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医療部長・山口博弥の「健康になりたきゃ武道を習え!」

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要注意! 酒は脳を萎縮させます

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 私は酒を飲むのが嫌いではありません。というより、まあ、好きな方です。

 でも、ヨミドクターのI編集長のように、「酒を飲まない日は1日もありませんっ!」と胸を張れるほどの酒豪ではなく、週に2、3日は休肝日を設けています。

 お酒を飲んでも顔が赤くならないので、体質的には強い方なのでしょう。

 「年をとって、めっきり酒が弱くなったよ」なんて言う人がいますが、私の場合、年齢とともにますます強くなった気がします。

 これは、護身武道「心体育道しんたいいくどう」の健康術「裏のさばき」を10年以上続けた結果、内臓が強くなったからではないか。

 いや、それよりも、昨年2月から今年3月まで暮らした岩手県で、おいしい日本酒を飲む機会が増え、4月に東京本社に戻ってきてからも酒席が多いせいかもしれません。

 本音を言えば、後者が原因でしょうね。

 で、今月15日の日曜日は、なんと9時間もお酒を飲み続けました!

 この日、心体育道広島直轄道場の奉納演武が広島市内の神社であり、私が所属する誠流武会の道場生も参加、その打ち上げがあったのです。

 ちなみに、広島直轄道場は、心体育道の創始者である廣原誠先生が指導する道場。いわば心体育道の総本山、「聖地」のような場所です。

 演武は午後1時半から2時15分まで。実際は予定時間をオーバーしましたが、終了後、午後3時ごろから近所の鉄板焼きの店、続いて廣原先生のご自宅で大宴会が開かれました。最後は、誠流武会のメンバーだけで場所を替えて飲み、終わったのは午前0時ごろ。

 廣原先生をはじめ、DVDで何度も拝見していた黒帯の先生方といろんな話に花が咲き、至福のひととき。もう楽しくて、ビールや日本酒が進むわ進むわ、休みなく飲み続けました。

 さすがに後半はぐでんぐでんに酔っぱらい、ろれつは回らなくなり、記憶はほとんどまだら状態。でも、途中で居眠りすることもなく、新聞記者魂?を忘れずに要所要所でスマホのカメラのシャッターを切りました(あまり覚えてないのですが、スマホのアルバムにたくさんの写真が残っています)。広島の道場生のみなさんは、「なんだ? あの酔っぱらってふらふらしているおっさんは」と思われたかもしれません。失礼いたしました。

 さて、「酒は百薬の長」と言われます。

 適度にお酒を飲む機会がある人の方が、人とのコミュニケーション能力が高く、積極的で、ストレスも解消でき、その結果、健康長寿でいられる、ということはあるでしょう。でも、お酒そのものが健康にいい、という研究結果はあまり聞いたことがありません(赤ワインの抗酸化物質が健康にいい、という情報はありますが)。

 むしろ、健康への害についての情報の方が多いようです。

 まず、大量の飲酒は肝臓など消化器系にダメージを与えます。アルコール性の肝炎、そして肝硬変から肝がんへと進んだりもします。

 そして、食道がんのリスク。特に、顔がすぐに赤くなる人は要注意です。

 アルコールは、体の中の酵素によってアセトアルデヒドという物質に分解されます。この物質が、気分が悪くなる“犯人”です。このアセトアルデヒドは、別の酵素でさらに分解されるのですが、顔が赤くなるのは後者の酵素による分解能力が弱いためで、日本人の4割がこのタイプだとされます。

 数年前の東京大学の研究で、こんな結果が明らかになりました。

 お酒に弱く、両方の酵素の働きが弱い人が、1日缶ビール1本以上の飲酒と喫煙をすると、お酒に強くて飲酒・喫煙をしない人に比べ、食道がんのリスクが190倍も高くなっていた、というのです。喫煙はせずに飲酒だけでも、リスクは56倍です。つまり、お酒で顔が赤くなるタイプの人は、食道がんになりたくなかったらお酒を控えた方がいい、ということが言えます。

 酒で顔が赤くならず、喫煙していない私はどうでしょうか。仮に私に両方の分解酵素があるとしても、同じタイプで飲酒・喫煙をしない人に比べ、飲酒による食道がんの発症リスクは1・9倍。飲めない人より低いとは言え、リスクは約2倍に高まるんですね。

