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「スポーツ吹き矢」深く息吸い集中力アップ
「スポーツ吹き矢」が高齢世代に人気だ。離れた場所にある的を正確に射抜くには、肺活量と集中力がものをいう。楽しみながら仲間と競い合い、健康維持にも役立つ点が支持を集めている。
スポーツ吹き矢は、アーチェリーのように的を射って高得点を狙う競技。大手振興団体「日本スポーツ吹矢協会」の規格では、的に直径24センチの「得点圏」と呼ばれる円が描かれており、中心に近付くほど点数が高い。矢はビニール製の円すい形で、長さ20センチ、1グラム未満。筒は長さ1メートル20だ。的などの規格は振興団体によって異なる。
普段着でも楽しめる手軽さや、実力の伸びが得点として実感しやすいことなどから人気を集めている。同協会の大会に出たり段級位認定試験を受けたりできる会員は約4万9000人。最高齢は99歳という。
8月中旬、東京・銀座の教室では多くの高齢者が熱心に練習に励んでいた。途中、参加者の一人が段級位認定試験に合格し、大きな拍手がわき起こっていた。
同協会広報部長の高木由美子さんによると、健康維持に役立つとして自治体主催のイベントなどに取り入れられるケースも増えている。
スポーツ吹き矢は見た目以上に体力がいる。矢を吹く時、腹筋に力を入れ、たくさんの空気を一気に吐き出すからだ。お年寄りでも時速120~130キロで飛ぶという。繰り返すことで腹筋が鍛えられる。練習に参加していた男性(74)も「退職後から始めたがメタボが解消した。生活に張り合いが生まれ、生きがいになっている」と話す。
ゆったりと大きな呼吸法もポイントだ。同協会では、〈 1 〉深く息を吸いながら筒を頭上に掲げる〈 2 〉筒をゆっくり下ろしながら息を吐き切る〈 3 〉矢を入れた筒を構えながら息を吸い一気に吹く――という一連の動作= イラスト =を競技の型として指導している。
同協会顧問で医師の荒井他嘉司さんは「深く息を吸って、大きく吐くことで、普段使っていない肺の部分まで伸縮させ、酸素をたくさん取り込めるようになる。ゆっくりと大きな腹式呼吸を繰り返すと心が落ち着く。血圧が安定し筋肉の緊張がほぐれる効果もある」と解説する。
的との距離は、初心者なら5メートル。一見、高得点も簡単に狙えそうだが、なかなか難しい。呼吸が乱れていたり、上体が傾いていたりすると、狙った場所に飛ばない。高得点を取るには心を落ち着かせて吹き続ける必要があり、呼吸法が大事になってくる。
同協会には、会員5人以上で設立できる支部が全国に約1100ある。始めてみたい人は最寄りの支部を探してみよう。同協会以外にも振興団体がある。高木さんは「スポーツ吹き矢は、互いに競い励まし合う文化があるので、友達作りにも打って付けだと思います」と話している。
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