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スズメバチ、なぜ人を襲う?

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繁殖期、女王や幼虫守る

スズメバチ、なぜ人を襲う?

 この秋、スズメバチによる被害が各地で相次いでいる。刺されると痛いだけでなく、時には死亡する危険もある。ハチはなぜ人を襲うのか。

 ハチによる被害は毎年、8~10月に集中する。この時期のハチは繁殖期で、巣を守るため、外部からの刺激に敏感になっているという。

 今月11日には岐阜県飛騨市でマラソン大会の参加者115人が、16日には東京都日野市で校外活動中の小学生ら10人が、ハチに刺される被害に遭った。飛騨市ではキイロスズメバチ、日野市はオオスズメバチとみられる巣が、被害現場近くで見つかった。

 ハチの生態に詳しい玉川大学(東京)農学部長の小野正人さんは「巣に近づいた人をハチが襲うのは、働きバチが女王バチや幼虫を守るための防衛反応」と話す。集団生活を営むスズメバチは「社会性昆虫」と呼ばれ、今の時期に翌年の女王バチを育てている。一つの巣には何百、何千もの働きバチがいるそうだ。

 巣の防衛範囲は、巣を中心に半径5~10メートル。人が近づくと、まず2、3匹のハチが「監視役」として飛び回り、侵入者の様子を偵察する。「カチカチ」という歯ぎしりのような音や、「ブーン」という羽音で警告してくる。この時、うっかり手で振り払うなどすると、針から毒液の香り成分を噴出させ、「敵が来た」と仲間に警報を送られてしまう。「働きバチは香りを感知すると、一斉に飛びかかってきます」と小野さん。

 スズメバチは針で刺す際に皮下に毒を注入し、激しい痛みと腫れをもたらす。気をつけたいのは、以前刺された経験がある人。初回の被害で体内に毒への抗体ができ、次に刺された時に、強いアレルギー反応(アナフィラキシーショック)が起きることがある。血圧が急に下がり、呼吸困難になるなどして、30分程度で死亡することもある。

 厚生労働省の人口動態統計によると、ハチによる死亡者は2015年に23人。大半が、アナフィラキシーショックが原因とみられるという。

 オオスズメバチは山間部で樹木の空洞などに営巣し、キイロスズメバチは住宅の屋根裏や床下などにも巣を作る。山でも住宅街でも、人との距離が狭まった時に、ハチの襲来に遭うといえそうだ。

巣見つけたら…静かに離れる

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 巣を見つけたらどうするか。

 監視役のハチが飛び回っていたらスズメバチなので、静かに立ち去る。その際、黒いものを襲う習性があるので、頭をタオルなどで覆う。

 巣がまだ小さい5月ごろなら自分で駆除できるが、大きく育った今の季節は、集団で襲われる危険がある。害虫駆除業者でつくる「日本ペストコントロール協会」会長の平尾素一さんは「専門家に任せて」と話す。住宅にできた巣を駆除する自治体、費用を補助する自治体もある。また同協会に業者の紹介を依頼できる。

 刺された場合に備え、対処法も心得ておく=上図=。患部を口で吸って毒を吸い出すことは避ける。口内炎など口の中に傷があれば、毒が体内を回る恐れがあるためだ。

 アシナガバチ類、ミツバチ類も人を刺す。平尾さんは「アシナガバチも、自宅など身近な場所にできた巣は駆除したほうがいい」と話す。

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