 さらに、もう一つのリスクは、脳への悪影響。

 私が盛岡支局にいた今年2月、岩手県医師会と共催で「いわて健康塾」を盛岡市内で開催し、世界最先端の脳画像研究を行っている東北大学加齢医学研究所の瀧靖之教授に講演してもらいました。瀧教授は、16万人の脳の磁気共鳴画像(MRI)を見てきた脳医学の研究者。講演では、同研究所が蓄積する脳の膨大なMRIデータと生活習慣などの解析から、脳をいつまでも健康に保つために必要な「運動」「知的好奇心」「コミュニケーション」などについて、日常生活の中で心がけた方がいいポイントを分かりやすく解説してもらいました。瀧教授の著書には『生涯健康脳』などがあります。

 瀧教授によると、認知症を招く脳の萎縮は加齢とともに進行するが、悪化させる要因として、飲酒や中年期の肥満などがある。

 飲酒は脳を萎縮させ、認知症の発症リスクを高める。そして嫌なことに、「1日にこの量までなら飲んでも大丈夫」という基準がない。飲めば飲むだけ、リスクが高まる、というのです。特に危険なのが、あまり飲めない人の無理な飲酒。これは食道がんと同じですね。

 いかがですか?

 ここまで読んで下さった酒飲みの人は、さぞや不安になったことでしょう。

 私も、脳が萎縮するのは嫌なので、休肝日を設ける今の生活は続けます。でも、お酒をやめる気はありません。

 楽しい酒ならストレス解消になるし、いい気分でいることで免疫力も高まる気がします。やや死語になりつつある「飲みニケーション」は、お互いの理解を深めるうえでも大切。仕事のうえでも、職場の先輩や同僚と飲みながら「ああでもない、こうでもない」と議論する中から、おもしろい連載企画が生まれたりしたものです。

 でも、飲み過ぎはダメです。健康への悪影響という理由だけでなく、飲み過ぎの弊害は、今回の広島の経験で痛感しました。

 めったにお会いできない廣原先生や黒帯の先生方とせっかくお話しする貴重な機会だったのに、ところどころ記憶がないのですから、もったいないったらありゃしない。今になって「ああ、あんなこともこんなことも聞きたかった」と悔やんでも、後の祭りです。

 楽しくて飲んでいたはずが、飲み過ぎたせいで、楽しかったことを忘れる。そして、もっと楽しめたはずの機会をも逸してしまう。これは人生の損失です。こういうのを、「酒に飲まれる」って言うんでしょうね。

 何事も、ほどほどがよろしいようで。

誠流武会のことをマイクで紹介する心体育道創始者の廣原誠先生(左)。その右が誠流武会代表の川邉頼昭先生。その右(前列)に座っているのが私。

誠流武会のことをマイクで紹介する心体育道創始者の廣原誠先生(左)。その右が誠流武会代表の川邉頼昭先生。その右(前列)に座っているのが私。
誠流武会の演武で、2人を相手にした「掛かり稽古」を披露する私(飲み会の席で、テレビ画面で再生した動画をスマホで動画撮影、その一部を静止画として切り取ったので、画質がボケボケです)。

誠流武会の演武で、2人を相手にした「掛かり稽古」を披露する私(飲み会の席で、テレビ画面で再生した動画をスマホで動画撮影、その一部を静止画として切り取ったので、画質がボケボケです)。
奉納演武後、廣原先生のご自宅で開かれた打ち上げ。このころは私もまだ記憶がありました。この1時間後には、もう「崩壊」しています。

奉納演武後、廣原先生のご自宅で開かれた打ち上げ。このころは私もまだ記憶がありました。この1時間後には、もう「崩壊」しています。
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山口 博弥(やまぐち・ひろや) 読売新聞東京本社医療部長

 1962年福岡市出身。1987年読売新聞社入社。岐阜支局、地方部内信課、社会部、富山支局、医療部、同部次長、盛岡支局長を経て、2016年4月から現職。医療部では胃がん、小児医療、精神医療、痛み治療、高齢者の健康法などを取材。趣味は武道と瞑想めいそう。飲み歩くことが増え、健康診断を受けるのが少し怖い今日このごろです。

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