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「早寝早起き」は本当に体にいいのか?…睡眠の新常識
「早寝早起き」は健康的で規律正しい生活の典型としばしば言われる。しかし、本当にそうなのか? 国立精神・神経医療研究センターの三島和夫部長はこのほど、BS日テレの「深層ニュース」に出演し、質の良い睡眠をとるのにどんな工夫をすればよいのかを解説した。(構成・読売新聞専門委員 東一眞)
■就寝時間と睡眠時間のギャップに悩む高齢者
自然体で早寝早起きできる人はそれでいいと思いますが、例えば高齢者などで早起きしたくないのに早起きしてしまって、それが引き金になって生活のリズムが崩れてしまったり、不眠になったりするケースもあります。また、学生のように若い世代や、働く世代の人たちは年代的に早起きができない、もしくは個人的に苦手なのに、学校や社会などで強制されて、本人にとっては苦痛の早起きをして、そのために体調を崩してしまっている人が少なからずいるのです。ですから、一部の人にとっては良い早起きであっても、万人にとっていいことではない、ということが大事なポイントだと思います。
高齢者について言えば、必要とする睡眠時間が年齢とともにだんだん短くなっていきますので、どうしても、早寝をしてしまうと早起きになってしまうのです。例えば、リタイヤ世代の60代、70代では健康な人でも眠れる時間は6時間程度と短くなってしまいます。でも夜は長いので、この6時間をどこに落とし込むかということを考えると、70代の方でも、午後11時くらいから午前6時くらいの間までコンパクトに寝ないと、何回も目が覚めたりとか、早起きしすぎたりして、ベッドの上で苦しんでしまう。
グラフで青い線が床に就いている時間、赤い線が実際に睡眠を取っている時間で、このギャップが、眠れずに苦しんでいる時間ということになります。午後9時くらいから、午前6時までの間ベッドにいて、そのうち3時間くらい苦しんでいる人がいる。不眠の苦しみを味わいはじめると、それがものすごく苦痛なのですね。寝ようと思わないソファの上とか、電車の中では簡単に寝ちゃうのだけど、さあ、いざ寝ようと思うと、今晩も眠れないのではないかと怖くて、ベッドの上が苦痛で、目がさえてしまう悪循環に入ってしまうのです。
■朝の光を浴びると朝型、夜光を浴びると夜型に
眠れない人は早く眼が覚めると、どうしても朝早く光を浴びてしまう。早朝から午前中に太陽光を浴びると、人間の体の特徴として体内時計が朝型になってしまいます。そうすると、夕方7時、8時になると、まぶたが重くなり、横になりたくなって、ついウトウトしてしまう。とんでもない早い時間帯から眠気が出てきて、早寝をして、また早く起きるということになります。
いろんな本には、朝の光で体内時計をリセットする、というふうに書いてありますけれども、あれは若い人向けなのですね。中高年になって、夜中に何度も目が覚める人や、朝早く目が覚めてしまう人は、朝の光を浴びないことが大切なポイントです。
一方で午後3時くらいから深夜の時間帯は、光を浴びれば浴びるほど、夜型になっていくのですね。若い人は夜、明るいモニターの前に長時間いるので、ますます早起きが苦手になり、夜型になる。高齢者の方、早いうちから目がトロンとなってしまう方は、夜はしっかりとライトを浴びたほうが睡眠にはいいことが実証されています。
今はLEDなんかが出てきているし、液晶画面なんかも大きくて明るくて、結構効果があるのです。というのも、体内時計には青色光(ブルーライト)が強く働きかけるのですが、LEDには青色光が多く含まれているものがあるからです。節電ということもありますが、早寝で困っている方は、むしろ家の中はしっかり明るくしたほうがいいです。無理のない範囲内でできるだけ夜更かしをしてくださいということです。睡眠時間は精々6時間なのです。細切れに寝るよりは、コンパクトにぎゅっと詰め込んで、切れ目なく寝たほうが体調も、日中の気分も良くなるのです。
長く横になっていると、その分だけ睡眠が伸びるという発想は勘違いです。むしろ寝床で目が覚めている時間が長くなると、かえって緊張が高まって眠れなくなります。不眠で困っている方、寝床で悶々(もんもん)とする時間が長い方は、寝床にしがみつかないでいただきたい。ただ、寝床にいるのがリラックスタイムで、テレビを見ながら「寝落ち」するのが気持ちよくて、それが至福の時間であれば、それはそれでかまわないです。
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