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宋美玄のママライフ実況中継

医療・健康・介護のコラム

はしか流行中 前倒しで息子にMRワクチンを打ってきました

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子ども2人連れヨーロッパ旅行に

はしか流行中 前倒しで息子にMRワクチンを打ってきました

ハイドパークで白鳥とふれあう娘です

 先週は夏休みの家族旅行でロンドンとパリに行ってきました。子ども2人連れでヨーロッパとはかなり勇気が () りましたが、実際のところ、行きのフライトでは9か月の息子が寝なくてなかなか大変でした。現地では在住の友人たちの助けを借りたり、町の人々に親切にしてもらったりして、あまり不自由さは感じませんでした。特に飲食店で寛大に接してもらえたのが助かりました。

 今ヨーロッパに行くのはテロなど安全性に対する不安もありましたが、最近行った人や住んでいる人たちの話を総合し、中止するほどではないと判断しました。ただ、パリでは有名観光地など人が集まるところは避けようということになり、プリンセス好きの娘をベルサイユ宮殿に連れていってあげることができませんでした。まあ、ロンドンでウェストミンスター寺院にせっかく入ったのに、ものすごくつまらなそうにしていたので、きっと連れて行ってもそれほど喜ばなかっただろうとは思います。

 息子は完全に連れ回されただけでした。1歳、2歳はきっと大変な年頃でヨーロッパに行くのは難しそうなので、しばらくは子連れではいけませんが、また子どもたちにヨーロッパでしかできない経験をさせたいです。

9か月の息子が無防備なのは不安

 日本に帰ってきたら麻疹(はしか)の感染者が増えてきていて驚きました。麻疹は感染力が非常に強く、空気感染するため、同じ電車に乗っただけでもうつります。インフルエンザの何倍も強いそうです(今村先生の記事をご参照ください)。

 集団の9割が抗体を持っていれば流行は起きません。しかし、日本のワクチン行政は感染症の制圧よりも副作用の方を気にしすぎて及び腰で、抗体を持っていない人がまれではないため、麻疹や風疹の流行が起こってしまいます。

 今の制度では1歳になるとMRワクチン(麻疹と風疹の混合ワクチン)が公費で受けられますが、0歳児は接種の対象となりません。パンデミック(大流行)になるかもしれないのに、9か月の息子がMRワクチンを接種するのは2か月以上先、というのは集団保育も受けているため不安でした。

 NPO法人「VPD(ワクチンで防げる病気)を知って、子どもを守ろうの会」のホームページによれば、地域で大流行していれば麻疹のワクチンは生後6か月から受けられるとのことです(これより前でも打つケースもあるそうです)。東京でも感染者が出ているため、公費助成はありませんが息子にMRワクチンを打つことに決めました。

かかりつけの小児科を受診し受けたい旨を伝えると、先生に「いいと思います」と言ってもらえ、すぐに受けられました。抗体ができるまで約2週間かかるので、それまではまだ不安ですが、少し気持ちが楽になりました(自費診療のため1万円弱自己負担しました。また、0歳児は抗体がつきにくいこともあるので、1歳になってからも通常通り受ける必要があります)。

0歳児はなかなか受けられない現実が

 そのことを、個人ブログに書いたところ、コメント欄やTwitterで「自分も小児科に問い合わせたけれど、0歳では打ってもらえないと言われた」との声が聞かれました。「自治体との取り決めである」「何かあった時に責任が取れないから」という理由だそうですが、乳児を持つ親で麻疹の流行を不安に感じている人は非常に多いだろうと思います。

 副作用の責任が取れない、というのは分からなくもないですが、子どもが感染し、肺炎や脳炎になって命の危険や後遺症が起こった場合は親としてどう責任が取れるのでしょうか。これという正解は難しいかもしれませんが、「前倒しで打つ」という選択肢が取れるようにしていただきたいと思います。

