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[シンポジウム「腸内環境から未病を考える」](3)パネル討論

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  パネリスト

  前内閣官房参与・大谷泰夫さん

  東京大学医科学研究所 国際粘膜ワクチン開発研究センター長・清野宏さん

  森永乳業素材応用研究所長・阿部文明さん

  プロフィギュアスケーター・荒川静香さん

  コーディネーター・魚住りえさん(フリーアナウンサー)

 

アレルギー改善、研究も…森永乳業素材応用研究所長・阿部文明さん

 

[シンポジウム「腸内環境から未病を考える」](3)パネル討論

阿部文明さん

 ■ 赤ちゃん守る

  魚住  腸内環境と未病はどういう関係があるのですか。

  大谷  多少の健康上の問題があっても、積極的に生き生き暮らしていくことが未病の考え方です。腸内環境とは食生活そのもので、未病を考える上で切っても切れないように感じています。

  魚住  腸内細菌の役割と特徴は。

  清野  腸内にいる善玉菌が持つ効果について研究が進んできました。この成果をどういう形で健康長寿社会に結びつけるかが大切で、基礎研究や、産学連携による理論の実用化が大きなポイントです。健康情報のビッグデータという形で、人それぞれの健康状態、遺伝子、腸内フローラの状態などを統合した新しい健康バロメーターを作っていくことも重要だと考えています。

  魚住  腸内細菌の研究はどこまで進んでいますか。

  阿部  赤ちゃんの腸内フローラの90%以上は善玉菌のビフィズス菌です。大人では10~20%と言われています。このバランスが崩れて落ち込むと便秘や下痢になるとされます。我々は「BB536」という特に健康に良いビフィズス菌を見つけました。便秘や下痢の予防だけでなく、免疫、アレルギー予防、抗炎症などについて世界中の研究者と研究を進めています。

  荒川  子どもが生まれた時、様々なものに触れさせた方がいいと聞き、母乳と粉ミルクを併用しながら育てました。今はそのどちらでも健康に育つようになってきていると聞いていました。

  魚住  ビフィズス菌が赤ちゃんを守っている。勉強になりました。

 

ビフィズス菌の力、驚き…荒川静香さん

 

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荒川静香さん

  阿部  我々が発見したもう一つのビフィズス菌「M―16V」が医療分野で注目されています。日本の100以上のNICU(新生児集中治療室)で赤ちゃんに与えられています。1500グラム未満の赤ちゃんは、腸が未熟でビフィズス菌が圧倒的に少ない状態で生まれて来ます。生まれてすぐにこの菌を食べさせると腸内細菌が改善し、感染症が減って、体重も順調に増えるという報告があります。妊婦と生まれてきた赤ちゃんの両方にM―16VとBB536を与えると、アレルギー発症率が下がるという結果も出ています。

  荒川  ビフィズス菌にそんな大きな力があったとは驚きました。娘は1歳10か月を超えたので、もう少し早く知りたかったです。

  阿部  赤ちゃんのアトピー症状が改善したという研究成果も欧州にあります。さらに1年後の定期検査で、ぜんそくの発症率が下がっていました。

  魚住  私もアレルギーがあるので、小さい頃に親が知っていたら良かった。

  阿部  大人でも花粉症の症状やアトピー性皮膚炎が改善するという報告もあります。世界ではビフィズス菌などの善玉菌を加えた粉ミルクが売られています。日本では制度上の問題で入れられない状態です。

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魚住りえさん

 ■ 発症少なく

  魚住  食生活の重要性をもう少し。

 阿部 我々はビフィズス菌入りの牛乳を販売しています。一昨年の中高年約2万人への調査で、週4日以上3年以上続けてこの牛乳を飲んでいる人は飲んでいない人に比べ、便秘や大腸ポリープの発症が少なく、物忘れのリスクが下がったと感じる人が多い、という結果になりました。腸内に重要な神経が走っていて、腸内環境が脳に影響することなどが関係していると考えられます。女性の場合は、骨折が少ないことも分かりました。

