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医療・健康・介護のコラム

腰痛は付き合うものではない! 痛みの原因を特定しよう(2)

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 今回は、前回の続き、腰痛シリーズです。「どこをどうすると痛むのか?」「痛みを感じる動作は?」「痛み方の特徴は?」といった内容を視点にしてみます。一体、自分の腰痛の症状はどんな状況なのか、整理するところからスタートしてみたいと思います。

 私の取り組んでいた円盤投げは、右手で円盤を持って投げる場合、左脚を軸に回転します。腰痛は左側に強く出ていたので、原因はどうも左側にあるのではないかと感じていました。痛み以外には、軸足となる左脚、お尻から (もも) の外側( 大腿部(だいたいぶ) )にかけて、軽い (しび) れや違和感がありました。筋肉が張ったような感覚があり、左側の腿や脚をトントン (たた) いたり押したり、自分ですこし () みほぐしたりしていました。

 脊椎の神経、たとえばヘルニアや変形した関節などに当たると、足の方まで響くことがあります。振り返ってみて、私の自覚した症状は、おそらく神経に何かが衝突しているために感じた痛みや違和感、痺れだったのではないかと思います。

 高校2年生の夏ごろ、ようやく病院に行くことになりました。強い (ひね) り動作をする円盤投げというスポーツ特性から、椎間板ヘルニアの可能性もあるのではないかということになり、病院で画像などの検査をしました。椎間板の状態を確認するためは、磁気共鳴画像(MRI)を撮ります。「腰痛といえば、まずはヘルニアだ!そしてMRIで見るべきだ!」ということは一般的な流れかもしれません。画像診断についてはもう少し詳しく、また次回のカフェで書きたいと思います。

不安を感じる言葉、「ちょっと様子を見ましょうか」…痛みはいつ消えるの?

 この時の画像診断の結果は、「腰椎椎間板ヘルニア」(主に腰椎の4番と5番の間)でした。腰や身体を思い切って捻りながら投げることで、腰椎の下の方に繰り返し負荷がかかっていたことが主な原因でした。スポーツ活動を中止するほどの症状ではないということでしたが、痛みが強い時には過度なスポーツや腰に負担のかかる姿勢は回避する、つまり「様子を見る」ということで対処することになりました。

 当然、痛みが強い時には、誰もが「痛みが取れるまで様子を見る」ことは必要だと思います。そうはいっても、捻り運動を伴うスポーツ自体続けていれば、症状はあまり改善されないのが現実です。

 更に、腰椎に負荷が集中するような身体の動かし方も改善するべきでしたが、当時はそのような発想は持っていませんでした。身体の他の部位の骨格筋や関節がうまく働けば、腰がそこまで負荷を変わって受ける(代償する)ことはないと思います。

 そして、自分の身体の弱い部分、つまり腕の上げ下げやしゃがみ込む動作のレベルで機能性に不具合がないかを見つけ出し、どこを改善すれば腰椎に過度な負担がかからないのかを知る必要がありました。スポーツ活動の質量共に高めている伸び盛りの時期。結局、普段の生活も含め、一体どんなふうに様子を見ればいいのか、高校生の私には全くわかりませんでした。

大学生、トレーニングを更に強化!! その結果、ついに「ぎっくり腰」に

 高校生では全国大会で優勝はできず、私の最高成績は国体で2位でした。大学に進学し、競技のレベルを更に高めようと決意します。腰が痛いのは、アスリートとして基礎体力などがまだまだ未熟なのだとも思っていました。そして、より運動負荷や強度の高いトレーニングをするようになりました。

 ウエートトレーニングも積極的に行います。大学1年生でベンチプレスが最高で40kgだったところ、2年生には95kgまで上げられるようになりました。フルスクワットも、最高で50~60kgから120kg程度まで上げられるようになりました。ハンマー投げを始めたのは大学4年生の秋からで、この頃は円盤投げに集中してトレーニングをしていました。しかし、ウエートトレーニングだけでもかなりの運動負荷でした。