 地方や施設によっては、ワクチンの在庫に問題が出てきているところもあるそうです。かかりつけ医も現在は大人の接種は断っているとのことでした。ワクチンの在庫には変動が出てくるでしょうが、今は子どもたちに優先すべきなのかもしれません。こちらについては、常に最新の情報にあたっていただければと思います。

流行を機に ワクチン行政の見直しを

 風疹にしろ麻疹にしろ、外国から持ち込まれたとしても流行がおこってしまうのは、それまでのワクチン行政がまずかったため、先進国として恥ずかしいことだと思います。今回の件を機に、ワクチン行政全体を見直してくれるといいのですが……。どれほど期待できるか分かりませんが、呼びかけていきたいと思います。

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宋 美玄(そん・みひょん)

産婦人科医、医学博士。

1976年、神戸市生まれ。川崎医科大学講師、ロンドン大学病院留学を経て、2010年から国内で産婦人科医として勤務。主な著書に「女医が教える本当に気持ちのいいセックス」(ブックマン社)など。詳しくはこちら

このブログが本になりました。「内診台から覗いた高齢出産の真実」(中央公論新社、税別740円)。

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4件 のコメント

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ワクチン

あゆ

ワクチンを打って 実際に副作用で苦しんで おられる方たちの 本を読んだら、 やみくもに自分の子供に 接種していいものか悩みます。 副作用が稀と言...

ワクチンを打って
実際に副作用で苦しんで
おられる方たちの
本を読んだら、
やみくもに自分の子供に
接種していいものか悩みます。

副作用が稀と言われても
それが自分の子供だったら❓

副作用が起きても
接種との因果関係がないと
認定されてしまったらそれで
おしまいなのです。

素人に因果関係が証明できるでしょうか❓

Dr.の方々は副作用
で苦しんでいる方々へも
目を向けていただき、
その上でワクチン接種について
発言していただきたいです。

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数年で忘れるという皮肉

便利な時代なのに

厚生労働省 麻しんに関するQ A が参考になります。 各感染症の発生状況を地区の医師会が定点の報告をだしている場合がありますし自治体の感染症情報...

厚生労働省 麻しんに関するQ A が参考になります。

各感染症の発生状況を地区の医師会が定点の報告をだしている場合がありますし自治体の感染症情報センターの最新週報でも知ることができる時もあります。ワクチンが接種できない時はそういう情報をネットで調べたりすればほかのワクチン接種のことも知ることができるので便利な時もあります。

2009H1N1の時はワクチンやノイラミニダーゼ阻害薬を競って利用したのに喉元過ぎれば熱さを忘れるという今回の麻しん騒ぎですね。

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麻疹の恐ろしさ

小児科医

小児科医です。 影響力のある先生のブログでぜひ、”集団での免疫”についてしっかり伝えていただきたいです。 麻疹の恐ろしさは、急性期の脳炎、肺炎、...

小児科医です。
影響力のある先生のブログでぜひ、”集団での免疫”についてしっかり伝えていただきたいです。
麻疹の恐ろしさは、急性期の脳炎、肺炎、死に至ることのみならず、時間を経て、SSPE;亜急性硬化性全脳炎(subacute sclerosing panencephalitis) を発症することがあるということです。それまで元気な普通の子どもが、学童期に入って急に退行、寝たきり、死に至るという恐ろしい病気です(もちろん先生はご存知ですが、皆さんに向けて)。稀ですが、麻疹が流行れば増える可能性があります。
特に免疫系が脆弱な0歳、1歳児が危険です。どうやって守るのか?皆がしっかりワクチンを打って、集団で免疫をつけるのです。
どうも日本では、ワクチン接種を受けるのも受けないのも個人の権利とみなされがちですが、欧米では集団としての義務となっています。
流行らないからいいでしょ、とか、自分の子だけは打ちたくないとか、そういう問題ではないのです。自分が免疫不全状態の幼い兄弟姉妹、友人を重病に陥れるかもしれない。そういった認識をもたせるように、日本の医師がしっかり訴えていかなければなりません。

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