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医療部長・山口博弥の「健康になりたきゃ武道を習え!」

医療・健康・介護のコラム

二日酔いにもヨガは効果あり?

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 護身武道「 心体育道(しんたいいくどう) 」の誠流武会東京道場に私が入門したのは、2003年1月末です。

 入門する前に、平日夜の稽古を1回見学しました。その武道はどんなスタイルで、どんな練習をするのか、それらは自分に向いているのか――を知るためには、見学するに越したことはありません。入門後に「こんなはずじゃなかった」って後悔したくありませんからね。

 見学して驚いたのは、準備体操と整理体操にとても時間をかけることでした。

 最初の準備体操は30分ほど。そのあとに武道的な稽古が50分ほどあって、最後に整理体操が20分ほどありました。つまり、100分の稽古のうち半分は体操をやっていたのです(日曜日の稽古は約120分と長くなるので、準備体操と武道的な稽古がもっと長くなります)。

 入門して分かったのですが、それらは単なる準備体操と整理体操ではなく、心体育道で「裏の (さば)き 」と呼ぶ健康法なのでした。

 7月末の「喫煙者は入門できません」の回で書いたように、せっかく武道を学んでも、病気がちだったり頻繁にけがをしたりしていたら、いざという時、その技術を十分に使えません。いつ何が起きても大丈夫なように、武道家は健康体でなければならない。だから心体育道では、暴漢の攻撃から身を守る「表の捌き」と並行して、病気から身を守る「裏の捌き」を稽古の中で行っています。

 具体的に言うと、インド古来のヨガをベースに、日本で1920年代に誕生した「西式健康法」を取り入れた健康法です。このうち今回は、ヨガの健康への効果について書きます。

 私は05年にヨガを取材し、読売新聞の長期連載企画「医療ルネサンス」で取り上げました。5回連載の1回目で、こう書いています。

 米国の有名女優や歌手らがヨガに熱中していることもあって、日本でも若い女性たちを中心に空前のブーム。ヨガ人口は20万人以上とも言われる。ヨガと健康との関係について考える。

 この時は「空前のブーム」と書いていますが、10年以上の月日が流れた今では、もはやブームを通り越して、若い女性のライフスタイルとして、あるいは高齢者の健康法として、すっかり定着した感があります。

 「ライフスタイル」と書いたのは、ヨガは心と体の両方に何らかの好ましい変化を及ぼすので、単なるスポーツや趣味とは言い切れない、と思ったからです。

 ヨガでは、ゆっくり体を伸ばしたり縮めたりしながら、深く呼吸します。それによって、酸素の摂取量と肺の血流量が大幅に増えて全身の血行が良くなる。腹式呼吸で横隔膜が上下することで、内臓の運動が活発になり、自律神経の働きも安定する。細かい筋肉を伸ばすストレッチや、ポーズを維持する筋力運動の効果も加わります。

 心の面では、体が伸びていく感覚や、息を吸った時と吐いた時の微妙な体の変化、その時々の心の動きを、静かに見つめ、味わい、あるがままに受け入れる。これを続けることで、周りの状況や自分の感情に振り回されない冷静さが身に付く。そう、以前このコラムで書いた「マインドフルネス」と同じです。ヨガのゆっくりとした規則正しい呼吸によって、脳内の神経伝達物質「セロトニン」が分泌され、精神を安定させる、と説明する学者もいます。

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山口 博弥(やまぐち・ひろや) 読売新聞東京本社編集委員

 1962年福岡市出身。1987年読売新聞社入社、岐阜支局、地方部内信課、社会部、富山支局、医療部、同部次長、盛岡支局長、医療部長を経て、2018年6月から編集委員。同年9月から1年間、解説部長も兼務。医療部では胃がん、小児医療、精神医療、慢性疼痛、医療事故、高齢者の健康法、マインドフルネスなどを取材。趣味は武道と映画観賞。白髪が増えて老眼も進行したが、いまだにブルース・リーを目指している。

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