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栄養で治す

からだコラム

[栄養で治す]患者からの最高の言葉

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 胃がん、乳がん、食道がんに相次いで見舞われ、手術を繰り返した女性Aさん(73)。食道を全摘し、管で腸から栄養をとる「 腸瘻ちょうろう 」にしてから8年間、毎日の下痢に苦しんだ末、10年前に私の外来にやって来ました。

 栄養剤は体の状態に合ったものを選び、腸に投与する速度も専用の器具でこまめに調整すると、わずか2週間で下痢は軽快し、現在も異常はありません。

 腸瘻による皮膚のただれもひどかったのですが、皮膚の洗浄や保護の仕方を看護師と一緒に指導し、皮膚を強くする栄養剤も利用しながら改善しました。

 こうしたケアが元の病院でもできていれば、Aさんは8年間も苦しまずに済んだはずです。Aさんが外来に来て数か月たったころ、手紙をもらいました。

 「便の状態も格段と良くなり、ちゃんと便の形をして毎日出てくれます。今まではちょっと買い物に出かけても失敗がありました。いつも下着の替えを持ち歩き、不安で悲しい日々でした。今は前向きになり、冬休みに入る孫たちとどこかに行こうかと計画中です。私の残りの人生に、こんな幸せな時間が来るとは考えもしませんでした」などと つづ られていました。

 この年、Aさんは金刀比羅宮に出かけ、お孫さんに手を引かれて1368段の石段を上ってきました。

 ある日の外来で「苦しかったころに2回、線路に立ったことがあります。孫の顔が浮かび、思いとどまりました」と涙ながらに語ってくれました。「僕の患者は簡単には死なせませんよ」と言うと、「先生にとって私は大勢の患者の一人かもしれないけれど、私にとって先生は『生きるための全て』なんです!」

 医療従事者として最高のプレゼントをいただきました。

 (宮沢靖・近森病院臨床栄養部長、管理栄養士)

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