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難病のピアサポーター、養成進む…同じ境遇語り前向きに

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「誰かの役に」自尊心取り戻す

 難病の患者が、同じ境遇の患者と語り合い、気持ちを共有する――。難病のピアサポート(仲間による支援)で患者が前向きになれるとして、ピアサポーターを独自に養成する取り組みが各地に広がっている。厚生労働省も養成プログラムを検討中だ。

難病のピアサポーター、養成進む…同じ境遇語り前向きに

難病ピアサポーター養成研修会で意見を交わす参加者。手前はコーディネーターの川尻さん(前橋市の群馬大学病院で)

 「カレンダーに予定が書き込めるようになったのがうれしい」「『充実』という言葉をまた使えるとは思っていなかった」

 今月11日、群馬県難病相談支援センターが前橋市で開いた難病ピアサポーター養成研修会。昨年6月に始まって18回目のこの日は、これまでの自分の変化や今後の目標などを発表した。参加した難病患者7人は、自らの胸の内を率直に語り、互いの話に耳を傾けた。

 コーディネーターを務める同センター相談支援員で保健師の川尻洋美さんは、「全員がこれまでの歩みを語り、同時に聞き手にもなった。自分の弱さをさらけ出すこともあったが、それが人間的な魅力にもなっている。今回は、一人一人がどのように変化したのかを確認し合う場にしたかった」と話す。

 参加者の 弥勒寺みろくじ 雪さん(49)は20歳の時に皮膚筋炎と分かった。 膠原病こうげんびょう の一種で筋肉や関節の痛み、強い疲労感などが特徴。一時は看護師を目指したが、体調に不安があり、准看護師になる道を選んだ。

 症状に波があり、昨日できたことが今日できないこともある。自分の病気を伝えても、できないと「我慢が足りない」「甘えている」などと言われ、傷ついた。病気のつらさに加え、「言っても分かってもらえない苦しさ」に悩んだ。

 こうした思いをぶつけ、受け止めてくれる仲間と研修会で出会った。川尻さんの紹介で、4月に地元の看護大学で初めて講演した。難病で看護師になる夢を絶たれた話をすると、学生から励ましや「患者の心に寄り添える看護師になる」などの決意を記した感想が多数届き、勇気づけられた。

 弥勒寺さんは11日の研修会で「自分の生き方が誰かの役に立つのなら、どこへでも行って話をしたい」と語った。川尻さんは「孤立している難病患者も、誰かに必要とされる存在になりたいと思っている。自尊心を取り戻す場が必要」と研修会の意義を強調する。

 同センターの難病ピアサポーター養成研修会は、プログラムの中に、参加者によるピアサポートを取り込んでいる。他のセンターの多くが3回程度の座学で終わる中、群馬は各回2時間で来年3月までに計20回実施。修了者には、難病患者が集まるサロンなどに参加してもらう予定という。厚労省も「群馬モデル」として注目する。

 難病患者支援に関する厚労省研究班のメンバーで、難病のピアサポートに詳しい富山大准教授の伊藤智樹さんは「患者同士が語り合うことで、気付かなかった自分が見えてくる。そこから新たな希望や目標が生まれ、患者それぞれの回復の『物語』が作られていく。そのような場の一つとして、難病のピアサポートをとらえることを提案していきたい」と話している。

  [物語]  病気になったいきさつ、その時の気持ち、その後の出来事、気持ちの変化を通じて、自分自身をとらえ直すこと。厚労省研究班が昨年12月に作成した難病のピアサポートに関するハンドブック(群馬県難病相談支援センターのサイトから入手可能)に詳しい。(赤津良太)

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