こころ元気塾
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乳幼児期に築く親子の信頼…情緒安定の土台作り
命令、批判、質問避ける
乳幼児期に親子の信頼関係を築けないと、大人になっても情緒が安定せず、人づきあいもうまくできないなどの問題を抱えることが多いという。子どもとどう向き合えばいいのか。
「親子なのに、どうしてうまくいかないんだろう」
神奈川県のA子さん(34)は、長男(4)との関係に悩んだ日々を思い出す。長男が幼稚園に通い出した頃、帰宅するとほぼ毎日、玄関で泣き、A子さんの体をたたいたり、髪の毛を引っ張ったりした。約1時間“格闘”し、外に連れ出して気分転換を図ると、ようやく機嫌を直してくれた。
昨年6月、子育てセミナーに参加し、子どもの気持ちを聞かずに親の考えだけで接していたことに気付いた。セミナーで講演した「セラプレイカウンセリングセンター東京」所長の高井美和さんの教室に親子で通うことにした。
セラプレイは、遊びを通じて親子関係を良くしようとする心理療法の一つだ。教室では、寝転がって風船を足で蹴るゲームをしたり、チャンバラごっこで汗を流したり。高井さんが子どもと遊ぶ様子を親に見てもらい、一緒に体を動かす。
高井さんは、うまくできるとほめ、長男がしたい遊びがあると主張すると、すぐ取り入れた。
「一緒に考えたり意見を聞いたりして遊ぶことが大切だと学びました」とA子さん。長男は徐々に、自分の気持ちを話してくれるようになった。玄関で泣き叫んでいたのは、A子さんと離れて幼稚園に通うのが嫌だったということもわかってきた。
札幌市の社会福祉法人「 麦の子会 」は、発達障害の子どもらの療育を行っている。親の中には幼い頃に虐待を受け、子どもの適切な養育の仕方を知らない人もいるという。
B子さん(45)もその一人。子どもの頃、親から「あなたは悪い子」と言われてよく殴られたと告白する。2人の娘を授かったが、素直にほめたりかわいがったりできなかった。親からそうしたことをされた記憶がないためで、娘たちが言うことを聞かないとすぐイライラし、頭をたたいたり足で蹴ったりした。
ある時、麦の子会で「子育ては周囲の人に助けてもらうもの」と教えられた。会の職員や友だちの母親たちは、娘に優しくしてくれた。乏しかった表情は豊かになり、よく笑うようになった。自然とかわいいと思えるようになった。
娘は今、中学2年生と小学6年生。長女は反抗期を迎えているが、B子さんは悩みながらも、子育てに真正面から向き合っている。
親への依存度が高い幼い時期に、親子の間で強い結びつきをつくれると、精神的に安定した大人に育っていくと言われている。
東京女子医科大学女性生涯健康センター所長の精神科医、加茂登志子さんは「言葉をまだ話せない乳幼児の頃から、大人たちが子どもの要求をくみ取るよう努めることが重要です。特に遊ぶ時は、命令や批判、質問は避け、良い行動をした時はほめてあげると、子どもの自尊心を高め、親子の健全な関係を育むことにつながります」と強調する。
麦の子会 1983年に設立。障害のある子どもに日常生活の指導や集団生活への適応訓練を行う「児童発達支援センター」や、学校に通学する障害児が放課後などに集まる「放課後等デイサービス」の事業などをしている。親が養育できない子どもを里親などが育てる「小規模住居型児童養育事業」も手がけている。(利根川昌紀)
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