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心療眼科医・若倉雅登のひとりごと

医療・健康・介護のコラム

「目と心の悩みを晴らす集い」…まずは、声に出すことから

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「目と心の悩みを晴らす集い」…まずは、声に出すことから

 これまで何度かお伝えしている「 NPO法人 目と心の健康相談室 」は、目や視覚の問題で悩みをかかえているすべての方を対象に、そこにある問題を自由に相談のテーブルに出していただき、法人のスタッフとともに解決の道を探るための会員制システムです。

 時間的にも、経済的にも、病院、医院では、病気や症状に基づく個々の悩み(心の問題)まで手の届く対応がなかなかできない。看護師の荒川和子(本室理事長)や、医師としての私(同副理事長)が眼科の臨床に長年携わってきた中でそのことを痛感し、立ち上げたもので、設立1周年を経過しました。

 その記念イベントとして、去る7月11日に相談室のある東京都町田市にて「目と心の悩みを晴らす集い」と銘打って座談会や講演会を開催しました。

 ご自身や家族が悩みを抱えておられる方々、ロービジョン(低視力)ケアに携わっている方々、また目の健康に関心を寄せる方々など、参加者は130人を超え、近隣ばかりでなく首都圏以外から参加された方もおられました。

 座談会「目の悩みは解決できるか」では、現代の医学では治せない病を得たらどうしたらよいかという課題が中心になりました。

 いろいろなケースがあり、一定の解決策があるわけではありません。

 しかし、座談会出席者の、ある程度共通した思いとしては、本相談室を利用するなど、とにかく機会をとらえて、悩みや苦しみを口に出してみるべきだということです。

相談スタッフは、専門知識があるだけでなく、いろいろな経験やつながりがあるので、本人が気づいていない、前へ進むための光明が見いだせるかもしれないからです。

 それは、必ずしも医学的な光明という意味だけではありません。

悩みを抱えていてもいなくても時間は経過し、一人の人間としての人生は進みます。その時に歩く道が少しでも歩きやすくする方策が「光明」なのです。

 このイベントの招待講演は、TBSキャスター、内閣審議官を経て、現在三つの大学で 教鞭(きょうべん) をとられている下村健一氏による「氾濫する医療情報に振り回されない四つのコツ」と題するものでした。

 その4つとは、1)結論を即断するな、2)意見、印象を 鵜呑(うの) みにするな、3)一つの見方に偏るな、4)スポットライト(皆が注目しているところ)の周囲を見よ、ということです。

 これらは医学に限らず、得た情報を吟味する場合に、とても大切なことです。

 実例を挙げながらの非常にわかりやすいお話で、観客を魅了しました。

 ここでは詳しくお伝えできないのは残念ですが、詳細は下村氏の著書「10代からの情報キャッチボール入門」(岩波書店)をご覧ください。

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201505_第4回「読売医療サロン」_若倉

若倉雅登(わかくら まさと)

井上眼科病院(東京・御茶ノ水)名誉院長
1949年東京生まれ。北里大学医学研究科博士課程修了。グラスゴー大学シニア研究員、北里大学助教授、井上眼科病院副院長を経て、2002年から同病院院長。12年4月から現職。日本神経眼科学会理事長、東京大学医学部非常勤講師、北里大学医学部客員教授などを歴任。15年4月にNPO法人「目と心の健康相談室」を立ち上げ副理事長に就任。「医者で苦労する人、しない人 心療眼科医が本音で伝える患者学」、「絶望からはじまる患者力」(以上春秋社)、「心療眼科医が教える その目の不調は脳が原因」(集英社)、医療小説「茅花流しの診療所」、「蓮花谷話譚」(以上青志社)など著書多数。専門は、神経眼科、心療眼科。予約数を制限して1人あたりの診療時間を確保する特別外来を週前半に担当し、週後半は講演・著作活動のほか、NPO法人、患者会などでのボランティア活動に取り組む。

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