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室伏由佳のほっこりスポーツカフェへようこそ

医療・健康・介護のコラム

腰痛は付き合うものではない! 痛みの原因を特定しよう(1)

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 最近、秋らしい気候になってきましたね。秋の行楽など、楽しい計画をされている方もいらっしゃるかと思います。気温も徐々に下がってきますので、気付いたら少し冷えてしまったということがないように私は気をつけています。体温調整がとても大切な時期ですね。

 今回のコラムでは、季節ものではないのですが、腰痛について書きたいと思います。私は、アスリート時代に壮絶な腰痛体験があり、2012年の引退を機に手術し、根治に至りました。医療従事者ではありませんが、その経験から、折に触れて脊椎専門医やアスレチックトレーナーと共に腰痛の原因特定や完治に向けた啓発セミナーや講義、講演、整形外科領域の学会でご一緒させていただいています。その中で、大変多くの学びがありましたので、腰痛に悩む方や苦しんでいる方と「腰痛完治を目指す」ための情報共有ができればと思います。

腰痛は「国民病」ともいわれている!

 腰痛は日本人にとても多い病気です。2013年に厚生労働省が実施した国民生活基礎調査で「自覚症状」がある病気やケガを調べた結果が出ています。その中で、男性は1位が腰痛、女性は1位の肩こりに次いで腰痛が2位です。腰痛の自覚症状は、男女ともにとても高く、腰痛は「国民病」ともいえます。重度の痛みがなかったとしても、何かしらの痛みや違和感を持っている方が相当いるのではないかと想像します。一応、日常生活は何とか送れているし、もう少し ひど くなったら病院に行こうか……と思うケースが多いのかもしれません。病院は待ち時間も長いし、痛い時には「あまり動きたくない」と思うこともあるでしょう。

 腰痛といっても、痛みの原因は人それぞれ異なる可能性があります。しかし、腰痛の元となると「具体的な原因が分からない」というケースが非常に多いのです。なんと、腰痛の85%は「痛みの原因が不明」とされています。このことを「非特異的腰痛症」といいます(厚生労働省HP・腰痛対策参照)。どこに行っても腰痛の原因が特定できない「腰痛難民」という言葉もあるぐらいです。「腰痛はうまく付き合うもの」とまで考えている方も多いのではないでしょうか。

 私も、原因が特定できない腰痛症(急性的な腰痛症と慢性的な腰痛症)でとても苦しみ、その間はほとんど手立てがなく本当に苦労しました。私のケースは、スポーツ活動による腰痛です。運動の仕方で負担がかかる身体の部位を想定すると、なんとなく原因が分かりそうなものですが、正確な診断がつくまでにはかなりの時間がかかりました。

 2004年、アテネオリンピックに出場した翌年から、私はかなりの頻度で「ぎっくり腰(急性腰痛症)」を引き起こします。

 転んでも2連覇 腰痛の室伏由佳

 女子ハンマー投げで、腰痛に耐えながら2連覇した室伏は「おなかと腰に力が入らない」状態でも、どうにか乗り切った。4投目では、回転中にバランスを崩して転倒し、左ひじを強く打ちつけて「気付いたら空を見ていた」。6投目に意地を見せたが、61メートル台をマークするのがやっと。「64、65メートルは投げられると思っていた」と、満足できる記録には到達しなかった。

 (2005年6月4日読売新聞朝刊、2005年陸上競技日本選手権大会兼世界選手権ヘルシンキ大会代表選考会の記事

 原因が特定できない「非特異的腰痛症」は引退した2012年の前年、2011年5月まで続きました。私の腰痛の原因は、スポーツ活動による「腰椎椎間板ヘルニア」と「左の椎間関節の変形」で、これらの2つの原因から脊椎の神経を挟み込む「脊柱管 狭窄きょうさく 症」という腰痛症でした。

 アスリートは、スポーツ活動でとても大きな負荷が身体にかかります。そのため、腰痛で悩むアスリートは珍しくありません。しかし、私の知る範囲だけでも、多くのアスリート仲間が「原因不明」の腰痛症で「痛みを我慢しながら」スポーツを続けています。一体、なぜ具体的な痛みの原因が分からないのでしょうか? 体験的なエピソードを交え、ご紹介していきたいと思います。

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室伏由佳(むろふし・ゆか)

 1977年、静岡県生まれ・愛知県出身。株式会社attainment代表取締役。2004年アテネオリンピック女子ハンマー投げ日本代表。円盤投げ、ハンマー投げ2種目の日本記録保持者(2016年4月現在)。12年9月引退。

 アスリート時代には慢性的な腰痛症などスポーツ障害や婦人科疾患などの疾病と向き合う。06年中京大学体育学研究科博士課程後期満期退学(体育学修士)。スポーツ心理学の分野でスポーツ現場における実践的な介入をテーマに研究。現在、スポーツとアンチ・ドーピング教育についてテーマを広げ、研究活動を継続。現在、上武大学客員教授、朝日大学客員准教授や、聖マリアンナ医科大学スポーツ医学講座、徳島大学医学部、中央大学法学部など、複数の大学において非常勤講師を務める。スポーツと医学のつながり、モチベーション、健康等をテーマに講義や講演活動を行っている。日本陸上競技連盟普及育成部委員、日本アンチ・ドーピング機構アスリート委員、国際陸上競技連盟指導者資格レベルIコーチ資格、JPICA日本ピラティス指導者協会公認指導師。著書に『腰痛完治の最短プロセス~セルフチェックでわかる7つの原因と治し方~』(角川書店/西良浩一・室伏 由佳)。

公式ウェブサイトはこちら

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1件 のコメント

適切なゴール設定と段階的なリハビリ

寺田次郎関西医大放射線科不名誉享受

リハビリの語原は「取り戻す」だそうですが、より緻密な医療においてはその言葉通りではありません。 腰痛に限らず、損傷の質や程度および時期、基礎疾患...

リハビリの語原は「取り戻す」だそうですが、より緻密な医療においてはその言葉通りではありません。

腰痛に限らず、損傷の質や程度および時期、基礎疾患や加齢、その他の制約条件を考えて、適切なゴールを設定しながら段階的にやらないといけません。

無理に100点(もとの状態)を目指すよりも、まずは60点なり80点なりに戻して、他の要素も含めてトータルで勝負するほうが正しいこともあります。

理解も感情も難しい話で、そういう意味でも専門医の先生がコアになりつつも、多職種連携でないと多くの患者さんのケアやキュアは行えないのではないかと思います。
(心理的側面のケアも大事ですが、医学は科学であって、魔法ではありません。)

筋骨格の損傷に関して、事後処置や手術のコンセンサスも変わりつつありますが、急性期の安静は変わっていません。
この時期に損傷部位の筋肉が落ちることで、中長期的な変化も起こります。
その損傷部位がどの程度回復するかの見込みにより、全体のバランスを考えないといけませんし、もともとの姿勢や筋力バランスとの兼ね合いも大事になります。

これはスポーツ選手の話ですが、職業人もある程度準じた形にはなってくると思います。

また、慢性的な運動不足による衰えの場合、心臓や全身の筋力低下のみならず、関節や古傷周囲の筋力が落ちて痛みなどの不具合が発生することも考えられます。
損傷部位周囲の強化ばかりに目が行くと、全身のバランスが崩れます。
そのへんも踏まえて、段階的なリハビリを行う必要があるでしょう。

再生医療や義肢装具の明るいニュースもありますが、色んな意味で生まれ持った肉体で極力頑張るほうが正しいように個人的には思います。

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