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小児がんの経験伝える15歳…同じ病気の子に勇気を

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晩期合併症…悔しい思い

 小児期にがんを患うと、つらい治療を終えてからも、その影響が後々まで残る晩期合併症に悩まされるケースが少なくない。抱える障害には、見えるものと見えないものがある。その両方と向き合い、「いろんな人がいるということを分かってほしい」と願う少女の言葉に耳を傾けた。

 今春、東京都内で開かれた小児がんへの理解を深めるイベント「ゴールドリボン・ウォーキング」。「ご支援よろしくお願いします」。募金ブースでひときわ 華奢きゃしゃ な少女が呼びかけていた。副腎などにがんができる「神経芽腫」を体験した中学3年、 浦尻一乃うらしりいちの さん(15)。「小児がん患者の現状を伝えたい」とメディアの取材にも応じている。

 5歳の時、最初の治療を受け、10歳で再発。度重なる手術や抗がん剤を乗り越えた。そして、晩期合併症との闘いが今も続いている。身長の伸び幅が小さく、現在1メートル33。腸障害のため、常におなかの調子とトイレを気にかけなければならないなど、苦労も多い。

 走るのが得意だったが、病後は治療の影響で体格のハンデを抱え、体育が苦手になった。再発した時は長期間、小学校を欠席。母、みゆきさん(47)は「できていたことができなくなり、違う自分を受け入れるのはつらかったと思う」と語る。

 「抗がん剤はゆっくり入れてほしい」「注射は痛くないように」。病院では、医師や看護師に自分の意見を言い、「しっかり者のいっちゃん」と呼ばれた。ただ、病に直面して大人びたせいか、小学校では子どもじみた言動でからかう級友と、よく衝突した。「病気のことは隠したい」。そう思っていた。

 心境が変化したのは中学入学後。がんになったこと、その影響が今もあることを親友に打ち明けると、「知ってたよ」と自然に受け止めてくれた。次第に理解者が増え、「みんなと青春する」がモットーになった。茶道の部活やピアノなど、何事にも全力で打ち込み、居場所を見いだしてきた。

 一方で、「周りと同じように」という願いがかなわず、たびたび涙を流してきた。健康上の理由で、運動系の部活は認められなかった。課外活動では、「急なトイレに対応できない」と、学校のバスに乗せてもらえなかったこともあった。

 都立小児総合医療センターの主治医、金子隆さんは「小児がん経験者は1000人に1人。合併症のことが学校で理解されず、苦労する子は多い」と話す。

 たくさん悔しい思いをしてきた浦尻さん。「ほかの子が、私みたいに困らないように」と体験を公表することに決めた。「病気をしたからこそ訴えられることがある」という母の言葉にも後押しされた。

 目下の課題は高校受験だ。必要な配慮が得られるかどうかは学校ごとに異なる。高校生向けの院内学級も少ない。再治療になることも想定し、高校を回っている。吹奏楽部に入りたい、アルバイトも――。壁は多いが妥協はしない。その姿勢が、小児がん患者の生きづらさの解消につながると考えている。「一日一日を大切にしたい。元気でいることで同じ病気の子たちを勇気づけられたらいいな」

  小児がんの晩期合併症  15歳までにがんの治療を体験した患者の約2割が成長障害、胃腸や心機能の障害などの重い合併症を抱える。障害が見えづらいと周囲の理解を得にくく、学校生活や進学、就労のことで苦労する人も多い。(佐々木栄)

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