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からだコラム

[栄養で治す]「自力で食事」きっかけに回復

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 東京都内の特別養護老人ホームに入所している95歳の女性Aさん。つい数年前までは、自宅で家族と元気に暮らしていました。

 ある日、肺炎で入院したのをきっかけに日常生活動作(ADL)が著しく低下し、日中もベッドで過ごすようになりました。退院後に老人福祉施設に移ると更にADLが低下。食事は「ミキサー食」になり、生活は食事も含め、すべて介助が必要になりました。

 家族も回復を半ば諦め、Aさんは特別養護老人ホームに入りました。もともと言葉は多い方ではなかったようですが、入所当時は全く口をきかないため、スタッフの間には「Aさんはしゃべらない方」というイメージがあったそうです。

 そうした中、その施設唯一の管理栄養士だった私の知人が「このままではAさんは弱っていくだけだ」と思い、いつもミキサー食を介助を受けて食べていたAさんに、試しにネギトロ状にした具材を載せたすしを用意し、箸を持たせてみたのです。すると思いがけないことに、Aさんは自ら箸ですしを口に運んだのです。

 実はAさんには特別なことではなかったかもしれませんが、全介助のAさんが、ミキサー食以外の食事を自分で食べられるとは誰も想像できませんでした。

 管理栄養士は「最後まで食事をすることを諦めない」という信念を持ち、情熱を持って全国の施設入所者の栄養ケアに取り組んでいます。

 現在Aさんは総義歯ですが、自力で食べ、時には急須でお茶をいれたり、洗濯物をたたんだりと、簡単な作業もこなします。笑顔も見せ、スタッフの声かけに少しですが返事もします。一時の状態からは信じられない変わりようです。栄養は奇跡を起こすことがあるのです。

 (宮沢靖・近森病院臨床栄養部長、管理栄養士)

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