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栄養で治す

からだコラム

[栄養で治す]数少ない管理栄養士の奮闘

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 栄養は時に傷病者を奇跡のように回復させますが、その専門家である管理栄養士の現状や将来は決して明るくはありません。

 法律では、医療機関の管理栄養士は「1回300食以上または1日750食以上の食事を供給する」施設に配置義務があります。1000床を超す大病院でも、法的には1人の管理栄養士がいればいいのです。

 ある調査では現在、病院の管理栄養士の人数は100床当たり1・04人です。この体制できめ細かな栄養サポートを行い、患者に充実した療養生活を送ってもらうのは不可能です。

 小規模の高齢者施設には管理栄養士の設置義務さえなく、管理栄養士のいない施設も数多くあります。

 前回コラムで紹介した特別養護老人ホームは30床と小規模で管理栄養士の設置義務はありませんが、「食事の質を担保する」という施設長の心意気で1人在籍しています。その方が退職すれば、後任を補充できる見通しはないそうです。

 こうした現状は、栄養部門が「非採算部門」であることが大きな要因です。特別養護老人ホームでは、食費の基準額が全国均一に1日1380円とされています。材料費や調理に関わる費用を合算すると、2000円弱かかります。食事の質を担保するためには、いくら工夫をしても、この金額は譲れません。

 管理栄養士たちは必死になって切り詰め、おいしい食事を提供する努力をしていますが限界があります。基準額はあくまでも目安なので各施設で引き上げてもいいのですが、値上げは直接、入所者の負担となるため、安易にはできません。

 異口同音に「食事は大切」と言われますが、栄養部門は国の援助も薄く、数少ない管理栄養士が毎日、苦戦を強いられています。

 (宮沢靖・近森病院臨床栄養部長、管理栄養士)

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