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虹色百話~性的マイノリティーへの招待

医療・健康・介護のコラム

第57話 臨時国会開幕、LGBT立法の議論はされるのか?

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 自民党の動きを、「参院選をまえに、いま話題のLGBT領域で自民のプレゼンス向上を狙ったもの」と言う人もいましたし、逆に、「党内実力者の稲田氏じきじきのお声掛かりは自民の本気度を信じさせるもの」として期待する声もありました。実際、巨大与党である自民党が動かないかぎり、ことの成就はないわけですから。

 しかし、自民党がまとめた文書に何度か繰り返された「カミングアウトする必要のない社会」「カムアウトという肩ひじ張った意識をもつ必要のない社会」という文言には、当事者からも注目が集まりました。LGBTの人権運動に対して、「カミングアウト至上主義」といった事実にそぐわない非難をする人がいますが、自民党の表現にも「カミングアウト」へのいささか浅薄な理解が底にあるようで、残念です。

 また、「いまは差別禁止法ではなく、理解増進法」との主張の背後には、差別禁止法など作ったらそれを根拠に活動家が「差別だ!差別だ!」と糾弾して回りかねない、とでもいった想像がありそうで笑止千万ですし、「まずは理解を」にも上から的なパターナリズム(家父長主義)の風味を感じます。
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 もちろん、LGBTの「一億総活躍」はOKだが、伝統的家族観(と自民党がいうもの)にそぐわない同性婚・同性パートナーシップは不可という、ダブルスタンダードはいただけません。

 ただ、私は一個人として、いま自民党に批判的見解を述べましたが、いわゆるLGBTコミュニティー全体が反自民党(あるいは民進党ほかを支持)というわけでは、まったくありません。自民党を支持する当事者も少なからずいます。

 上述のLGBT法連合会も、すべての政党と等距離外交につとめ、理解増進法にも差別解消法にもそれぞれコメントするとともに、自身の「市民案」を提案しています。

法に書き込まれなければ言及もしてもらえない

 

 さて、今回の臨時国会でLGBT法制にまで議論の順番が回ってくるのか、新聞以上の情報のない私には知るすべもありません。自民党の動きについて批判的に論評しましたが、大局的に見て理解増進法も差別解消法も、その目指すところにおいては性的指向や性自認に起因する不利益を解消し、当事者救済への根拠を与えようという点で変わりません。法律を作ることが大切なのであり、その時期は「LGBTブーム」のいまを逃せば、もう巡ってこないかもしれないのです。

 性的マイノリティーにとって法律があることがどれだけ大事かは、「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」(2003年制定、2011年改正)をもってしても明瞭です。

 たとえば、これまで文科省はLGBT当事者の児童生徒について、通知や調査を行うときも「性同一性障害」に限定し、あたかも同性愛などは存在しないかのごとく、言及しようとはしませんでした。性同一性障害は法律にある言葉だから、安心して使えるのでしょう。

 15年4月に文科省が発表した通知「性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等について」の末尾において、性同一性障害とは別に、「『性的マイノリティ』とされる児童生徒」という表現で同性愛などのことがようやく示されました。まだ道は遠いようです。

 たしかに法は拙速に、数に任せて作ってはいけない面もあるでしょう。「特例法」制定においても、厳しい「子なし要件」をめぐって、性別変更できる人とできない人とに当事者を分断した、との批判もありました。しかし、テレビドラマ「3年B組金八先生」で「性同一性障害」が取り上げられ、話題になったあのときでなければ法律は通らなかったかもしれません。法はその後、20歳未満の子がないことにまで要件が緩和されています。小さく産んで大きく育てるという視点も必要かもしれません。

 多くの性的マイノリティーが、法的にもその存在を明記され、今後の施策の根拠が与えられることを望んでいます。まずは小さな前進を、光を、与えてください。

 国会が人びとの負託に応えてくださることを願っています。

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永易写真400

永易至文(ながやす・しぶん)

1966年、愛媛県生まれ。東京大学文学部(中国文学科)卒。人文・教育書系の出版社を経て2001年からフリーランス。ゲイコミュニティーの活動に参加する一方、ライターとしてゲイの老後やHIV陽性者の問題をテーマとする。2013年、行政書士の資格を取得、性的マイノリティサポートに強い東中野さくら行政書士事務所を開設。同年、特定非営利活動法人パープル・ハンズ設立、事務局長就任。著書に『ふたりで安心して最後まで暮らすための本』『にじ色ライフプランニング入門』『同性パートナー生活読本』など。

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1件 のコメント

選べないという意味では人種や性別と同じ

カイカタ

生まれつきであれ、後天的なものであれ、本人の意志で好き好んでなったものではないという意味では、黒人や白人に生まれたこと、女性や男性に生まれたこと...

生まれつきであれ、後天的なものであれ、本人の意志で好き好んでなったものではないという意味では、黒人や白人に生まれたこと、女性や男性に生まれたことと同じです。

たかが好みの問題といいますが、そこに社会では認められないものがあり、また、当事者にとっては、結婚などの人生の様々な節目に関わっていくことになるのなら、そこには法的かつ社会的な支援が必要でしょう。

どうも趣味やエロスの問題のように捉えられているようですが、当事者からすれば全く次元が違います。

大半の同性愛者は、セックスだけか短期の関係を繰り返し生涯独身で終わるのは、それがそういう性質だからというだけでなく、異性カップルのような結婚に値する制度がない、その前に社会的な認知がないことが要因として大きいのかもしれません。

異性愛者の人で同性婚に賛同する人がいうのは、少数であれ、より多くの人が幸せになれる社会になることがすばらしいと思う、です。

少子化を心配する人が多いと思いますが、フランスやアメリカのように同性婚を認めた国の方が、日本より出生率が高いという事実もあります。そういう寛容な社会ほど、子供を産みやすいのかもしれませんね。個人が最大限尊重される社会ほど、人は社会に対する忠誠度は高くなると思うのですが。

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