 強度の高いトレーニングを続けていくうちに、ついに「ぎっくり腰」を引き起こします。ただ、痛める頻度は年に2~3回でした。痛めるシーンは様々で、円盤を投げているよりむしろ、投げるまでの準備運動やウエートトレーニングの時が多かったです。その他に、トレーニングを終えて帰宅してから「徐々に痛みが出てきて翌日歩けない」ということもありました。あまりの痛みで力が抜けて、崩れ落ちるような状態も。「あれ? これって治るの??」と何度も思いましたが、3~4日でひどい痛みはまず落ち着き、それから約2週間すると痛みがだんだん緩和されました。

「こんなに痛めるのは自分の身体の動かし方が良くないから?」 自己否定の感情出現

 トレーニングの復帰は、痛めてから5~6日後、ジョギングなどからスタートしていました。強烈な痛みが引けば「とりあえず乗り切った」と思いました。

 しかし、何度か痛めるうちに、ヘルニアがもしかしてかなり (ひど) くなってしまったのかと不安になりました。そして、病院での画像診断の結果、高校生のころとあまり大きく病態は変わっていないことが分かります。痛みはいつ出るか分かりません。「良い練習ができていないから痛めるのか?」「今後もこうやって付き合っていくの??」「でも、本当にヘルニアだけが原因なの?」。若干、疑問と不安がありました。

 原因は、実はヘルニアだけではなかったのだと、ずいぶん後になって分かります。ちなみに、ヘルニアの症状が強い場合には、痛くて前屈ができません。ぎっくり腰のような急性的な腰痛症を引き起こした時にはもちろんできませんが、私自身、身体はとても柔らかく、前屈は得意中の得意でした(写真)。

写真1(左)は、ハムストリングス(腿の裏)のストレッチ(ジャックナイフストレッチ)のシーン。胸と腿を離さないように腿の裏を10秒間伸ばし、しゃがみ込み(写真2・右)、間を開けず5往復繰り返す1分間ストレッチ。ハムストリングスを伸ばすことによって股関節の可動域が広がり、腰椎に負担をかけずに前屈できるようになる。ヘルニアが重度の場合、このような前屈自体が通常は困難であるため、腰痛の主な原因はヘルニア以外にもあると考えられた。

写真1(左)は、ハムストリングス(腿の裏)のストレッチ(ジャックナイフストレッチ)のシーン。胸と腿を離さないように腿の裏を10秒間伸ばし、しゃがみ込み(写真2・右)、間を開けず5往復繰り返す1分間ストレッチ。ハムストリングスを伸ばすことによって股関節の可動域が広がり、腰椎に負担をかけずに前屈できるようになる。ヘルニアが重度の場合、このような前屈自体が通常は困難であるため、腰痛の主な原因はヘルニア以外にもあると考えられた。

 次回は、痛みの原因について、もう少し詳しく書いてみたいと思います! それでは、また次回のカフェでお会いしましょう!

※ストレッチ監修 / 倉持梨恵子先生(アスレチックトレーナー / 中京大学講師)

(引用・参考文献)

西良浩一, 室伏由佳 (2014)『腰痛完治の最短プロセス : セルフチェックでわかる7つの原因と治し方』KADOKAWA.

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室伏由佳(むろふし・ゆか)

 1977年、静岡県生まれ・愛知県出身。株式会社attainment代表取締役。2004年アテネオリンピック女子ハンマー投げ日本代表。円盤投げ、ハンマー投げ2種目の日本記録保持者(2016年4月現在)。12年9月引退。

 アスリート時代には慢性的な腰痛症などスポーツ障害や婦人科疾患などの疾病と向き合う。06年中京大学体育学研究科博士課程後期満期退学(体育学修士)。スポーツ心理学の分野でスポーツ現場における実践的な介入をテーマに研究。現在、スポーツとアンチ・ドーピング教育についてテーマを広げ、研究活動を継続。現在、上武大学客員教授、朝日大学客員准教授や、聖マリアンナ医科大学スポーツ医学講座、徳島大学医学部、中央大学法学部など、複数の大学において非常勤講師を務める。スポーツと医学のつながり、モチベーション、健康等をテーマに講義や講演活動を行っている。日本陸上競技連盟普及育成部委員、日本アンチ・ドーピング機構アスリート委員、国際陸上競技連盟指導者資格レベルIコーチ資格、JPICA日本ピラティス指導者協会公認指導師。著書に『腰痛完治の最短プロセス~セルフチェックでわかる7つの原因と治し方~』(角川書店/西良浩一・室伏 由佳)。

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