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短時間で病名・治療法提示…精度増す「AI」 心強い味方

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短時間で病名・治療法提示…精度増す「AI」 心強い味方

 人工知能(AI)が、医療現場でも注目されている。

 既に患者の画像から病変を見つけたり、画像を基に臓器を立体的に再現したりする技術が実用化されている。遺伝子など患者の情報を基に膨大なデータから病名や治療法を探し出す臨床研究では、まれなタイプの病気を見つけて、治療に役立てる成果を出している。

 AIは、人間のように知的な活動ができる機械のこと。医療現場で実用化されているAIには、大量のデータを基にコンピューターが自ら学ぶ機械学習という手法が使われている。

 富士フイルムが製品化したがんの画像診断支援システムは、コンピューター断層撮影法(CT)で撮った患者の画像を入力すると、あらかじめ数千枚のがんの画像を“予習”したコンピューターが、類似画像と診断情報を数例示す。画像診断医など専門医の判断と8~9割が一致するという。

 また、臓器の典型的な大きさや形状などの基本情報を覚えさせ、患者のCT画像数百枚を入力すると、臓器の立体像を血管まで再現し、病巣の大きさや体積を計算できるシステムもある。手術の手順検討や治療の選択に使われている。

 自治医科大学は、医療機器メーカーと共同で、診断支援のAI「ホワイト・ジャック」を開発した。問診票や診察内容から、病名や確定診断に必要な検査法、薬の候補を助言して、一人で大勢の患者を診る地域のかかりつけ医らを支援する。今年度中に同大病院で試験運用を始める。

 病院を訪れた患者は、人型ロボットの手元にあるタブレット端末に、名前や年齢、症状、既往症を入力。この情報はAIに送られ、腹部の痛みに対して「虫垂炎」など、候補となる10~20種類の病名が医師に示される。AIは、病気に関する研究成果などを基に判断しており、石川鎮清教授は「患者が少ない病名も挙げるので、診断の見落としを減らせる」と期待する。

 AIの進歩は、コンピューターの性能アップと大量のデータの蓄積に加え、2012年頃から成果を上げた「ディープ・ラーニング(深層学習)」と呼ばれる新たな手法で加速した。最近は、囲碁でトップ棋士に打ち勝ち、車の自動運転でも注目されている。

 深層学習も機械学習の一つで、データ量が増えるほど精度が上がる。さらに、学習を重ねるほど答えを出す時間が短縮する。

 東京大学医科学研究所は、深層学習できる米IBM社のAI「ワトソン」に、2000万本以上の論文、1500万件以上の薬剤関連の情報を学ばせ、患者の遺伝情報から、がんの発症に関わる遺伝子や治療薬の候補を提示させる臨床研究を行っている。人間だと2週間かかる遺伝情報の分析をわずか10分でこなす。

 既に70人以上の患者に、分析結果を提供して、診療に役立てている。極めてまれなタイプの白血病と判明した女性は、医師の判断で治療薬を変更して、病状が回復、退院することができた。

 同研究所病院の東條有伸副院長は「がんに関して、毎日、遺伝子変異などの新しい情報がたくさん出ている。最適の治療を迅速に患者に届けるために、今後、AIの役割はますます大きくなるだろう」と話す。

最終判断は誰の責任に?

 帝京大学の澤智博教授(医療情報学)は「AIはブラックボックスで、どのようにして結論に至ったのか、わからない。予想外の結果が出た場合、医師がどう修正するのか、判断が難しいケースもある。将来的にAIに最終判断を任せた場合、誰の責任になるかも不明確だ」と指摘する。

 (山田聡、米山粛彦)

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