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ホントはどうなの?健康食品・サプリメント

国立健康・栄養研究所

健康・ダイエット

[抗酸化食品]十分か不足かそれが問題だ

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 私たちが生きて行くために酸素は必要不可欠ですが、呼吸により体内に取り込まれた酸素の一部は「活性酸素」注1)というものに変化します。活性酸素は、細胞膜を形作る脂質や、遺伝子であるDNA等の生体分子を攻撃し、その化学構造を変えてしまう力を持っています(このことを「酸化」と呼びます)。酸化により構造が変わってしまった生体分子は本来の機能を十分に発揮することが出来なくなります。私たちの体は、活性酸素による酸化に対抗するための「抗酸化力」(抗酸化酵素や抗酸化物質)を持っています。ところが、不規則な生活やストレス等により抗酸化力が衰えてしまうと、生体分子が傷つくのを防ぐことが難しくなり、このことが、がん、動脈硬化、アルツハイマー病等の様々な病気の原因の一つになると考えられています。そこで酸化による生体分子の障害を防いで健康を維持するため、抗酸化物質を豊富に含む食品=抗酸化食品が注目されています。

図:ヨミドクター第21回

 

食品中に含まれる抗酸化物質の働き

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 ビタミンとして知られるビタミンCやビタミンE、ポリフェノール注2)やカロテノイド注3)等が食品に含まれる代表的な抗酸化物質です。抗酸化物質は活性酸素と化学反応し、活性酸素が生体分子を傷つけないようにする働きを持っています(このことを活性酸素の「消去」と呼びます)。体の中で生じる活性酸素は幾つかの種類があり、それぞれに対し有効な抗酸化物質が違います。例えば、「一重項酸素」という種類の活性酸素を消去する働きは、カロテノイドがとても強いことが知られています。また、複数の抗酸化物質が協力して活性酸素を消去することもあります。例えば、水に溶ける抗酸化物質であるビタミンCは、油である細胞膜の中で生じた活性酸素をうまく消去することができません。ところが、細胞膜の中に油に溶ける抗酸化物質であるビタミンEがあると、ビタミンCはビタミンEの働きを助け、効果的に活性酸素を消去することが知られています。このように、食品中に含まれる抗酸化物質は役割分担をしつつ、時にお互い協力して、体の中の活性酸素を消去すると考えられています。

 【代表的な抗酸化物質とそれを多く含む食品】

ビタミンC ビタミンE ポリフェノール カロテノイド
パプリカ アーモンド 緑茶(カテキン) 緑黄色野菜(ベータカロテン)
ブロッコリー 小麦胚芽 大豆(イソフラボン) トマト(リコピン)
キウイフルーツ 植物油 たまねぎ(ケルセチン) サケ(アスタキサンチン)
レモン マーガリン みかん(ヘスペレチン) ホウレンソウ(ルテイン)

 

 

サプリメントの効果は一定せず

 偏った食生活は万病のもとです。1980~90年代には既に、ビタミンC、ビタミンE、代表的なカロテノイドであるベータカロテンなどの抗酸化物質が少ない食生活を送っている人は、がんや動脈硬化の発症リスクが高まることが明らかになっていました。健康になるには、生活習慣を改めるのが一番なのですが、諸事情により難しい場合もあります。そこで、抗酸化物質をサプリメントとして手軽に摂取することでこれらの病気を予防できないか、という数多くの研究が行われました。しかし、これらの研究は、残念ながら一定の結論に至っていません。つまり、サプリメントが有効であった研究もあるのですが、有効でなかった研究も同程度あります。特に、喫煙者の肺がん予防のために高濃度のベータカロテンサプリメントを使ったある研究では、サプリの使用により肺がんのリスクが高まるという本末転倒の結果となってしまいました注4)。抗酸化サプリの効果が一定しない原因としては、日常的な食事から摂取している抗酸化物質の量や、受けている酸化によるストレスの強さ等に個人差が大きいことが考えられます。

 

現時点での必要十分量は不明

 これまでの研究を総合すると、食事からの抗酸化物質の摂取が不足すると健康が損なわれるのは間違いありません。ただ、おそらく、個人個人で必要十分な抗酸化物質の量や種類は違うはずなのですが、この部分の解明が現時点では不十分です。そのため、日常の食事で抗酸化物質の摂取が「十分なのか不足しているのか」分からないという状況です。抗酸化サプリの研究から、抗酸化物質は取れば取るほど健康に良いとは言い切れず、必要十分量があるはずです。全体として抗酸化物質を豊富に含む食生活が、誰にとっても健康維持に役立つことは疑うべくもないでしょう。しかし、抗酸化物質のサプリメントや単一あるいはいくつかの抗酸化物質をたくさん含む素材を用いた健康食品が健康維持にプラスに働くかどうかは、まだまだ研究不足だと感じます。

(国立健康・栄養研究所 竹林 純)

抗酸化物質の安全性・有効性に関する科学的根拠は以下のサイトを参照してみてください。

国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 「健康食品」の安全性・有効性情報サイト

ビタミンC

ビタミンE

ベータカロテン

 

注1)活性酸素:活性酸素種と呼ばれることもある。ヒドロキシルラジカル、ペルオキシルラジカル、一重項酸素等の様々な化学構造を持ち、それぞれ生体分子に対する反応性や、有効な抗酸化物質・抗酸化酵素が異なる。

注2)ポリフェノール:植物由来の食品に広く含まれる分子内に複数のフェノール性水酸基を有する化合物の総称。緑茶に含まれるカテキン、大豆に含まれるイソフラボン、たまねぎに含まれるケルセチン、みかんに含まれるヘスペレチン等の他、たくさんの種類がある。

注3)カロテノイド:黄~赤色の色素で、野菜・果物を中心に、一部の魚類や甲殻類等にも含まれる。緑黄色野菜に含まれるベータカロテン、トマトに含まれるリコピン、サケに含まれるアスタキサンチン等が知られている。

注4)サプリ使用によって肺がん発症率の増加が認められたため、本来の期間を短縮して臨床試験が打ち切られた(CARET試験)。サプリ使用者の血液中からは通常では考えられないほど高濃度のベータカロテンが検出されており、食品由来の抗酸化物質であっても過剰摂取による弊害が起こり得ることが明らかとなった。

 

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