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心療眼科医・若倉雅登のひとりごと

コラム

視覚系に問題ないのに、うまく読み書きできない…発達障害の可能性

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視覚系に問題ないのに、うまく読み書きできない…発達障害の可能性

 小中高等学校教育の中で、音読が拙劣、読み飛ばしが多い、行を間違えるなど、字が升目に収まらない、鏡文字を書くなど、読み書き能力に不都合があると、「そもそも目は大丈夫なのか」と眼科を受診するケースがあります。

 そういう子供は、知的障害が存在するとは限らず、むしろ知的にはほとんど問題がなかったり、あるいは逆に図形や理論を扱う数理系の能力が突出して優れていたりする場合もあります。

 視覚系には問題がないのに、うまく読み書きができないといった場合は、発達障害のひとつである限局性学習障害の可能性が出てきます。

 眼科医の間でも、最近になって発達障害への関心が深まり、眼科系の学術雑誌や学会などでも特集が組まれるようになってきました。

 その口火を切った一つが、私が世話人となって今年7月に開催した第10回心療眼科研究会の「発達障害と眼科」というテーマです。

 発達障害の専門家である昭和大学の太田晴久講師に「発達障害の基礎知識」、浜松医科大学小児眼科の佐藤美保教授には「発達障害児に対する眼科医の役割」と題した教育講演をお願いしました。

 太田氏によれば、発達障害は20年前の5倍以上に増えており、軽い場合は成人になるまで気づかれず、社会に出て一般の常識とは少し異なる行動があってわかる場合があるとのことでした。

 発達障害では、例えば「お風呂見てきて」と頼まれて、確かに言われた通り見に行き、水が (あふ) れていても何もせずに戻ってきてしまうといった、応用が利かない行動がみられるようです。これは、その人の興味が非常に限られていて、それ以外のことには関心がないためだとされます。こういう方は冗談や皮肉が通じないので、変人とされてしまうかもしれません。

 佐藤氏は、「見えないからうまく読めないのか」「見えるけれどもうまく読めないのか」をしっかり判定できるのは、眼科医しかいないと述べ、聴衆の眼科医を引きつけました。そこを明確に判断して、そこに隠されている学習障害を浮き上がらせることは眼科医の重要な任務の一つであるにちがいありません。

 診断が明確でないと、視力や知能に問題があるとか、単にふざけているなどと誤解され、いじめや虐待、不登校や引きこもりなどの二次障害の原因になりうるのです。

私たちのグループは、学年の成績トップクラスにいる女子高生が、英語の長文問題に限ってとても手間取ってしまうという症例を提示しました。

 調べると、行を間違えたり、次の行の文字列や隙間が気になるなど、縦書きの読み書きではほとんど起こらない能率低下が生じました。ある種の遮光レンズを用いると、多少改善する不思議な現象もありした。私たちは、これも一種の学習障害と考えて対応しました。

 発達障害の原因はよくわかっていません。

 遺伝でしょうか、育て方や本人の努力不足から来るものでしょうか、それとも別の観点があるのでしょうか。

 このことは、また稿を改めてお話ししたいと思います。

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201505_第4回「読売医療サロン」_若倉

若倉雅登(わかくら まさと)

井上眼科病院(東京・御茶ノ水)名誉院長
1949年東京生まれ。北里大学医学研究科博士課程修了。グラスゴー大学シニア研究員、北里大学助教授、井上眼科病院副院長を経て、2002年から同病院院長。12年4月から現職。日本神経眼科学会理事長、東京大学医学部非常勤講師、北里大学医学部客員教授などを歴任し、15年4月にNPO法人「目と心の健康相談室」を立ち上げ副理事長に就任。「医者で苦労する人、しない人---心療眼科医が本音で伝える患者学」、「絶望からはじまる患者力」(以上春秋社)、「心療眼科医が教える その目の不調は脳が原因」(集英社)、医療小説「茅花流しの診療所」(青志社)など著書多数。専門は、神経眼科、心療眼科。予約数を制限して1人あたりの診療時間を確保する特別外来を週前半に担当し、週後半には講演・著作活動のほか、NPO法人、患者会などでのボランティア活動に取り組む。

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