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泌尿器科医・小堀善友の新オトコのコト

妊娠・育児・性の悩み

子どもが急に精巣痛…実は怖い病気?

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 前回に続き、タマの痛みの話をしましょう。急にタマが痛くなった時……たかがタマの痛みとはいえ、そこには人生を左右しかねない病気が隠れている可能性があります。急に精巣に痛みが起こる状態を、専門用語で「急性 陰嚢(いんのう) 症」と言います。急性陰嚢症の原因として、子どもに多く発生する「精巣捻転」という病気があります。

精巣捻転…ピークは2回

 精巣捻転といっても、精巣そのものがねじれるのではありません。腹部と精巣をつなげる精索と呼ばれる、ひも状の部分がねじれる病気です。精索には、精巣に出入りする血管と、精液の通り道の精管が入っています。この部分がねじれると精巣に血液が通わなくなり、大変な痛みを伴うばかりか、放っておくと精巣が 壊死(えし) してしまいます。

 精巣捻転は、子どもや若い男性に多く見られます。逆に、ある程度の年齢になれば、起こることはほとんどありません。最も発生の頻度が高いのは1歳の頃と、思春期の頃です。ピークが2回あるのです。

 子どもの頃は、精巣が陰嚢の中で十分に固定されていなかったり、思春期で精巣の体積が急に増えることにより、ねじれやすくなってしまったりするからです。米国の統計では、1歳から25歳の男性10万人のうちの4.5人ほどの頻度と考えられており、比較的珍しい病気です。

4~8時間以内

子どもが急に精巣痛…実は怖い病気?

 この病気で怖いのは、発症して(精索がねじれて)4~8時間以内に手術をしないと、精巣が壊死してしまうことです。将来の不妊症や更年期障害につながる可能性もあり、非常に重大な影響が出てきてしまうのです。

 捻転から6時間以内に手術をすれば、90%は精巣の機能を守ることができます。しかし、12時間以上経過すれば50%、24時間経過してしまうと90%以上の精巣が壊死してしまうのです。

 治療するには、緊急手術が必要となります。陰嚢を切開し、ねじれている精巣を元に戻してあげて、再びねじれないように固定します。

まぎらわしい病気も

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 このように、子どもに多い非常に怖い病気ですが、まぎわらしい病気も幾つかあります。

1.精巣垂捻転

 精巣ではなく、精巣や精巣上体についている数ミリ程度の突起物がねじれることにより、同じような症状が起こります。精巣捻転との鑑別が難しく、結局は手術をして陰嚢を切開してみないと、どちらなのかがわかりません。ちなみに、精巣垂がねじれても、精巣自体は壊死しません。

2.精巣上体炎

 副睾丸炎とも言われます。精子の通り道である「精巣上体」(副 睾丸(こうがん) )に炎症が起こります。これは細菌感染が原因であるので、抗生物質による治療が可能です。

3.精巣炎

 おたふく風邪(流行性耳下腺炎)の原因であるムンプスウイルスに感染して起こります。本人や家族で、おたふく風邪にかかった経過があれば、精巣炎が疑われます。

 また、精巣捻転は片側のタマが痛くなるのが特徴ですが、精巣炎の場合は両側のタマが痛くなって腫れ上がります。これも不妊症の原因となってしまうのですが、おたふくワクチンで予防することが可能です。

4.外傷

 スポーツなどで、陰嚢を強打した時に起こります。精巣の膜が破れると出血が起こり、陰嚢が黒く腫れ上がることがあります。

 以上のように、子どもの陰嚢の痛みが起こった場合は、治療が必要となることが多く、注意が必要です。もしも、痛みが起こった場合は、すみやかに泌尿器科を受診することをお勧めいたします。

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小堀善友(こぼり・よしとも)

泌尿器科医 埼玉県生まれ

2001年金沢大学医学部卒、09年より獨協医科大学越谷病院泌尿器科勤務。14年9月から16年3月まで米国イリノイ大学シカゴ校に招請研究員として留学。専門分野は男性不妊症、勃起・射精障害、性感染症。ホームページは「Dr.小堀の男の妊活ガイド」。略歴の詳細はこちら

主な著書に『泌尿器科医が教えるオトコの「性」活習慣病』(中公新書ラクレ)。

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