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からだコラム

[栄養で治す]時代遅れの指導に驚き

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 「もう10年になるんですね」と感慨深げに話すのは、外来で月1回お会いする女性Aさん(73)。少しやせ型で、上品な笑顔のおばあさまといった感じです。

 最初は今のような笑顔は決して見られませんでした。手足はやせこけ、皮膚はカサカサ、しゃべることもやっとという感じで突然、外来にやって来ました。

 「先生のことはインターネットで知りました。こんな近くに栄養の専門家がいるなんてと思い、どうしても診ていただきたくて」と丁寧に頭を下げて、ゆっくりと腰かけられました。

 お話を聞くと、Aさんの人生は病との闘いでした。20代後半に詳細は不明ですが「前がん状態」と言われて胃の3分の2を切除、51歳の時に乳がんで右側の乳房を切除、55歳の時に食道がんを発症して食道を全摘。以後、口から食べられなくなり、腸に管を入れて栄養を補給する方法「 腸瘻ちょうろう 」で生活していました。

 私と会うまでの8年間、毎日下痢に悩まされ、生活の質は著しく低下していました。「下痢で困っている」と医師に訴えても「腸瘻ってこんなものですから」と下痢止めの薬が処方されるだけでした。腸に入れる管は他用途のものを流用しており、少し動くと激痛が走る状態でした。おなかには管を固定するテープが幾重にも貼られ、剥がすと真っ赤にかぶれていました。

 がん患者会の顧問医師に「長期に経腸栄養を行うと必要な栄養素が欠乏するので、毎日ホタテを煮て煮汁を注入しなさい」と言われたそうです。その言葉を信じたAさんは毎日、鮮魚店でホタテを買い、費用もかさんでいました。栄養学的には40年近く前の理論で正直、「今でも現役の医師が、このような指導をしているとは」と驚き、Aさんの栄養管理を見直しました。

 (宮沢靖・近森病院臨床栄養部長 管理栄養士)

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