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食用菊 紫も黄も華やか…山形市
秋を代表する花と言えば菊だ。食べられる菊である食用菊も、収穫の最盛期を迎えている。鮮やかな色としゃきしゃきした食感を楽しみに、産地の一つ、山形市に足を運んだ。
食用菊は、元々観賞用だったものを、軟らかく、苦みが少なくなるよう改良したものだ。花びらをゆでてお浸しなどで食べる大輪と、刺し身などに添える小菊がある。
山形県は、食用菊全体の生産では愛知県に次ぐ2位だが、大輪だけでみると全国トップだ。山形市や寒河江市などで栽培されている。
品種は様々で、今では年中収穫できるが、菊の節句である9月9日の重陽の頃に需要が高まり、その前後の出荷が多い。
山形市の栽培農家、室岡和征さん(38)のハウスを9月中旬に訪ねると、一面鮮やかな赤紫色に染まっていた。「菊は黄色」とイメージしていたので驚いた。栽培しているのは、紫色の主力品種「
紅もっては花びらの形状が平らで、紫色の品種の中でも赤が強い。4月に挿し芽をして苗を育て、5月頃に畑に植えたものが、7月あたりからつぼみを付け始め、約1か月かけて少しずつ花開く。
ハウスには、高さ120センチ程度に伸びた株が150ほど並ぶ。1株に30個は花があるだろうか。そこから程よく開いた花を、室岡さんが一輪ずつ手際よく摘んでいく。
父親から食用菊づくりを本格的に任されて2年となる室岡さんにとって、栽培は一筋縄ではいかないという。「水の管理が難しく、毎日少しずつ水やりする必要がある」と話す。虫との戦いも苦労が多く、「消毒をこまめにしながら、細心の注意を払っている」。花の見た目も大事で、出べそのように真ん中の花びらが飛び出したり、花の直径が5センチ以下だったりすると、規格外で出荷できない。それだけに、よい菊が収穫できた時はうれしさも格別だ。
黄色の主力品種「寿」のハウスも見せてもらった。紅もってより花が大ぶりで、明るい黄色が華やかだ。
早朝に収穫した菊は、妻の宏美さん(37)らがパックに詰め、JAやまがた中央営農センターの集荷場で検品後、東京などの市場に送られる。
生産販売課の多田賢一郎さんによると、菊を食べる人の減少や栽培の難しさなどから、食用菊を育てる農家の数も減ってきているという。室岡さんら若手農家への期待は高いそうだ。
「食用菊は山形の伝統野菜。父や先輩らから栽培を教わるとともに新しい技術も学んで品質を高め、味を広めていきたい」と室岡さんは力を込めた。
メモ 山形産の食用菊は、首都圏のスーパーなどで購入できる。価格は変動があるが、1パック(約80グラム)300~400円程度が多い。
室岡さんのお薦めの食べ方はお浸しだ。沸騰した湯に酢を加え、散らした花びらを入れてサッと湯がき、冷水にさらす。水気を絞り、酢じょうゆで味を付ける。サラダやすしに散らしたりホウレンソウとあえたりしても、彩り良く仕上がる。
(谷本陽子、写真も)
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