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在宅訪問管理栄養士しおじゅんのゆるっと楽しむ健康食生活

コラム

在宅医療の意味と意義は……

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甘~い、甘~い、おはぎを作っています。患者さんが笑顔になってくれればいいな

甘~い、甘~い、おはぎを作っています。患者さんが笑顔になってくれればいいな

 先日、仙台市内の国道を車で走っていたら、街路樹の (かえで) の葉が赤く色づき始めているのを見つけました。患者さんのご自宅を訪問する仕事は、嵐や大雪の日は大変ですが、こんな小さな季節の変化を見つけることができると、少し得をした気分になります。

 私が訪問している患者さんは、在宅療養を受けている方ばかりです。「在宅医療」という言葉は、最近はテレビや新聞等でも話題になっておりますが、みなさんはどんなイメージをお持ちでしょうか。いま国は、高齢社会に対応するべく、地域包括ケアの一環として在宅医療を推し進めています。

 私は、5年前に介護支援専門員(ケアマネジャー)の仕事で初めて「在宅医療の現場」を知りました。それまで、在宅医療に対して、「在宅=自宅」「在宅医療=病院医療に劣る」という漠然としたイメージを持っていましたが、今では180度変わりました。

 在宅医療は、自宅だけでなく、介護付き住宅や有料老人ホーム、グループホームなどでも受けることができます。もし、一人暮らしの方で介護が必要になっても、安心して暮らすことのできる「住まい」を確保し、地域のさまざまなサービスを受けながら、その人らしく生活を続けることが可能です。

 病院に入院する目的は「治療」ですから、いやな検査やつらい治療を受け、時にはあまりおいしくない食事に我慢をしても「治療」に専念します。患者さんにとっては、病院は「非日常」であり、「暮らすところ」ではありません。多くの制約があっても仕方がないと我慢します。しかし、在宅では「治療」を受けながら「穏やかに暮らす」ことが目的です。同じ治療を受けるにしても、目的が違えば、そのケアのあり方も変わってくるのは当然だと思います。

 食事にしても、病院における「栄養」は「治療」の一部を担っています。多くの急性期病院では、「栄養サポートチーム」という、院内の多職種で構成されるメンバーによって、患者の栄養状態を改善するためにさまざまな取り組みが行われています。

 例えば、「食欲がない原因」が薬の副作用かもしれない……となれば、薬剤師が別の薬剤を医師に提案したり、リハビリで活動量が増えたら、栄養士が病院給食のエネルギー量を増やしたり……と、それぞれの専門職が連携して、患者の栄養状態を観察し、必要なケアを行います。

 それでは、在宅ではどのような「栄養サポートチーム」が必要なのでしょうか。

 私は「在宅療養生活を継続できる食の支援」が必要だと考えています。高い目標を設定し、ご本人や介護者ができないようなことを提案しても、かえって負担になるだけです。また、ケアマネジャーが立てるケアプランに沿って、患者さんがどんな生活を望んでいるのかを多職種で共有する必要があります。

 医療者は、ともすれば「血液検査データを改善する」ことが目的となり、患者さんが何のために栄養状態を改善したいのか、わからないままケアを行ってしまうことがあります。私は自分ではそうならないように、指針にしている岡田晋吾先生の言葉があります。岡田先生は、函館市で外来診療と在宅医療を行っている医師で、長年、在宅医療における栄養ケアの重要性を訴えています。

 「栄養管理は栄養指標を達成するために行うのではなく、患者さんの目標を達成するために行うものです。しっかりと地域の仲間が栄養管理を行い、在宅療養を支え、一つでも夢や目標を達成することができれば、また次の目標に向かっての栄養管理法を考えます。また安らかに最期を迎えるための栄養管理というものもあります」(※1)

 「患者さんの夢や目標を (かな) えるために」という視点をもつことで、「この方は、自分の生活に何を望んでいるのだろう」と考える癖がつきました。

 寝たきりで自分で食事ができなくても、「お出かけして外食をしたい」という望みがあれば、そのためにはどうしたらいいかを皆で考えます。時にはその「おでかけ」に、私も同行することもあります。

 病院に勤務していた頃は、患者さんの外出に付き添うなんて考えられませんでしたが、喫茶店で大好きなソフトクリームを味わい、 (うれ) しすぎて涙ぐむ患者さんを見ていると、私までもらい泣きしてしまいます。

 ささやかな願いを、日々の暮らしの中で叶えることができれば、満足感を積み重ねることができます。たとえ障害があっても、それが豊かな生活を送ることにつながるのではないでしょうか。

※1『在宅栄養管理のプロになる』(岡田晋吾編 医学と看護社)

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塩野崎顔2_100

塩野崎淳子(しおのざき・じゅんこ)

 「訪問栄養サポートセンター仙台(むらた日帰り外科手術WOCクリニック内)」在宅訪問管理栄養士

 1978年、大阪府生まれ。2001年、女子栄養大学栄養学部卒。栄養士・管理栄養士・介護支援専門員。長期療養型病院勤務を経て、2010年、訪問看護ステーションの介護支援専門員(ケアマネジャー)として在宅療養者の支援を行う。現在は在宅訪問管理栄養士として活動。

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1件 のコメント

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素晴らしい記事ですね

荒神聖院

記事を読ませていただきました。 とても納得でき素晴らしいと思いました。 私も介護支援専門員をしていました。 現在は認知症の母親を見るために実家で...

記事を読ませていただきました。

とても納得でき素晴らしいと思いました。

私も介護支援専門員をしていました。
現在は認知症の母親を見るために実家で生活しています。

一人暮らしの母親をどうやって支えて行こうか?
いつも考えています。
ダブルケアですね。

馴染みのある場所
居場所を確保して
心健やかに生活する

とても大切だと思います。

これからも素敵な記事で
情報発信をしてください。
応援しています。

阿波根琢真

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