェックでわかる7つの原因と治し方』KADOKAWA.

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murofushi_yuka_400

室伏由佳(むろふし・ゆか)

 1977年、静岡県生まれ・愛知県出身。株式会社attainment代表取締役。2004年アテネオリンピック女子ハンマー投げ日本代表。円盤投げ、ハンマー投げ2種目の日本記録保持者(2016年4月現在)。12年9月引退。

 アスリート時代には慢性的な腰痛症などスポーツ障害や婦人科疾患などの疾病と向き合う。06年中京大学体育学研究科博士課程後期満期退学(体育学修士)。スポーツ心理学の分野でスポーツ現場における実践的な介入をテーマに研究。現在、スポーツとアンチ・ドーピング教育についてテーマを広げ、研究活動を継続。現在、上武大学客員教授、朝日大学客員准教授や、聖マリアンナ医科大学スポーツ医学講座、徳島大学医学部、中央大学法学部など、複数の大学において非常勤講師を務める。スポーツと医学のつながり、モチベーション、健康等をテーマに講義や講演活動を行っている。日本陸上競技連盟普及育成部委員、日本アンチ・ドーピング機構アスリート委員、国際陸上競技連盟指導者資格レベルIコーチ資格、JPICA日本ピラティス指導者協会公認指導師。著書に『腰痛完治の最短プロセス~セルフチェックでわかる7つの原因と治し方~』(角川書店/西良浩一・室伏 由佳)。

公式ウェブサイトはこちら

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1件 のコメント

腰痛や疲労骨折の原因と鑑別 MRIの進歩

寺田次郎関西医大放射線科不名誉享受

日本で一番患者数が多いと言われる腰痛。 特に、難治性のものは色々な理由があります。 椎間板ヘルニアや腰椎分離症、周囲の筋の損傷や脊椎の感染症とい...

日本で一番患者数が多いと言われる腰痛。
特に、難治性のものは色々な理由があります。
椎間板ヘルニアや腰椎分離症、周囲の筋の損傷や脊椎の感染症といった整形外科的なものだけでなく、背中の痛みという感覚で言えば、膵炎や尿路結石などの内科的な疾患もありますし、基礎疾患の関与のある病的骨折もありうるので、内科医の手も入れるほうが無難です。
脊椎専門医に専門性を発揮してもらうために他科医はいます。

ところで、原因を特定するにあたって、無視できないのが問診による既往歴や生活習慣の聞き取りです。
痛みの局所だけ診て判別できる場合もありますが、基礎疾患の存在や外傷の履歴、仕事や趣味なんかも関わってきます。

趣味や仕事の姿勢やフォームにより特定部位へのメカニカルストレスが蓄積することがあります。
ジョーンズ骨折やオスグッドなんかが有名ですね。
各部位の耐久力の問題もあり、単発の動作で発症する場合も、繰り返す動作で発症する場合も考えられます。
そういう場合、痛む部位だけではなく、全身のバランスを診てやる必要があります。

あと、バカにできないのが、靴や服の影響です。
各関節は繋がっているので、一つの関節が変わると、他の関節が影響を受けることが結構あります。
そういうことで、痛みの発生前後で変えた習慣の存在を質問します。

人間は自分の決めたことや好きなことを、縁起がいいと思っているジンクスを変えたがらない生き物ですが、もしも、心身に不調を感じたときがあれば、色々と見なおしてやる必要があります。

ちなみに、MRIはT1、T2、STIRのほかにもDWIやMRSなど様々な撮像ソフトが編み出され、精度も速度も向上しています。
それでも、まだ、完ぺきではありませんが、是非とも皆様に知っていただければと思います。

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