  荒川  私は牛乳よりも、ヨーグルトやチーズをよく食べます。牛乳は加熱しても効果は変わらないのでしょうか。

  阿部  ビフィズス菌は高温だと死んでしまいます。40、50度ぐらいまでなら大丈夫です。温めるぐらいで取っていただければ。

  荒川  一緒に取って良い、悪いという食品はありますか。

  阿部  食物繊維を一緒に食べると、より効果があると考えられます。野菜も一緒に食べてほしい。肉ばかり食べると腸内フローラが崩れ、ビフィズス菌は減ってしまいます。そこでビフィズス菌入りのヨーグルトを食べると、菌の減少が抑えられます。

  魚住  肉を食べた後にビフィズス菌を取るのも大切ですね。

 阿部 子どもがビフィズス菌を取ると、下痢を繰り返す過敏性腸症候群が抑えられるという報告もあります。

 

食生活基本中の基本…大谷泰夫さん

 

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腸内環境と未病について語り合うパネリストら

 ■ 病とつきあう

  魚住  腸内環境は生涯にわたって、健康をサポート、維持してくれる素晴らしいものなのですね。

  大谷  未病という考えの中でも、腸内環境やビフィズス菌が大事だと感じました。日々の生活習慣に気をつけ、病と共生していくことが、これからの長寿社会のポイントだと思います。感染症やけがは治せますが、老化に伴って増える病気とはつきあっていかねばなりません。その中でも食生活は基本中の基本だと思います。

  魚住  荒川さんが健康について特に気をつけていることは。

  荒川  競技生活中は専属のトレーナーや栄養士がいたわけではなく、自分の体は自分が一番知っていなければなりませんでした。自己流でどんな食事がいいかを試しながら考えてきました。幸い、病気やけがで悩んだことはありません。自分の体に向き合い、アンテナを張ってきたのが良かったのかもしれません。

  魚住  腸内フローラが人によって違うように、健康作りもそれぞれ違うということですか。

  清野  オバマ米大統領も「最適化医療」として、個人に合った病気予防、治療法を確立していくことが重要だと強調しています。

  魚住  荒川さんが食生活で気を付けていることは。

  荒川  母は食べ物の好き嫌いがないように育ててくれました。私も子どもの好き嫌いを作らないよう心がけています。乳製品はヨーグルトが子どもも好きで、毎日食べています。

  阿部  ヨーグルトをそのまま食べ続けると飽きる人は、ドレッシングにしてサラダにかけたり、果物と一緒にジュースにしたりするなど工夫してはどうでしょう。熱には弱いので、料理に使う場合にはご注意を。

 

腸は有能な免疫臓器…清野宏さん

 

  魚住  最後に一言ずつ。

  荒川  腸は人の健康をつかさどる大事な臓器ということがよく分かりました。

  阿部  腸内フローラは赤ちゃんから人生の最後の時までつき合っていくものです。良い腸内環境を作るため、ビフィズス菌入りのヨーグルトなどを継続して食べてほしいです。

  清野  腸は非常に有能な免疫臓器で、菌との共生の場だということを理解してもらえればうれしいです。

  大谷  昨年度の医療費が41兆5000億円に膨らむ中、限られた医療資源の中でできることは、自分たちで守れる健康は守るということです。健康産業が大きくなると経済成長にもつながります。

 

 ◇ あべ・ふみあき   1961年生まれ。87年、茨城大学大学院農学研究科修士課程修了後、森永乳業入社。機能素材事業部長、食品基盤研究所長などを経て2015年から現職。日本ビフィズス菌センター理事なども務める。

 

 ◇ あらかわ・しずか  1981年生まれ。98年長野五輪出場。2004年世界選手権優勝。06年トリノ五輪のフィギュアスケート女子シングルでアジア人初の金メダル獲得。14年に第1子を出産。日本スケート連盟副会長を務める。

 ◇ 魚住りえ  1972年生まれ。95年、慶応大学文学部卒業後、日本テレビに入社。「所さんの目がテン!」「ジパングあさ6」などを担当。2004年にフリーに転身。スピーチ・ボイストレーナーとしても活躍している。

 (2016年9月30日 読売新聞朝刊掲載)

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