文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

あなたの健康百科 by メディカルトリビューン

あなたの健康百科 by メディカルトリビューン

受動喫煙の肺がんリスク「確実」に

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

リスク1.3倍で、評価「ほぼ確実」から引き上げへ

20160915-027-OYTEI50004-N.jpg

 日本人で受動喫煙のある人は、無い人に比べて肺がんになるリスクが約1.3倍高くなることが、信頼度の高い解析手法によって示され、受動喫煙による肺がんリスクは確実なものとなった。これは、国立がん研究センターが、非喫煙者の受動喫煙と肺がんに関連する複数の国内論文を統合し、解析して導き出したもの。この研究結果を踏まえ、同センターは、受動喫煙による日本人の肺がんのリスク評価を、これまでの「ほぼ確実」から「確実」に引き上げた。詳細は、「Japanese Journal of Oncology」( 電子版 )に掲載されている。

肺がんリスク1.3倍、他人のたばこの煙は「避ける」

 喫煙は、人間の体にさまざまな健康被害を及ぼす。例えば、肺がん。喫煙が肺がんの発症リスクを高めることは、多くの調査や研究で示されている。日本では、肺がんで死亡する人のうち、男性の70%、女性の20%が、喫煙が原因だと考えられているという。

 たばこによる悪影響は、たばこを吸わない人にも及ぶ。受動喫煙といって、たばこを吸わない人が、自分の意思とは関係なく、他の人が吸ったたばこから排出される有害な物質にさらされる状態でも、肺がんになるリスクがあることは、これまでも日本の研究で複数示されてきた。しかし、統計学的に意味のある強い関連性を示すところまでは至っていなかった。

今回の研究では、日本人の非喫煙者を対象に受動喫煙と肺がんとの関連について報告された過去の研究に限定してデータを検索。該当する426件の研究をさらに、一定の基準を満たした9件まで絞り込み、それらを統合して解析を行った。

 その結果、受動喫煙により肺がんリスクは、受動喫煙のない人に比べて約1.3倍上昇することが、統計学的に意味のある差として示された。この数値は、国際的な統合解析の結果(1.27倍)と同様だった。

 これを受け、同センターは、受動喫煙による日本人の肺がんのリスク評価を、これまでの「ほぼ確実」から「確実」にアップグレードした。さらに、日本人の実状に合わせてがんの予防法を示したガイドライン「日本人のためのがん予防法」の中では、他人のたばこの煙を「できるだけ避ける」としていた文言を、「避ける」と、より厳格なものに変更した。

 ちなみに、受動喫煙による健康被害は、肺がんだけでなく、心臓の血流が滞る虚血性心疾患や、脳卒中、小児喘息や乳幼児突然死症候群などにも及ぶことが、科学的に示されている。

遅れ気味の日本、今後の対策に期待

 日本では、公共の場や職場で、受動喫煙を防止するために必要な対策を講じるよう法律で定められている。しかし、諸外国のような罰則付きのものではなく、努力義務にとどまっている。

 そうした背景からか、受動喫煙を受けている人の割合は依然として高い。厚生労働省の「平成25年国民健康・栄養調査」によると、飲食店で受動喫煙が月1回以上ある人は46.8%に上る。職場では33.1%、家庭の中では16.4%だった。

 世界保健機関(WHO)の報告でも、日本の受動喫煙防止策は、国際的に最低レベルと評価されているという。

 同センターがん対策情報センターがん登録センターがん登録統計室長の片野田耕太さんは「受動喫煙の健康被害を防ぐためには、屋内の喫煙を禁止するための法制の整備が必要だ」と強調する。

 過去のオリンピック開催国では、受動喫煙に対して罰則付きの対策がとられている。受動喫煙の防止を法制化することで、急性心筋梗塞を含む心臓病、脳卒中や喘息などが減少するという海外の報告もある。

 2020年の東京オリンピック開催に向けて、日本での対策が世界レベルにまで進むことが期待される。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

kenkohyakka

あなたの健康百科
あなたの健康百科はこちら

あなたの健康百科 by メディカルトリビューンの一覧を見る

最新記事